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支援が止まるとき、見直すべきもの。【不安シリーズ④】

(この記事で扱っている事例は、
特定の一事例ではなく、
臨床経験をもとに再構成した
架空事例です。

心理の専門職が背負う
守秘義務の範囲内としての
記事になります事を
予めご承知おき下さい。)


私が勤めている精神科では、
児童思春期の患者さん(ご本人さん)や
ご家族から要請があり、

主治医が必要と認めた場合、

心理士が学校に直接出向いて、

担任、
管理職、
特別支援教育コーディネーター、
スクールカウンセラー、
スクールソーシャルワーカー、
保護者(ご本人さん)、

とともに生活上の課題に対して
具体的な対策を共有・検討する
機会をもっている。

場合によっては、

放課後デイサービス担当、
計画相談支援担当、
行政(福祉課など)、

といった地域の支援者も
入るかたちでの
多職種連携会議に
参加要請がかかることもある。


────ある時、
1人の子のケース会議に
要請がかかった。


気持ちのコントロールが
上手くできず、

些細な注意を受けると
感情的になり、
机や壁を蹴ったり
様々なものを投げたりする
行動が見られていた。

前医療機関での診断は
ASD(自閉スペクトラム症)
だった。


申し送られてきた
情報提供書と
心理検査報告書を踏まえ、

出生してからの詳細な成育歴や
いくつかの心理検査の結果、

ASD特性は無く
不安症

と当院で
診断し直された子だった。

ASDによる
気持ちのコントロールの
問題が

予定変更への強い苦痛
感覚過敏などの特徴
曖昧な指示理解の苦手さ
コミュニケーション上の齟齬

等によって
生じやすいのに対し、

不安症による
気持ちのコントロールの
問題は

怒りが不安の表現形

になっている。

しかし、
診断が変わっても
依然として
何も変わることなく、

地域での
関わり方の模索は
難航していたのだった。

担任は
スクールカウンセラーをはじめ
様々な職種に相談し、

放デイとも連携して
日々対応していた。

それでも一向に問題が
改善することなく
経過していたため、

疲労感が
その背中から滲み出ていた。


ケース会議当日。

いつも通り、
まずは学校と家庭から
現状の様子について語られる。

資料として共有された
個別指導計画を
読ませていただくと、

他者からの指摘や
声かけに対して
柔軟に対応できない
という問題点を

「こだわり行動」

として、
それに対し、

「見通しをもたせる支援」

で取り組んでいくことが
盛り込まれていた。

私はまず、

「こだわり行動」
「見通しを持たせる」

といった

ASD支援に使う
言葉をこのお子さんに
対して使わない

ようにすること、

それらの言葉を用いずに
個別支援計画を
組み立てること

を提案した。

なぜなら、
このお子さんの場合、

ASD支援に
使う言葉自体が
ものの見方を
一方向に固定してしまう

1つのラベル

になってしまっている
から。

その言葉を使った瞬間、
支援者の脳内では
無意識のうちにASD支援の
思考回路が機能する。

そうなると、
目の前で起きている現象を
正しく把握する目は育たない。


次に、

これまで現場で使ってきた
「こだわり行動」のラベルの裏に

この子なりの不安や不公平感

が潜んでいる可能性について伝え、

注意される

「なんで自分だけ怒られる?」
(不公平感)

「認めてもらえない」
「話を聞いてもらえない」

「また責められた」

強い不安・恥・孤立感

怒りの爆発

注意される

(以下、ループ)

という
悪循環が潜んでいる
可能性について
話をした。



ケース会議の終盤、

この悪循環に
巻き込まれずにいる
先生が校内にいるか
確認したところ、

数名の先生が
該当した。

それらの先生に
共通していたのは、

「問題発生時に、
初手となる介入が
叱責ではない」

「本人がみせる
言動の背景を考え、
それを本人に日頃から
伝えている」

だった。
今後はその先生方を
モデルにして、

悪循環の断ち切り方を
全員で検討していくこと
を確認し、

ケース会議は終了した。



支援が上手くいかないとき、

周囲の大人は
その子の問題行動
だけに着目しがちになる。

────まさに、
その瞬間。

「こだわり行動」

のような

自分たちが
何気なく使っている
言葉の存在は、

意識の外に置かれてしまう。

まず大切なのは、

問題行動を
止めない子どもを
観察し続けることではない。

私たち自身が、

自分の使う言葉に
どれだけ日頃から
認知的に支配されているか

を知ることだと思っている。

そして必要があれば、
自分たちが使っている
支援言語を

目の前の子に合わせて
柔軟に見直す

姿勢が大切なのかもしれない、

────と、思っている。


前回の記事はこちら↓


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