アルバート・エリスのカウンセリングを見て驚いた!(6)
前回の記事までが、アルバート・エリスとグロリアのセッションの和訳と感想でした。今回は、セッション全体を俯瞰して、どういった構造で進められていたかを振り返ります。
セッションは5つのパートに分けれそう
このセッション全体は5つのパートに分けることができそうです。それぞれのパートで、関連する対話例を抜き出しています。()内の太字は、セッションのポイントを強調するために付記しました。
① 問題の特定と初期アセスメント
オープンな質問で開始し、クライアントの主訴を明確化
具体的な状況に焦点を当て、感情と行動のパターンを特定
「自分らしくない態度を取ってしまう」という対処行動も同時に把握
エリス:それでは、何があなたを一番悩ませているのか、お聞かせいただけますか?(オープン質問と主訴の特定)
グロリア:ええと、はい。私が一番お話ししたいのは、独身生活への適応についてです。主に男性関係についてですね。
…
エリス:では、あなたの緊張について少し話してみましょう。あなたが好ましいと思える人、気に入りそうな人に出会ったとしましょう。その緊張の源が何なのか、あなたが自分に何を言い聞かせているのか、それを見ていきましょう。あなたはその男性に会って、緊張して、恥ずかしくなる。(具体的場面を設定して感情と行動を特定)
グロリア:はい、でもそれは普段表に出しません。いつも表面的な態度を取り返してしまうんです...実際、相手の男性が私に対してとる態度と同じように振る舞ってしまいます。表面的な態度を取って。本来の知的な自分を出せません。典型的な頭の悪いブロンドのように振る舞ってしまって...彼らと一緒にいると自分らしくないんです。より落ち着かない感じになります。
…
エリス:はい。『男性と出会うためのガイド』でも書いたように、人は緊張や恥ずかしさ、羞恥心といったネガティブな感情を、自分に何かを言い聞かせることで生み出すのです。それも単純な断定的な文章で。では、あなたが自分に何を言い聞かせているのか、探ってみましょう(内面対話への注目)。あなたはその人に会っている。表面的な態度を取る前に、あなたは自分に何と言っているのでしょうか?(問題行動の直前に焦点)
グロリア:分かります。私は...彼の期待に応えられない。私は彼には十分ではない。彼は私より上の人。このタイプの男性を望んでいるけれど、彼を引きつけるだけの何かを持っていないんじゃないかと怖いんです。
② 非合理的ビリーフの探索
「その時、心の中でどんなことを考えているのでしょうか?」という質問で内的対話を探る
クライアントの「期待に応えられない」という基本的な信念を明確化
「破局的思考」のパターンを指摘
エリス:それは文章の最初の部分ですね。そしてそれは本当かもしれません。彼があなたより優れている面があるかもしれないし、あなたに惹かれないかもしれない。でも、もし単に「彼は私より優れているかもしれない」と考えているだけなら、それほど動揺することはないはずです。あなたはそこに第二の文章を付け加えているんです。「もしそうだとしたら...それは...ひどいことだ」という。(ビリーフの二重構造の指摘)
グロリア:そこまで極端ではないと思います。私もそのことについて考えたことがあります。普通は「またチャンスを逃してしまった」という感じです。自分の最高の部分を見せたいのに。私には自信もあるし、提供できるものも十分にあるはずなのに。
グロリア:あなたの言っていることに沿っているかわかりませんが、私が感じるのは、その時疑問に思うんです。私は、自分のタイプではない男性にしか魅力的に映らない種類の女性なのかしら?私には何か問題があるの?私の好みの男性には絶対に出会えないのかしら?
エリス:はい、今おっしゃったことが私の言いたいことに近づいています。あなたは実際にこう言っているんです。「もし私がそういうタイプの女性で、良い条件の男性に魅力的に映らないとしたら、それは恐ろしいことだ。私は望むものを絶対に手に入れられない、そしてそれは本当に恐ろしいことだ」と。(破局的思考パターンの指摘)
③ 非合理的ビリーフの論駁
仮定法を使用して極端な状況を検討
クライアントの二分法的思考を指摘
現実的な代替的解釈を提示
エリス:では、議論のために、仮にそうだったとしましょう。(仮定法を導入しての状況想定)
グロリア:はい。
エリス:あなたが平均的な女性だったとして。それはそんなに恐ろしいことでしょうか?不便かもしれない。不愉快かもしれない。望ましくないかもしれない。でも、単に「私は平均的な女性になるかもしれない」と考えるだけで、そんな緊張や恥ずかしさ、羞恥心といった感情が生まれるでしょうか?
