【読書】おすすめの本『彼女が天使でなくなる日』『常設展示室』
気づけば今年もたくさんの本を読んでいました。
今回は、その中でも特に心に残った2冊をご紹介。
どちらも静かでやさしい物語。でも、その奥には確かな強さが流れています。
『彼女が天使でなくなる日』寺地はるな
「かわいそうな子」として見られ続けた主人公が、誰の期待にも寄りかからず、自分の人生を選び取っていく——そんな姿が、心に残る物語でした。
主人公は、幼い頃に母を亡くし、父には置き去りにされてしまいます。たどり着いたのは、南の島。民宿を営む遠縁の政子さんに引き取られ、「モライゴ」と呼ばれながらも、島の人たちに大切に育てられていきます。
けれど、大人になった彼女を取り巻く人々は、いつの間にか“彼女の過去”に意味や物語を期待するようになります。悲しい境遇から立ち上がった健気な人——そんな風に「わかりやすく」して、勝手に感動したいのです。
中には、彼女の痛みに触れることで自分の弱さを受け入れてほしい、そんなふうに近づいてくる男性もいます。でも彼女は、そのたびに静かに距離を置きます。彼女のまなざしはいつも冷静で、他人の期待には応えません。
やがて、育ての親である政子さんの引退を機に、主人公は島に戻ります。そして、託児所を併設した民宿を始めることに。自然に囲まれた場所で、訪れる人たちをやわらかく迎えながらも、誰にも媚びず、流されず、自分のペースを守る。
その姿には、飾り気のない優しさと、芯のある強さがありました。
この物語は、ただの癒しではありません。
「誰かの物語として生きること」と「自分の物語を紡ぐこと」の違いを、丁寧に描いています。
読後、ふと思いました。
私たちも、知らず知らず“天使”の役を演じてしまっていることがあるのではないか、と。誰かの期待に応えるために、いい人でいたり、わかりやすい物語に自分をあてはめてみたり。
でも、いつかその役を下りて、もっと自由に、もっと誠実に、自分のまま生きていけたら——
私たちにも、天使をやめられる日が来るのかもしれません。
『常設展示室』原田マハ
美術がテーマの物語が好きで、これまでにも何作か原田マハさんの本を読んできましたが、『常設展示室』はその中でも特に心に残る一冊になりました。
この作品は、美術館やギャラリーで働く女性たちが主人公の短編集です。舞台はそれぞれ異なりますが、どの物語にも「作品と人が出会う瞬間」が丁寧に描かれていて、美術品が単なる鑑賞対象ではなく、人生に寄り添う存在として登場します。
ピカソの《盲人の食事》、ラファエロの《大公の聖母》、マティスの《豪奢》など、登場する絵画も実在の名作ばかり。作中の人物たちがそれらの作品と向き合う姿を通して、「芸術って、こんなにも人の心に作用するものなのか」と改めて感じさせられました。
それぞれの主人公は、悩みや葛藤、過去との折り合いを抱えながらも、美術という光を頼りに、静かに前を向いていきます。華やかすぎず、でも確かに心に残る余韻がありました。
この本を読み終えてから、「私にも、こんなふうに心の奥で響きあえる一枚の絵と、いつか出会えるだろうか」と思うようになりました。美術館で絵を観るとき、少し違った気持ちで向き合えそうです。
アートや物語が好きな方に、そっとおすすめしたい一冊です。
おわりに
どちらの作品にも共通して感じたのは、「人は誰かの物語としてではなく、自分自身の物語を生きていける」という静かな力強さでした。
『彼女が天使でなくなる日』では、同情や期待を受け流しながらも、自分らしい人生を選び取っていく主人公の姿が胸に残ります。そして『常設展示室』では、絵画との出会いを通して心を少しずつ整え、未来へと歩き出す女性たちの姿に、芸術がもつ優しい力を感じました。
もし今、誰かの期待や役割に疲れてしまっているなら、どちらの本もきっと、そっと背中を押してくれるはずです。
最後までお読みいただき有難うございました☆良かったらスキも押していただけると嬉しいです!
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