noteの生成AI流入はなぜ強い?【前編】検索エンジン流入数に基づく期待値を4.2倍も上回る生成AI経由流入の実態とは。
この記事では、株式会社ヴァリューズの行動ログを用いて、「検索流入が多いサイトほど、生成AI経由流入も多いことが見込まれる」という通説を検証することを試みています。結論として、確かに両者の間には一定の相関が確認できた結果となりました(後述しますが、ダブルジョパディのような状態)。
一方、それと同時に、その相関から外れた例外的な存在も観測されました。
その例外的な存在の代表例がnote.comです。本記事では、独自データをもとに、そもそもnoteがなぜSEOに強いのか?そして、検索流入からはじき出される期待値を超える生成AI経由流入(以下、エクセスAIトラフィックと呼びます)をどのように得ているのか、前編/後編に分けて探っていきます。
注:エクセス"excess"とは、【過多、過剰、超過、過度】を示す単語。マーケティングにおけるダブルジョパディの法則では、ブランドの規模から期待される行動ロイヤリティ以上のロイヤリティを獲得しているブランドを「エクセス・ロイヤリティ」などのように表現されます。
では、始めます。
はじめに
検証テーマ:検索流入と生成AI経由流入の関係
「検索流入が多いサイトほど、生成AI経由流入も多いことが見込まれる」というテーマは、ダブルジョパディの法則とよく似た構造になるのではと思ったことがきっかけで分析を開始しました。
つまり規模が大きいサイトは、LLMの事前学習のデータにも多く出現し、さらに昨今のドメイン優遇のSerpsの状況からすると、リアルタイム検索(いわゆるRAG)においてもヒットしやすい傾向がある、というものです。
「富めるものがますます富む」という状況があるのはほぼ間違いないだろうと思いましたが、ダブルジョパディ同様、そのシンプルな法則を眺めるだけに留めず、そこからの外れ値(冒頭のエクセスロイヤリティ等)が何か、そして、それはなぜ起きているのか?にこそ示唆があるものです。そこを明らかにしたかったのが今回の検証テーマの狙いです。
生成AI経由流入とは何か
生成AI(GEN AIとも言います)経由流入とは、ChatGPT、Perplexity、Geminiなどの生成AIツールが、質問応答や要約の際に参照・提示するURLから発生する流入を指します。なお、このデータにはGoogleの検索結果上に表示されるAIによる概要"AI Overviews"は含みません。
これら生成AI経由流入は、従来の検索流入(GoogleやYahoo!、Bingからのクリック)とは異なり、AIが情報源として選ぶ過程を含むため、新しい対応策がどこまで必要なのか?SEO界隈を賑わしている状況です。昨今では、AI可視性(ビジビリティ、Visibility)といったワードもよく聞くようになりました。
それではさっそく今回のデータをご覧ください。
検索エンジン経由流入 vs 生成AI経由流入の相関関係(2025年5月~6月)

Search traffic vs Gen AI traffic (May 2025 & June 2025)
集計期間:2025年5月~6月
調査対象:25のカテゴリーに含まれる692サイト
デバイス:PC&スマートフォン
調査元データ:株式会社ヴァリューズ 行動ログデータ
結論:全体としては一定の相関あり。例外としてnoteやwikipedia、githubといったサイトが観測された
このグラフでは、横軸を期間中の検索エンジン経由の流入、縦軸を生成AI経由の流入を集計しています。集計対象のURLは25カテゴリー(商品比較、ショッピング、メディア、企業・政府・団体・・・等々)に含まれる、約700サイトを対象に調査しました。グラフに記載した傾向線のR二乗(決定係数)は0.5551、P値は0.0001未満です。
本記事のテイクアウェイ(記事から得られること)
本記事のテイクアウェイ(記事から得られること)の一つ目、それは、相関関係に基づき、検索エンジン経由流入から、生成AI経由流入の期待値を導き出すことができる、というものです。因果の向きの仮説としては現時点においては「検索エンジンにて上位表示→LLMの事前学習データに含まれやすく、RAGの対象となりやすい」を前提とし、検索エンジン流入規模から生成AI経由流入に対しての期待される流入数を算出できるということになります。
二つ目のテイクアウェイとしては、一定の相関があるうえで、生成AIに引用された後にユーザーが実際に遷移しやすい/遷移しにくいサイトが存在している、というものです。日本のネット市場においては、本記事の主題であるnoteが超過トラフィックを得ている代表例でした。
さらに、①引用の割合と、②実際にユーザーが遷移するor行動を起こすことには隔たりがあるということも分かりました(3つめのテイクアウェイです)。
例えば、ahrefsの調査によれば、ChatGPT、Perplexityいずれも検索エンジン経由流入に比べて、wikipediaは引用されやすいという調査データが発表されています(今回はそれの再現研究的な位置づけにもなっています)が、筆者が所属する株式会社ヴァリューズのデータによると、むしろwikipediaに対する生成AI経由流入の実際のボリュームは、期待値より大きく下回っています。

