パールズのゲシュタルト療法に驚愕した!(3)
前回の記事では、「自分が愚かに思える」というグロリアの出してきたテーマに対して、パールズが非言語(足をばたばた、手を大きく振る)を指摘し、グロリアにその意味を問いかける部分を記事にしました。そこに対してグロリアは明らかに不快感と怒りを示しています。
続きを書いていきますが、パールズの非言語面への指摘はまだ続き、グロリアはそこに対して彼女なりに建設的に反論をしようとする箇所からです。
新たな非言語面への指摘とグロリアの反論
グロリア: そしてもっと人間的になってほしいです。それは私には人間的に見えません。
フレデリック・パールズ: すべての答えを知っているのは人間的ではないんですか? より人間的というのはどういうことですか?
グロリア: あなたはすぐに私の足の動きを見つけ出そうとし、なぜ私がこうしているのか(手を動かしながら)、なぜあなたがそうしているのかを探ろうとします。
フレデリック・パールズ: ああ、私には目があるんです。あなたが足を動かしているのが見えます...それを見るのに科学的なコンピュータは必要ありません...考えてみましょう。あなたが足を動かしているのを見るのに賢くある必要はないんです。
グロリア: 分かっています。でもあなたはそれに何か理由を見つけようとしているように見えます。
フレデリック・パールズ: そうではありません。それはあなたの想像です。
グロリア: 分かりました。あなたに何を望むか分かります...あなたに言ってもいいですか?
フレデリック・パールズ: ええ。
グロリア: 私が足を動かしていることに気づいて、本当に緊張している時にくすくす笑っていることに気づいて、それを受け入れてほしいんです。説明を強いられて防衛的になるのではなく...なぜこういうことをしているのか説明したくないんです。
フレデリック・パールズ: 説明を求めましたか?
グロリア: あなたは「なぜ私は」とか「何をしているのか」と言いましたよね。
フレデリック・パールズ: その通りです...足を動かしている...説明は求めていません。それはあなたの想像です。私ではなく、あなたの想像の効果なんです...大きな違いです...
グロリア: (大きなため息)
フレデリック・パールズ: もう一度それをしてください。
グロリア: これのことですか?(大きなため息)
フレデリック・パールズ: ...今どんな気持ちですか?
グロリア: 分かりません。
フレデリック・パールズ: 馬鹿な振りをしているんですか?
グロリア: 馬鹿な振りなんかしていません。正しい答えが分からないんです。
フレデリック・パールズ: それは単なる愚かさです... 髪の毛に何かしましたね。私の髪の毛に何か気に入らないものがありますか?
グロリア: いいえ。
フレデリック・パールズ: わかりました。
グロリア: いいえ、でもあなたの髪と特徴は、以前あなたについて感じていたことと一致します...あなたのことを怖がれると感じていて、あなたはとても尊敬を要求するタイプの人のように見えます。
フレデリック・パールズ: どうぞ自由に。私は多くの尊敬を要求する、それがあなたが今見たことですね。
グロリア: ええ、「私がどれだけ賢いか知っているでしょう。私はあなたより心理学について詳しいんですよ、グロリア。だから私の言うことはもちろん正しいんです」という感じです。
フレデリック・パールズ: グロリアとして同じことが言えますか...グロリアと同じような...でも同じ演技として。「私は尊敬を要求します。なぜなら...」
グロリアはパールズに、「いちいち非言語面の説明ばかりを求めないで」「そこも含めて受容して」と、クライアントとしてはもっともな要求をしますが、それをパールズはやんわり(笑)無視します。
その一方で、パールズはグロリアの新たな非言語面(ため息、髪を触る)について指摘をしながら、私の目からは、グロリアの考えを少しずつ引き出しています。グロリアには、パールズがパールズ自身の知性に対する尊敬を要求しているように見えたようです。
比喩表現を使いながら自己表現の矛盾を指摘
ここで、パールズはグロリアがセッション冒頭で話していた「隅っこでうずくまっている」という比喩表現を使いながら、グロリアの自己表現の矛盾を指摘していきます。
グロリア: 分かりません。
フレデリック・パールズ: 分かっているはずです。
グロリア: 父とは重なりますが、私自身とは...私は尊敬を要求しているとは感じません。
フレデリック・パールズ: 尊敬を要求しないんですか?
