対話の冒頭に宣言してしまおう
アドバイスの冒頭に目標や効果の宣言をすることで、思わぬ効果があるかもしれません。普段、忙しくて目の回るような人ほど、知っておいて頂きたいことです。
二つの会話例
例えば、以下の二つの会話例を見て、あなたはどう感じますか?
まずは、一つ目のパターンです。
会話パターンA
上司:このレポート、もうちょっと早くならないかな?
部下:他の急ぎの案件があって、どうにも時間のやりくりが・・・
上司:今より、少しだけ仕事のスピードが上がってくれればなあ・・・まあ、よろしくお願いします。
こちらが、二つ目のパターンです。
会話パターンB
上司:このレポート、もうちょっと早くならないかな?
部下:他の急ぎの案件があって、どうにも時間のやりくりが・・・
上司:休憩をしっかりと取る人は、仕事の能率が上がるらしいよ。今日は、午後に10分くらい余分に、小休憩を挟んでみたらどうかな。そうすると、少しだけ仕事のスピードが良い形で上がってくるかもしれないから・・・
比べるとどうか
この二つを比べてください、とお願いをすると、以下のような意見が「心の中で」出てくると思います。
パターンAの方が、確かに高圧的ではあるけれども、職場ではよくある光景だと思う。
パターンBの上司は、一見優しそうだが、うわべだけな気もする。
むしろ、パターンAの上司の方が、「仕事のスピードを上げて欲しい」と期待感が明確なのでは・・・
パターンBくらいのことを言うのであれば、精一杯の部下を助けて欲しい。
ここで、「心の中では」と書いたのは、例えば集合研修のような場面では、周りの目もありますので、みんな「パターンBの方が部下の立場に立っている」「よりソフトな声がけをしていて素晴らしい」などど、聞こえの良いコメントばかりをするため、です。
でも、実際のところは、そういった事を「心から」思っている人は少なく、「Aの上司も嫌だけど、Bの上司も何だかなあ・・・」と思う人は一定数おられると思います。せいぜい、「頼りないお人よし」くらいでしょうか。
Bの上司の戦略
一方で、人間心理の面から考えると、Bの上司は非常に戦略的です。
Bの上司は、「部下ができること」「できないこと」をしっかりと見極めつつ、相手の感情を害するリスクをゼロに保ちながら、アドバイスの実効性を、ほぼコストフリーで高めています。
① ラポールの形成
まず、人は他人から親切にされると、両者間に信頼関係が生まれますし、その人の言う事を聞いてみよう、という意志が高まります。Bの上司のセリフを見て、「攻撃的である」と感じた人は少ないと思います。
上司Bは、部下との信頼関係に少なくともネガティブに作用していませんし、日ごろからこういった声かけをしているのであれば、部下との信頼関係は高い状態にあると思われます。
② 一方で、部下の状態を許容はしていない
その一方で、仕事が遅いかもしれない部下の状態を、Bの上司は許容はしていません。仕事のスピードが上がって欲しいという意志は示しています。Aの上司と違うのは、直接的に示しているか、間接的に示しているか、です。
③ 上司Bは部下のできることだけを指示している
上司Bは、「仕事のスピードを上げる」という、部下は直接的に作用できないことを指示していません。「10分の休憩を取る」という、直接的に作用できることを示唆しています。
更に、冒頭の宣言で効果を上げている
更に、上司Bは、「休憩をしっかりと取る人は、仕事の能率が上がるらしいよ。」と述べています。適度な休息は集中力を回復させることは知られていますので、WEB検索をすれば、それなりに根拠は出てくるのでしょう。
その一方で、上司Bは、この発言をした時点では、うろ覚えの記憶で、確信度の低い情報を話している可能性もあります。しっかりとしたエビデンスを持っていなくても、こういった事を無責任に「宣言」することは可能と言えば、可能です。
まあ、そういった行為には倫理的に問題があると思いますし、それを繰り返しているとオオカミ少年になってしまいますが・・・
どういうことか?例えば、あなたがスーパーで「白さスッキリ洗剤」を買って帰ったとします。それを使って洗濯をすると、洗濯物は「白さスッキリ」になっているはずです。特に猜疑心を抱く状況でなければ。だって、そう「宣言」されていますので・・・
まとめ
この記事を読んだ方で、こういったことに馴染みがない方は、ちょっと、「?」という気分になっているかもしれません。
ここに書かれている方法に、もう幾つかの手法を組み合わせると、長い間、悩んでいたような事が解消した事例も身近にあったりします。
是非、そういった良い方向で使えないか、考えてみて頂くと、より良い形に繋がっていくと思います。