Search traffic vs Gen AI traffic (May 2025 & June 2025)
これは機械的にプロンプトを打ち、引用率を算出するアプローチとは異なり、実際にユーザーが遷移しているかどうかを把握できる行動データだからこそ明らかになったポイントです。
さて、いよいよ注目すべき点として、noteに対する考察に入ります。
(note以外の注目サイトについては別途まとめたいと思います)
相関から外れる驚異的な存在──note.comの特徴は?
note.comの相関ラインからの外れ方
今回のダブルジョパディの相関関係からすると、サイトの検索エンジンからの流入規模から期待される、note.comへの生成AI経由流入は、その期待値のなんと、4.2倍になっています。これはかなりの外れ値です。検索エンジン経由流入についてはinstagramと同様であるため、生成AI経由流入についても同水準くらいに留まっていても良いはずなのに、このエクセスAIトラフィック(超過の生成AI経由流入)はなぜ生まれたのでしょうか?

検索エンジン経由流入 vs 生成AI経由流入
Search traffic vs Gen AI traffic (May 2025 & June 2025)
前提としてのnote.comのSEOの強さ
1.Googleからのドメインの評価
まず特筆すべきは、noteのドメインに対するユーザーおよびGoogleからの評価です。長年の運営と多くのユーザーによるコンテンツ公開により、Googleからも高い評価を受け、Googleとの資本提携に至るまでとなっています。
さらに下記は、SEO専門家である柏崎剛氏によるドメパ(DP)調査ツールのnote.comの調査結果です(柏崎さん、有益ツールをありがとうございます!)

ドメインパワーは、各種第三者ツールによって集計される数値ですが、Webサイトの信頼性や権威性を示す代替的な指標で、数値が高いほど検索結果の上位表示に繋がりやすいとされています。
なお、これら第三者ツールによるドメイン指標は、Googleが保有する特徴量と完全に一致するものではありません。Googleがサイトの権威性を示す特徴量としては、site_qualityスコアが知られています。こちらは2025年5月の公聴会記録の公開資料や過去のリーク情報、特許情報等からその存在が明らかになっています。以下参考となる筆者のポストを挙げておきます。
【SEOでのサイト単位の権威性と、AI_Overview(AI概要)上の表示に関する仮説のようなもの】
— ロベルト|ヴァリューズGM/ヴァリューズクリエイターズ執行役員 (@Roberto_VALUES) May 17, 2025
先日、米国司法省から公開されたGoogleのコアアルゴリズムに関する資料で、「品質シグナルは、クエリではなくサイト(ホスト)に紐づいている」と明らかにされました(続く)
2.SNSでのシェアのしやすさ→URL発見の早さ
noteの記事がSNSでシェアされているのを目にしたことがあると思います。筆者/読者によって簡単にSNSで共有できるユーザビリティの良さに加えて、人の見解や経験に関連したコンテンツはシェアされやすく、SNSでの拡散を通じて、URLが発見されやすく、より多くのユーザーに記事が届きやすい循環を生んでいます。
3.インデックスされるまでの早さ
noteは、新規記事が公開されてから比較的早くGoogleに認識され、検索結果に表示されやすい特徴があります。その背景としては、インデックスを行うGoogle側の処理がサイト全体の更新間隔、頻度によって最適化されており、非常に多くのコンテンツが更新されるnoteにおいてはインデックスされるまでのスピードも他のサイトに比べて短時間で処理されることにあります。
つまり、大規模サイトが受けられるインデックススピードにおける恩恵を、noteに参加する個々のユーザーが享受できるという構図になっています。
4.サイトの高いユーザビリティによってユーザー行動が良化する
株式会社ヴァリューズのデータをもとにnote上のユーザー行動を確認すると、1人当たりセッション数推移、1人当たりページビュー数推移、平均滞在時間推移はいずれもポジティブに推移しています。