グロリア: はい。
フレデリック・パールズ: ええ、もちろん。
グロリア: もっと...あなたにもっと尊敬してほしいです。
フレデリック・パールズ: そうですね、つまり尊敬を要求しているんですね?
グロリア: そうですね、ええ、ええ、あなたから尊敬を要求できるなら、そうしたいです。
フレデリック・パールズ: やってください! あなた自身以外に誰が妨げているんですか?
グロリア: 隅っこに追いやられたら、あなたは私を溺れさせるだけで、少しも助けてくれないと感じるからです。あなたの基準に全く達することができないと分かっています。
フレデリック・パールズ: あなたが隅っこにいる時、私は何をすべきなんですか?
グロリア: 出てくるよう励ましてほしいです。
フレデリック・パールズ: ああ! 自分で出てくる勇気が足りないんですね。誰かに困った少女を隅っこから引っ張り出してもらう必要があるんです。
グロリア: はい。
フレデリック・パールズ: つまり、誰かに注目してもらいたい時はいつでも、自分を隅っこに追いやって、救出者が来るのを待つんですね。
グロリア: はい、それが私の好きなことです。
フレデリック・パールズ: これが私が偽物と呼ぶものです。
グロリア: 失礼ですが。
フレデリック・パールズ: これが私が偽物と呼ぶものです。
グロリア: なぜ偽物なんですか? 私は自分がそうだと認めているのに...それがどうして偽物なんですか?
フレデリック・パールズ: 私にとってそれは偽物です。なぜならそれはトリックであり、ギミックだからです。自分を隅っこに追いやって、誰かが救出に来るのを待つ。
グロリア: 私はそれを認めています。自分が何をしているか分かっています。偽物を演じているわけじゃありません。私はそんなに勇敢なふりをしているわけじゃない。それを責めるのは許せません。まるで、開けっ広げに自分の力で立たないと偽物だと言っているようです。たわごとです! 隅っこに座っている時も、一人でここにいる時も、同じように本物なんです。
フレデリック・パールズ: でもあなたは今その隅っこに座っていません。
グロリア: まあ今はそうじゃありませんが...それに、私を偽物と呼ぶのは判断を下しているようで、とにかく嫌いです。
フレデリック・パールズ: ようやく話が進んできました。私は演技をする人を誰でも偽物と呼びます。誰かを好きになって、その人に会いたいと思うなら、その人に「会いたい」と伝えること、それは偽物とは呼びません。でも意識的に隅っこに入って救出されるのを待つこと、それを私は偽物と呼びます。
パールズは、「あなたは他人から尊敬を強いられているように感じていると言いつつ、本当は自分を尊敬して欲しいと思っている」「隅っこに座って救出者を待っているというのは欺瞞的演技であり、会いたい人がいるのであれば『会いたい』と正直に伝えればいいのでは」と、かなり短時間の対話でたたみかけていきます。
グロリアの感情発露
次の対話の中で、グロリアは前夫とパールズを重ね合わせたり、パールズに対する思いについて次々と語っています。グロリアはパールズにみじめで恥ずかしい思いをさせられていると感じて、また、感情が溢れて涙ぐみ始めています。
ちょっと長いですが、核心部分ですので区切らずに一気に翻訳を載せます。
グロリア: でもあなたは判断的だと思います。あなたは一生このような気持ちを感じたことがないんじゃないかという気がします...あなたはとても安全な立場にいて、こういうことをする人を偽物だと判断する必要がないのに...それが許せないんです。
フレデリック・パールズ: いいですね、今度は判断を下すことについて...
