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裁判所で改名するまでの話

日向レマと申します。24歳です。
今年1月に人生初の家庭裁判所デビューをし、許可を得て下の名前を変えました。
書けることを全部書くので、良かったら読んでいってください。

改名までの人生の話

子どもを床に投げて「殺してやりたい」というファンキー母と、登場時のセリフが「お母さんを困らせるんじゃない」であるウルトラ放任主義父の間に生まれました。
連絡帳と楽譜を破かれ、「あんたなんか児相に行って母子分離すればいい!」と叫ばれ、そこそこの頻度で武道(※1)の技をかけられ、手首には爪型の傷跡(※2)が今も残っています。あ、たまに聞かれるので先に書いておくと実親です。単にファンキーなだけです。

※1:母は各種武道有段者です。あと、(元ではありますが)そこら辺を活かした職業でした。
※2:手首を掴みながらn時間ブチ切れてたらできたみたい   爪って皮膚を突き破るんだ……と思った

グロい注釈!

その他のファンキーな事象としては、
「『子どもが嫌いで愛せない』『死んで欲しい』という内容の大手掲示板の書き込みをプリントアウトして、子どもの席に置いておく(※3)」
「虐待ノンフィクション・凄惨な少年事件の本を読ませ『我が子に殺される』と騒ぐ(※4)」
「小学生からダイエット用ビデオを強要し、執拗に体型をdisる(※5)」
等々があります。何らかの実験なんですかね。

※3:「読んだ?」と笑いながら聞かれた。
※4:何がしたかったのかは全くもって不明。
※5:ビデオに流れていた某有名クラシック、聞くと未だにギェッてなる。

グロい注釈2

こうしたオリジナリティ溢れる攻撃と共にすくすくと育ち、「出ていって欲しい」と言われて大学進学時に1人暮らしを始め、大学1年で燃え尽きました。親族の圧と世間体とその他諸々の結果経済的な援助が発生し、この春に大学院を修了したところです(ここはハイパー恵まれポイント)

ここ数年人生がぬるめになってきたとはいえ元気のなさは変わらず、いつも全身がガチガチに緊張していて、学業が上手くこなせなくなったことも、生活が破綻して入院したこともありました。

このまま一生トラウマに閉じ込められて元気のない大人をやっていくのかな、と思ったらギョエってなって、取り敢えずまずは親が呼んでいた名前がトリガーになっていたので変えようと決めました。もともとずっと性別違和があったので、もうすこし中性的な名前が良かった、というのもあります。

色々なことが整って少しだけ元気が出てきた昨年夏、大学院の修士2年の時に改名にチャレンジすることにしました。
ちなみに元の名前は割とメジャーなものですが、眩しくて正しくてとても皮肉な字面です。

2025年夏

大学の名前が出てくるときは、たいてい何か不祥事があった時。というわけで、良いことについても積極的に大学名を書いていきましょう。東京大学、本当にありがとう!!

改名を思い立ってから、まずやったのは大学関連の名前を変えることでした。東大には性別違和を理由とする通称名使用の制度があったので、まず窓口にこんな感じの紙を出して、

2週間くらいで許可が下りて学生証の名前が変わりました。

学生証を使うと定期券の名義も変えられるんですが、名字の変更だと思われて窓口でちょっと戸惑われました。
あと、「こうやって何かをゲットして別のものをアンロックしていくの、ボドゲにありそうでいいな~」って思ったんですが、これ以上の連鎖は起きませんでした。残念。

そんなふざけたことを考えつつ、大学の保健センターとか学生相談所とか(元々通ってました)に「改名したいんですけど……」と相談したり、所属していたコースに「学籍簿の名前が変わったんですけど」と事後報告をしたり、職場の名簿を変えてもらったり、通販とかネット上のサービスの名前をひとつひとつ変えたりしていました。最後のが特にめんどくさかったです。

先輩がケーキを買ってくれました。

改名を端的に祝う文言が思いつかず、「(新しい名前)誕生!」にしてくれたそうです。ちなみに本当の誕生日は冬です。

不安な深夜に改名について調べまくっていた結果、「住んでいる市内で一番詳しい」と言えそうなくらいになりました。体験談を片っ端から読み、大学で使える判例データベースまで読み漁りました。
改名(法律上の用語では「名の変更」)は家庭裁判所に申し立てをして行うのですが、「裁判官は実績で判断する」と記事で読み、ひたすら新しい名前を使って実績を作っていました。あらゆるAmazonの宛名ラベルを保存し、大学からのメールをせっせと印刷し、友人たちに事情を伝えて手紙を書いてもらいました。ひとから手紙をもらうっていつぶりだろう?
札幌に住んでいた友達が手紙に「北海道の夏の朝をお届け!」と写真を同封してくれて、なんかめちゃめちゃに泣けました。

ちなみにインターネットの友人で会ったことはまだない。やさしすぎる

ところでここまで全く書いていなかったのですが、改名したい時には基本、「新しい名前をこれくらい使っていて、今の名前だと社会生活上不便」という説明を裁判所にする必要があるんですよね。「通称として長い間使用した」というオーソドックスな理由だと数年かかり、なんらかの事情がある人は必要な期間が短くなる、という感じです(裁判官にはガチャ性がありますが)

