小さな町の大きな歴史的遺産
計画性ゼロの我が家。
思い立ったが吉日、ふらりと出かけることが多い。自宅はカステッリ・ロマーニと呼ばれる地域にあり、週末になると、ローマっ子が田舎の食事と自然を堪能しに大挙してくる土地柄である。
つまりこの辺りのレストランは、週末はどこも満席。なんとかなるさと安易に出かけると、昼食難民となってしまう。ずぼらな我が家といえども、出かけるとなったらランチの予約だけは最低限しておかなくちゃ、くらいの常識はある。
先週末も、「明日、どっかでかける?」となったのは土曜日の夜だった。ローマっ子がこの辺りにやってくるのだから、この辺りに住む我々はさらに辺鄙な山奥に行こうということになり、向かったのはコーリ(Cori)という町だ。
人口は1万人を少し超えるくらい。
サフランが特産という町は迷路で、車で侵入すると対向車とはすれ違えないという惨事(私にとっては)が発生する。

特産のサフランの黄色に加え、旬のソラマメやアーティチョークの緑が鮮やかな昼食。友人家族と食べて飲んでおしゃべりして、日曜日の午後はまったりと時間が過ぎる。コーリの町についてはなにも知らないけれど、ネットで検索するといくつかの見どころがあるらしい。食後の眠気覚ましに、町を散策してみた。

古代と中世が混在しているのはイタリアの町では珍しいことではないけれど、2000年以上も前の遺跡は朽ち方も美しい。紀元前80年ごろ、独裁者スッラの時代に建てられたというこの寺院も、数世紀を超えて生き残った勇者みたいな姿だ。下の土台部分と中心がずれているため、それ以前の時代の建物の上に建設された可能性大なのだとか。

こんな小さな町とはいえ、この遺跡は芸術家や文学者にさまざまなインスピレーションを与えたという。ラファエロがブラマンテからサン・ピエトロ大聖堂の設計を受け継いだ際に、この遺跡を測量したという伝説がある(あくまで伝説です)。

風が冷えてきたので早々に退散し、車で移動。
町から少し離れたところにあるサンティッシマ・アヌンツィアータ聖堂に立ち寄ると、こちらは15世紀のフレスコ画が美しい。遠近法の技術はかなり怪しいのだけど、それがまた中世の面影を残していて、ほほえましくも好ましい。


説明してくれた町の女性によれば、コーリの町はかつて、ナポリ王国を治めていたスペイン人の影響を受けた時代があるとのこと。このフレスコ画もスペイン人の枢機卿による発注で、その存在を誇示するかのように彼らの紋章が麗々しく描かれている。

石造りの聖堂の外には、小さな庭園が。ここからは、山の斜面に立つコーリの町をのぞむことができる。歩いていても見落としてしまいそうな小さな聖堂は、日曜の午後の空気にふさわしい穏やかさをたたえていた。
おいしいものを食べることを目的に訪れた小さな町。
期待もしていなかった歴史の遺産に、心も満たされる。
ああよき日曜日。明日からの月曜日もまたぼっちらぼっちら行きますか…。
という気分にさせてくれた日でした。