グロリア: あなたがそうしているんです! その大きな椅子に座って。
フレデリック・パールズ: 私が裁判官で、判断を下している...今度はあなたが私を判断してください。
グロリア: パールズ博士、私は全くあなたに親しみを感じません。私自身が可哀想に思えます。あなたは一つの大きなゲームをしているように感じます。
フレデリック・パールズ: 何ですって? 私たちはゲームをしているわけではありません。でもゲームにもかかわらず、私はあなたに触れることができたと思います。違いますか?
グロリア: もちろんそうです。
フレデリック・パールズ: そして的中したと思います。そう感じますか?
グロリア: 分かりません。ただ、誰かが、今のようにあなたに対して感じる時...それはまるであなたには感情がないかのようです。
フレデリック・パールズ: では、それを誇張してください。私に向かって話してください。
グロリア: できません...できません...笑いたくなります...私は...あなたが私より若ければ、本当に叱りつけることができるのに。
フレデリック・パールズ: 私はいくつであるべきですか?
グロリア: 私と同じ30歳です。
フレデリック・パールズ: いいですね。今私は30歳です...想像してください。
グロリア: はい...そんなに自信満々にならないでください。そんなに賢いと思わないでください。隅っこに入ったことがないからって、そんなに誇らしげにしないでください。私は、あなたがそんなに賢いふりをして威張り散らしているのは、私が隅っこに座っているのと同じくらい偽物だと思います。ああ、あなたが若いという感じが好きです。本当に...あなたを恥ずかしい思いにさせたいです。
フレデリック・パールズ: はい...恥ずかしい思いにさせてください...
グロリア: あなたは恥ずかしがらないでしょう。全く影響を受けないでしょう。
フレデリック・パールズ: 教えてください。私を恥ずかしがらせてください。私がどれだけ醜いか教えてください。
グロリア: あなたは醜くありません...あなたは品格があります...それがあなたに...それはますますあなたの味方になります。見た目が品格があれば...それもまたあなたの味方になるんです。
フレデリック・パールズ: そうですね、グロリア。ああ、一つ分かりますか。私たちはかなりいい戦いをしましたね。
グロリア: いいえ、あなたは私と戦っているとは思いません。
フレデリック・パールズ: でもあなたはかなり出てきたと思いますが。
グロリア: いいえ、私はあなたに怒っています。
フレデリック・パールズ: 素晴らしい。
グロリア: でもあなたはとても超然としていて、私が怒っていることなど全く気にしていないようです。パールズ博士、あなたは私のことを全く認めていません。少しも。
フレデリック・パールズ: これは...訂正してください...私たちの接触はケアに関わるには表面的すぎます...私はあなたのことを...そうですね...今あなたは私のクライアントです...私はアーティストのように...あなたの中に隠れているものを引き出したいという範囲でケアしています...それが私がケアする範囲です。
グロリア: ええ、私は...もっと感じたいです...フラストレーションを感じます...今あなたと別れて二度と会わないとしたら、もっと接触がなかったことにフラストレーションを感じるでしょう。私は完全に接触が取れていないと感じます。まるで私を理解していない赤ちゃんと話しているようです。少しも接触が取れていないと感じます。それが私をフラストレーションさせます。それは怒っていることよりも気になります...接触がないよりは怒って戦う方がましです...ええ...これは夫と喧嘩していた時を思い出します...彼は座って私の話を聞いていましたが、私が彼をどれほど憎んでいるか、どれほど怒っているかなど全く気付いていませんでした。ええ、むしろあなたに影響があってほしいです。本当に私を憎んだりなんかしないで...でもあなたは意図的に私との接触を避けていると感じます。
フレデリック・パールズ: 私はどうあるべきですか? あなたの想像で、私があなたへの関心をどのように共有できるか教えてください。
グロリア: 言葉では言えません。あなたに感じてほしい気持ちは分かっていますが、言えません。ただ感情です。分かりません。人間として、感情を持つ存在としてもっと尊重してほしいという感じです。
フレデリック・パールズ: さて、最初に戻りましょう...つまり尊重が欲しいんですね?
