一緒に暮らして、最初に感じた違和感
【第2章①:見えてきた現実】
Q1. 一緒に住み始めて、どんな生活が始まりましたか?
いきなり押しかけ女房みたいに暮らし始めたので、
お互いをちゃんと知る時間もなく、生活の中で少しずつ相手を知っていく毎日でした。
でも、不思議とコミュニケーションはうまくいっていたんです。
彼らの食事は、私が来たことでガラッと変わったので、
手料理で心をつかむのは意外と簡単でした。
餃子を一緒に作ったり、習字を教えたり、
美容師の私は彼らの髪を切ったり。
そういう小さなことの積み重ねで、距離はどんどん近くなっていきました。
彼の兄弟も同じアパートに住んでいて、すぐに紹介してもらいました。
特に弟はアジア人が大好きで、あっという間に打ち解けて、
気づけば家族の一員のように受け入れてもらっていました。
そして何より、息子くん。
本当に感謝しかありません。
私が来たことで、彼のベッドルームはリビングのソファーになってしまったのに、
文句ひとつ言わず、いつもニコニコして受け入れてくれたんです。
彼も、そんな息子くんと私の関係を見て、
少しずつ信頼してくれるようになりました。
この頃は、
「あぁ、なんとかうまくやっていけそうだな」って、
普通に思っていました。
Q2. 「あれ?」と思った最初の違和感は何でしたか?
実は一緒に住む前、まだ私のアパートを引き渡す前の数週間、
彼らはよく遊びに来ていました。
その時、私がお酒好きだと知っていた彼は、
タヒチではちょっと高めのお酒を持ってきてくれていたんです。
「気が利く人だなぁ」って、普通に思っていました。
でも、彼の家に行ってみると…
冷蔵庫の中は、なぜか食べかけのものばかり。
「あれ?買い物してないのかな?」と思って、
私が「買ってくるね」と言うと、
申し訳なさそうに「ありがとう」と言う。
その時は特に深く考えなかったんですが、
ある日、息子くんが外出している時に、
初めて仕事の話をちゃんと聞いてみたんです。
「仕事は順調?」
「フリーランスの看護師ってどんな感じなの?」
その時、彼の顔が少しだけ曇ったのを覚えています。
「今はあまり仕事がなくて…
誰かの代わりで入るくらいかな」
その話を聞いて、なんとなく理解しました。
安定した収入がある生活ではないんだな、と。
その時、はっきり「問題だ」と思ったわけじゃないけど、
心のどこかで、少しだけ不安が残りました。
Q3. その違和感は、すぐに問題だと気づきましたか?
正直に言うと、気づいていたけど、見ないようにしていました。
私はもともと、計画的にお金を管理するタイプで、
無駄なものはあまり買わない主義です。
でも彼は、真逆でした。
気に入ればすぐ買う。
私が「欲しいな」と言えば買ってくれる。
安ければ同じものをいくつも買う。
レストランでも値段は見ないし、
ホームレスの人には必ずお金を渡す。
優しい人なんです。
でも、その優しさと金銭感覚は別の話。
「あぁ、この人、お金の管理ができないタイプだな」
とは思っていました。
でもその時の私は、
「これは私が口出しすることじゃない」と思って、
見て見ぬふりをしていました。
Q4. なぜそのまま一緒に生活を続けたんですか?
一番の理由はシンプルで、
タヒチを離れたくなかったからです。
ちょうどその頃、
フォトウェディングの仕事を自分で始めようとしていて、
やっと形になりかけていたタイミングでした。
ここで全部を手放して、またゼロからやり直すなんて、
時間もお金ももったいない。
すごく現実的に、そう思っていました。
それに彼は、
私のやりたいことに一切口出ししない人でした。
ただ、応援してくれる。
それがすごく居心地が良かったんです。
家も、車も、生活の基盤もあったし、
仕事の動きも取りやすかった。
そして何より、
その時の私は「ひとりで頑張る」よりも、
「誰かと一緒に進む」ことを選びたかった。
家族みたいな存在があったから、
頑張れたのも事実です。
Q5. 今振り返って、その時の自分をどう思いますか?
ちょっとポジティブすぎたかな、とは思います。
「なんとかなるでしょ」っていう気持ちで、
ずっと突き進んでいました。
今なら、もう少し冷静に考えると思うし、
誰かに相談する選択もあったかもしれません。
でも同時に、
あの時の自分を否定する気もありません。
あの状況で、あの選択をしたのは、
それが自分なりのベストだったから。
彼は彼で、
私に出ていってほしくなかったと思うし、
私は私で、
彼らと一緒にいることで救われていた部分もありました。
料理して、家事して、送迎して、髪も切って。
今思えば、便利屋みたいな存在だったかもしれません(笑)
でも、そこにはちゃんと感情もあって、
お互いに必要としていた関係だったと思います。
つづく。
