規模拡大で売上ほど利益は増えない
[要旨]
公認会計士の金子智朗さんによれば、事業規模が拡大すれば、従業員1人あたり売上高は大きくなりますが、従業員1人あたりコストも大きくなるため、従業員1人あたりの利益額はそれほど大きくならないそうです。その理由のひとつは、従業員数が多くなると、コミュニケーションのための労力も大きくなるからと考えることができるそうです。
[本文]
今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんによれば、事業規模を拡大すると、シナジー効果などで、従業員1人あたり売上高が増加する、すなわち、固定費比率が下がるので、従業員数が多くても、従業員1人あたり売上高がそれほど多くない会社は、会社として事業活動を行っている意義が低いということについて説明しました。
これに続いて、金子さんは、企業規模が大きくなっても、従業員1人あたりの利益は、従業員1人あたりの売上高の大きさほどには大きくならないということについて述べておられます。「マクロ的に見れば、企業規模が大きくなるほど1人当たり売上高は大きくなるという話をしました。規模の小さい企業と大きな企業では、最大7千万円ほどの差があります。
では、1人当たり利益はどうでしょうか?実は、1人当たり利益は企業規模が大きくなったからといって劇的に変わるわけではありません。せいぜい、200~300万円程度の差の中に収まつてしまいます。そうなる理由は明白です。1人当たりコストも、加速度的に増加するからです。企業規模が大きくなっても、企業の全コストが1人にかかるコストの単純合算にしかならなかったら、1人当たりコストは企業規模に関係なくフラットになるはずです。
ところが、1人当たり営業費用(売上原価と販管費の合計)は(中略)、1人当たり売上高とほぼ同じように、企業規模の増加に伴って加速度的に増加するのです。そうなる理由として考えられるのは、企業規模が大きくなるにつれて、余計な仕事が加速度的に増えるということです。それは、必要なコミュニケーションの数を考えるだけでも分かります。もし、たった1人で仕事をしていれば、誰かと会議をするということはあり得ません。すなわち、誰かとコミュニケーションする必要はゼロです。
これが2人以上になると、自分以外に情報を伝達する必要が生じます。2人ならばコ三ュニケーションを取らなければならない組み合わせは3通りです。それが、3人になるとその組み合わせは5通りになります。4人になると、組み合わせは6通りになります。一般に、従業員がn人になると、n×(n-1)÷2通りの組み合わせができます。つまり、コミュニケーションに要する手間は、ざっくり言って、規模の増加に対して2乗のスピードで増加するということができます。
コストにその手間が反映されると仮定すれば、営業コストも2乗のスピードで文字通り加速度的に増加するわけです。これは私の実感とも実によく合います。私の社会人人生は、数万人規模の大企業からスタートしました。その後、転職したコンサルティング会社は当初250人程度でした。在籍していた丸4年間で1,000人を超える規模になりましたが、その後独立して、今度はたった1人になりました。私のビジネスの規模はどんどん小さくなったわけです。
それに反比例するように、無駄な仕事は劇的に少なくなりました。目的が不明確な会議や、根回しに奔走すること、仁義を通すために、他部署に話を通しに行くこと、自分で勝手に会議を欠席しておきながら、『俺はそんな話聞いてない』とのたまう抵抗勢力をなだめるために時間を浪費すること。そういったことが一切なくなりました。逆に、最初の大企業ではそんなことばかりやっていたような気がします。皆、それが仕事のように思っている節さえありました。それが大企業の実態です」(164ページ)
金子さんのご説明は、ほとんどの方が、感覚的にご理解できると思います。規模の大きい会社は、それなりのメリットがありますが、その一方で、多くの従業員の足並みを揃えるための労力が必要になります。でも、前回の記事でも述べたように、規模の大きな会社にはシナジー効果があるので、ある程度は規模を大きくすることは妥当といえます。ところが、経営環境の変化が激しくなってくると、規模の大きい組織は、それへの対応のための労力も増えてきており、最近は、経営環境の変化に素早く対応しやすいティール組織など、フラットな組織が望ましいと考えられるようになってきました。
これは、逆に言えば、かつてのような大量生産、大量消費の時代は、トップダウン型組織が適してり、組織の規模の大きさが、そのまま長所となっていました。でも、現在は、前述したように、組織の規模がそのまま長所となりにくい時代であるため、経営環境に合わせた組織づくりが重要になっています。そして、その組織づくりは、当然、コストの側面にも現れます。これを、裏を返せば、経営者の方が組織づくりをしないと、業績にも大きく影響してしまうということになるでしょう。
2026/6/23 No.3478