グロリア: はい、そうです。これは最初に言った尊重とは違う種類のものです。
フレデリック・パールズ: でもあなたは...尊重が必要なんですね?
グロリア: はい。
フレデリック・パールズ: 私はあなたをとても尊重していると思います...あなたが自分の偽物の部分を受け入れることを拒否し、それが私たちを本物の部分に導いたからです。今の数分間、あなたは素晴らしく本物でした。もう演技をしていませんでした。爆発しているのが見えました。
グロリア: ええ、でも誰かのことが好きじゃない時や、誰かのしていることに同意できない時、私には正当な権利がないと感じます。もし彼らを尊重しなければならないなら、もし彼らが私より上で、私より優れているなら、私には本当にあなたにどれだけ怒っているか話す権利がないと感じます...
フレデリック・パールズ: それはナンセンスです。あなたは自分を安全な隅っこに戻しているんです。
グロリア: それが私の感じ方です。それが安全な隅っこの感じ方なんです。
フレデリック・パールズ: では安全な隅っこに戻ってください。なぜならあなたは安全な隅っこにいて、一瞬出てきて、私とほぼ出会いそうになり、私に少し怒ることができました。今は安全な隅っこに戻ってください。
グロリア: あなたが人間として私を尊重するのは、私が攻撃的で力強く強い時だけだと言っているように感じます。ええ、私は思いました...あなたの前で泣くなんて死ぬほど怖いです。笑われて偽物と呼ばれそうです。私の弱い面を受け入れてくれないように感じます...あなたに叫び返して怒鳴っている時だけです。
フレデリック・パールズ: 私の存在に疲れているでしょう。
グロリア: ええ、でもあなたにその満足は与えないわ。
フレデリック・パールズ: もう一度それを言ってください。
グロリア: いいえ。
フレデリック・パールズ: もう一度言ってください。
グロリア: 私は...あなたの前で泣いたり弱さを見せたりしないようにしています。またあなたに攻撃されるのが怖いからです。
フレデリック・パールズ: 目に涙が浮かんでいることに気付いていますか?
グロリア: むせび泣きそうな感じはありますね。はい、感じます。
フレデリック・パールズ: 私を絞め殺せますか?
グロリア: 演技としてなら、でも本当にはできません。
フレデリック・パールズ: なぜ本当にはできないんですか?
グロリア: ええ、そこまであなたを憎んでいないからです。
フレデリック・パールズ: 私を絞めたいですか?
グロリア: はい、絞めたいです。あなたを泣かせるためです。あなたの弱い部分、傷つきやすい部分を見たいです。
フレデリック・パールズ: それはあなたにとって何をしてくれますか?
グロリア: 私が...より聞いてもらう権利があると感じさせてくれます...あなたがそんなにすぐに私を攻撃しなくなるでしょう。
フレデリック・パールズ: あなたは私が泣いたら攻撃しますか?
グロリア: いいえ。
フレデリック・パールズ: でも私はあなたが泣いたら攻撃するだろうと?
パールズとして、このカウンセリングの位置づけや向き合い方を途中できちんと説明しているのが印象的です。グロリアとしても感情の発露を十分にしたと判断したのか、「隅っこにまた戻ってください」とも指示をしています。隅っこから出てきて本音を語ったグロリアの事を褒めてもいますね。
その一方で、グロリアが涙ぐんでいることを指摘し、グロリアからパールズへの憎悪感情についての指摘を再度始めています。
ここまでのまとめ
動画を初見したときには、「何が何だか」という感じで私も混乱していたのですが、改めて見ると、パールズの意図と、グロリアの気づきの進展が何となくわかってきますね。
以前に記事にしたエリスとグロリアのセッションが理知的に進んだのに対して、グロリアの感情的な部分も含めた本音を引き出すことに、パールズは成功をしているようにも見えます。パールズ自身も一定の成果があったことに言及していますね。
この対話がどのように終えられるかは次の記事で。
