ろろろのめ第5回 サマソニ2025──変化する世界と向き合うフェスの現在地
サマソニ2025──変化する世界と向き合うフェスの現在地
2025年のサマーソニック(SUMMER SONIC)は、例年以上に賛否が分かれている。だが、その背景を紐解くと、いま音楽フェスが直面している「変化」と「葛藤」が鮮明に見えてくる。
今聴くべき日本人アーティストが集結
Spotify Stageには、ブランデー戦記、AKASAKI、CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN、Billyrrom、Lavt、reina(w.a.u BAND Set)× TRIPPYHOUSING、レトロリロン、muqueなど、注目度急上昇中の日本人アーティストが勢揃い。2025年に聴くべき国内アクトが一堂に会す、まさに“新しい世代の祭典”となっている。
この動きに呼応するように、サマソニ大阪会場のプラチナチケットが5月9日には完売。過去数年、券売のスピードが鈍化していた大阪会場において、この動きは今後のポジティブな兆しと捉えられる。



賛否を呼ぶヘッドライナーと「サマソニの方向性」
しかし一方で、Fall Out Boyのヘッドライナー起用に対して「トリとしては弱い」との声がX(旧Twitter)を中心に上がっている。さらには、The Prodigy、Bloc Party、黒夢といった一部ラインナップに対して「この内容で2万円は高い」「ゴミラインナップ」といった辛辣な意見も少なくない。
加えて、XGが別の大型プロジェクトのためにサマソニの出演を辞退したことも、J-POP勢の動向に敏感なファンの間で話題となった。
「従来のロックファンにはついていけない」「もはやロックフェスではない」という批判的な声も目立つが、こうした反応こそが今の音楽フェスを取り巻く“断絶”を象徴している。
世界の潮流と向き合うサマソニ
そんな中、サマソニを主催するクリエイティブマンの清水直樹社長は、「今はラテンとカントリーの時代」と現状を冷静に分析。2年連続でTravis Scottにアプローチし、無理を承知でDrakeにもオファーするなど、グローバルシーンへの食らいつき方は明確だ。
Alicia Keys(月間リスナー数3,200万人)、Fall Out Boy(同2,400万人)、Bring Me The Horizon(同1,250万人)、The 1975(同1,670万人)といったヘッドライナーの実力も、近年のトレンドと比べて遜色ない。批判の一方で、確実に「今の世界基準」に照準を合わせているのがサマソニの現在地だ。




変わるアーティストの戦略とフェスの役割
アーティストの動きも変化している。藤井風は欧州の名門フェス、オランダ「ノース・シー・ジャズフェス」やデンマーク「ロスキレ・フェスティバル」への出演を選び、アジアアーティストとは一線を画したフェス戦略を展開している。これは、フェス通の存在を感じさせる動きであり、“ファンダムの外側”へと手を伸ばす数少ないJ-POPアクトの一例でもある。
一方、K-POPアクトはCoachellaやLollapalooza同様、サマソニを海外進出の足がかりと捉えており、国際的な意味も増している。
また、BECKやFountains of Wayne、THE YOUNG PUNXのような中堅クラスの洋楽アーティストは、アーティスト主催のフェスや2万人規模のイベントにシフトしつつある。これもまた、フェスの「選び方」が変わりつつあることを示している。

若者とファンダムが動かすフェス
今、映画も音楽も“お金を落とす”のは若者とファンダム層が中心になっている。フェスも例外ではない。かつてのような「ロックファン=購買層」の構図は崩れ、そこに適応できないロックファンがフェスに違和感を覚える構図が生まれている。
だが逆に言えば、そうしたファンダムの動きを的確に捉えたアクトを揃え、時代に即したラインナップを構築できるフェスこそが生き残っていく。
「今のサマソニ」に適応できなければ、「今の世界」にもついていけない
サマソニを通して浮かび上がるのは、音楽フェスという場が「文化の変化」を受け止め、更新していくための試金石となっているという事実だ。
従来の価値観を守るだけでは立ち行かない。逆に、時代の波にただ流されるだけでも信頼を失う。そのバランスを探りながら、2025年のサマソニは一歩ずつ“今の世界”と向き合っている。