筆者が主管する、株式会社ヴァリューズによる検索マーケティングの研究結果(ランダムフォレストという機械学習モデルによるGoogleのアルゴリズム解析)によると、ユーザー行動は明確なランキングファクターであることが定量的に示すことができており、特に【ページ上の滞在時間】と【ユーザー当りセッション数】は、ランダムフォレストで算出されるインポータンス(特徴量重要度)が常に高スコアであることか分かっています。
膨大な記事コンテンツの中から関連するコンテンツへの誘導、広告表示がないことによる離脱のされにくさといったことが、良いユーザー行動を生み出しているのではないでしょうか。Googleの過去のリーク情報等から、各サイト/ページの滞在時間がシグナルとなっているとされており、こうした良質なユーザー行動がSEOの強さに繋がっているものと思います。
SEOに強いのは分かったが、なぜ相関から外れる力を生み出しているのか?
note.comは単にSEOに強い【ブログメディア】と捉えない方が良い?
ここまで、noteが従来のSEOに強い背景を見てきましたが、多くのSEO界隈の人はすでに肌で感じていることと思います。そして本記事の趣旨は、従来のSEOの強さだけではなく、そのSEOのトラフィックから期待される以上の生成AI経由流入を獲得できているのはなぜか?という点にアプローチすることです。
ドメイン評価などのSEO上の強さに留まらずに、対話型AIがプラットフォーム上で引用した後、実際にユーザーが引用元を見に行こうとする理由はなんなのか?
キーワードは「note.comは単なる【ブログメディア】と捉えるべきではない」です。今回の調査の対象には、同じようなサービスとなりうる他のブログプラットフォーム(ameblo、fc2ブログ等)が存在しますが、それらの媒体においてはエクセスAIトラフィックは観測されていません。
※fc2はほぼ傾向線の線上、amebloはわずかに超過トラフィックを獲得しているに留まっている。
次回の記事では、また別のデータとして、各サイトのカテゴリーごとに、同様にダブルジョパディの法則が当てはまるかどうか?を整理します。サイトをカテゴリー別に分類し、相関を確認した時にどんな示唆が得られるのか?というアプローチから、その示唆と今回の前編の内容と組み合わせて考えていきたいと思います。
ユーザーが情報を探索する状況で、誰から情報を取得するかが問われるテーマにおいてこそ、こうした過剰トラフィック(エクセスAIトラフィック)が発生するのではないかと思っています。次回はやや筆者の仮説的な内容となる予定です。
注:次回記事では、LLMs.txtや構造化マークアップ等の話は取り扱いません。noteでは、構造化マークアップは非常にシンプル(各記事においてはBreadcrumbListとBlogPostingのみ)、GEO(LLMO)に特化した特筆すべき点はなくLLMs.txtも設置されていない状況です。目先の細かな施策に留まらず、媒体との向き合い方を考えるきっかけとなればと思います。

前編のまとめ
「検索流入が多いサイトほど、生成AI経由流入も多いことが見込まれる」という通説が定量的に示されたが、例外サイトにこそ示唆とヒントがある
株式会社ヴァリューズの行動ログを用いて、「検索流入が多いサイトほど、生成AI経由流入も多いことが見込まれる」という通説を検証することができました。
一方、生成AIに引用された後にユーザーが実際に遷移しやすい/遷移しにくいサイトが存在していることも実際のユーザー行動データから明らかになりました。
プロンプトを大量に打ち込み、AIによる引用率やメンション率を集計する先行データは存在し始めていますが、ユーザーが実際に遷移しているかどうかについては、株式会社ヴァリューズの行動ログによって明らかにすることができました(この観点で、検索エンジン経由流入と生成AI経由流入の関係性を大規模データで表現した例は、寡聞にして存じておりません!)。
余談ですが、株式会社ヴァリューズとGoogleさんとで、こうしたユニークな行動ログデータを基に、以下の研究結果をともに発表しています。
note.comへの生成AI経由流入は、その期待値の4.2倍にも達している。
「検索流入が多いサイトほど、生成AI経由流入も多い」というシンプルな相関関係の中で、驚異的に超過トラフィックを獲得しているのがnoteである、という状況が判明しました。
その前提として、noteのSEO的な強さは、大規模サイトの恩恵を個人ユーザーが享受できるという構造にあるということも整理しました。具体的には、①Googleのアルゴリズムの特徴量の一つであるサイトの権威性(site_qualityスコア)や、②URL発見の早さ、③インデックス化されるまでのスピードの他、④サイト全体の良質なユーザー行動シグナルといった、【note全体の評価と恩恵】を、【個人ユーザーが享受できる】ことが、記事執筆者に強いインセンティブ(上位表示のしやすさ)を与える形となっています。
最後に
株式会社ヴァリューズでは、独自のデータ分析に基づく検索マーケティングを支援しています
こちらの記事のデータになっている独自の行動ログを始めとした、データに基づく検索マーケティング全般(検索行動データに基づくSEOや広告)の支援を行っています。検索はもはやGoogle単体のものではない時代になってきている状況において、AI時代に適応した検索マーケティングを行いたいという事業会社さまはぜひ、お気軽にお問い合わせください。
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