自分はこの「なんらかの事情」を示すため、大学の保健センター精神科に性別違和の診断書を、学生相談所のカウンセラーに家族関係についての意見書をそれぞれ書いてもらいました。「家庭裁判所に提出する書類の作成」はそんなに出現頻度の高くない仕事だと思うのですが、非常にスムーズに引き受けていただいてありがたかったです。

あと、改名とは直接関係ないですが、諸事情で研究室を変えることになり、修士論文の指導が2か月ほどストップして死にそうでした。
ただでさえ修士2年はつらいのに、常にボロボロで具合が悪く、本当に修了できるのか??ってくらいパワーがなかったです。

申立には戸籍謄本を提出します

各所にご協力いただいた結果、実績がかなり集まってきました。これまでにない数の年賀状が届き、一人暮らしの郵便受けが令和とは思えない賑やかさになりました。

これ以上元気に待てる気がしなかったので、通称名使用開始から5か月経つ2026年1月に申し立てをすることにしました。
この時期は実家に知られたら即終了、という焦りが半端なかったらしく、家族に改名がバレてブチ切れられる夢を高頻度で見ていました。呪い?

年末あたりでなんとか修士論文にめどが立ったので、集めた実績を整理したり、改名の申立書で一番大切な「名の変更を必要とする具体的な事情」の欄を埋めたりしていました。
親子関係を理由とする改名申立は通りにくいらしい、と聞いたのでこんな感じにしました。別に全部本当の理由なんですけどね。

申立人は大学院修士課程の2年生です。思春期より戸籍の性別に違和感を覚えており、性別違和の診断を受けました。
現在の名の読みは女性に使われるものであり、自分が女性であることを意識させられるため、甚大な精神的苦痛を感じます。加えて、幼少期に母からの暴力を受けており、戸籍名を見る/書く行為に付随する苦痛も大きいです。
大学・就職先・友人間で「(今の名前)」として通用しているため、名の変更による不都合はありません。4月からの就労を現在の名で円滑に行うため、名の変更を希望し申し立てます。

実際に書いたものの要約。体験談とかを参考にしました

これだけじゃ到底説得力があるとは思えなかったので、「申立書別紙」を作って、今改名したい理由とか、新しい名前の由来とかを色々と書きました。
あとは大学関連の使用実績(学生証とか)、仕事関連(給与明細とか)、その他(郵便物etc.)と診断書・意見書を全部揃えて、2026年1月5日に家庭裁判所に直接持っていきました。

ちなみに、改名申立の際は800円(と、連絡用の郵便切手)を支払う必要があります。思ったより安いですね。

収入印紙を初めて買いました

申立成功

申立の後は全然落ち着かなくて、家庭裁判所からの連絡をずっと待っていました。
「改名が通る見込みがありそうな場合、家庭裁判所と面談があって、日程調整の連絡が来るらしい」と聞いていて、「家庭裁判所 服装」で検索したり、

面談用、と決めて言い訳してセットアップを買ったりしていました。かっこよくないですか

2週間たったけど全く連絡が来なくて、そろそろ電話しようかな、と思っていた1月21日。
朝からそわそわ郵便受けを覗いたところ、裁判所からの封筒が入っていて、開けてみたら、

「名の変更を許可する」という紙でした。
びっくりしてその場で固まって、色々な人にLINEしてまわり、めちゃくちゃ沢山の「おめでとう」をもらいました。

ちなみに、納めた連絡用郵便切手の余りが返却されてきたので、年賀状を書いてくれた人々への寒中見舞いに充当しました。ぴったりな使い方!

切手、返ってくるんだ……(当時と今の居住地は違う場所です)

その後

粛々と各サービスの氏名変更をしていきました。「改姓はオンラインで手続き可能だけど、改名は書類を郵送するか窓口まで来るかしてね」というところも結構あり、ギギギギギ…となりながらやっていました。でも銀行口座とかクレジットカードとかが新しい名前に変わっていくのは何とも言えない爽快感があります。

あと、色々な人から「なんて呼べばいい?」と聞かれて、新しいあだ名を作ってもらいました。そこそこ定着して派生形も生まれてきました。めちゃくちゃ喜んでいます。

「家庭裁判所用」と勝手に決めていたセットアップは、結局面談がいらなくて使わなかったので、

大学院の修了式用になりました。

あ、あと改名祝いのお酒をもらいました。選んでくれた後輩によると、「改名は一度きりであってほしいから、結婚と同じ水引にした」そうです。
本当にその通りだと思います。

実家には改名のことは言っていません。いずれ分かることでしょうが、LINEをブロックして関係を絶っているのでもう会うこともないんだと思います。

ちなみに、姓名判断はめちゃくちゃ悪くなったようです。最近の悩みは金欠なことです。

元の名前では大吉でした 別に気にしてないけど

まだまだ嫌な夢も見ますが、少なくともこの名前で死ぬことができる、という点で、改名して本当によかったです。

長文にお付き合いいただきありがとうございました。お仕事ください






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