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グロリア:それに、私は望むものを絶対に手に入れられない。もし私が平均的な女性で、望むものを絶対に手に入れられないということを受け入れなければならないとしたら...私は残りの人生を、つまらない男性たちと過ごしたくないんです。
エリス:でも、必ずしも「絶対に無理」というわけではありませんよね。(二分法的思考を指摘)あなたが本当に言いたいのは、チャンスが減るかもしれない、ということでしょう。私たちは知っていますよね、平凡な女性でも素晴らしい男性と付き合っている例を。(現実的な代替的解釈)
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エリス:ご覧ください、あなたはそこで過度な一般化をしているんです。「より困難になるかもしれない」という可能性から、突然「絶対に得られない」という結論に飛躍しているんです。(二分法的思考を指摘)
グロリア:はい、でもその時はそう感じてしまうんです。永遠に続くように感じるんです。
④ 新しい視点の構築
部分と全体の区別を説明
学習プロセスとしての視点を導入
失敗を許容する姿勢の重要性を強調
エリス:私たちの会話に引き寄せて言うと、あなたは自分の一部分、つまり緊張や男性の前で自分らしくなれないという部分に、あまりにも焦点を当てすぎているんです。その結果、それがほとんどあなたの全体であるかのようになってしまい、この「欠陥のある部分」のために、あなたの全体像を恐ろしいものとして捉えてしまっている。(部分と全体の区別を説明)ここで私たちは、それが欠陥だと仮定していますよ。取り繕って「大丈夫よ」なんて言うつもりはありません。うまくいっていないのは事実です。(失敗を許容する姿勢の重要性を強調)
エリス:もし今のあなたが、この欠陥のある部分、これらの特徴を受け入れて、今のようにそれを理由に自分を責め続けることをやめられたら、それは比較的単純な練習の問題になります。このネガティブな特徴に対して、取り組んで、練習を重ねていく問題に。(学習プロセスとしての視点を導入)
⑤ 具体的な行動計画の策定
具体的な行動課題を提示
リスクテイキングの重要性を説明
クライアントの自己効力感を高める励まし
エリス:先ほど言ったように、もしあなたが私の患者だったら、意図的に、本当に意図的に外に出て、自分を困難な状況に置くという宿題を出すでしょうね。(具体的な行動課題を提示)つまり、今見つけられる最も条件の良い男性たちに対して、自分らしくいることに挑戦し、リスクを取るということです。(リスクテイキングの重要性を説明)
エリス:では、それが図々しいとしましょう。失うものは何があるでしょう?最悪の場合、彼があなたを拒否するだけです。そして、もし私たちがここ5分ほど話してきたような考え方をしているなら、あなたは自分自身を拒否する必要はないんです。(クライアントの自己効力感を高める励まし)
日本語話者としての自然な質問例
各ステップにおいて、日本語話者として自然な質問例を作ってみました。
① 問題特定フェーズ
「具体的にどんな場面で困っていらっしゃいますか?」
「そういう状況になると、どんなことを考えてしまいますか?」
② ビリーフ探索フェーズ
「その時、心の中でどんな言葉が浮かんできますか?」
「もし上手くいかなかったら、それはどういう意味を持つと考えてしまいますか?」
「なぜそれがそんなに怖いのでしょうか?」
③ ビリーフ論駁フェーズ
「仮に〜だったとして、それは本当に取り返しがつかないことでしょうか?」
「100%完璧でないといけない理由はありますか?」
「友達がそういう状況にいたら、どんなアドバイスをしますか?」
④ 視点構築フェーズ
「別の見方をすると、どんな可能性が考えられますか?」
「これを学びの機会として捉えるとしたら、どんな面があるでしょう?」
「小さな一歩として、どんなことができそうですか?」
セッション全体をフロー図にすると
最後に、セッション全体とチェックポイントをフロー図にしました。

まとめ
最初に動画を見た時には、相手の様子や反応もあまりお構いなしに見えるくらい、アルバート・エリスが次々に畳みかけるので驚いたわけですが、落ち着いて解析をすると、一つ一つに意味があり、また、対話の構造があることが分かってきました。
大学生のときに著作を読んだアルバート・エリスのセッションが動画で見れたことは貴重でしたし、改めての学びの機会にもなりました。勇気を出してセッションを公開してくれたグロリアにも感謝をしたいと思います。
他にどんな記事があるんだろう、と思っていただいた方に。
