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青春は終わらない

昨夜、LINEが鳴った。

「ポヨーン」という気の抜けた通知音とともにやってきたのは、大学時代からの友人・バツ丸(仮名)のメッセージだった。
大学時代のほとんどを、僕たちはともに過ごした。SI 僕たちはいつでも二人で一つだった。地元じゃ負けてばっかだったけど(何に?)。

今はお互い違う地域に住んでいるのもあり、彼とは4か月ほど会っていない。
そのうえ、僕がバツ丸宅へ遊びに行くとき以外は、連絡を取り合うことはほとんどなかった。

おや、めずらしい。
そう思い、トーク画面を開くと、

「お前の住んでいるところに新しいマンション建つんだってな」

え、それだけ?
4か月ぶりの会話がこれかい。

嫌な予感が胸をよぎることもなく、2、3回メッセージとスタンプでやりとりし、会話終了。


と思ったら、1時間後くらいに「ポヨーン」。

「お盆の予定はどんな感じ?俺は〇日から△日まで帰省するつもり」

ほうほう。お盆の予定とな。
バツ丸が今住んでいるのは、僕たちが青春時代を過ごした大学の所在地だ。
そして、彼の実家は別の地域、どちらかというと僕の今住んでいる地域に近い。

僕は実家暮らしだ。ゆえに、帰省の予定はない。
予定といっても、僕の兄弟や親戚が我が家に集まるのが、せいぜい1回あるくらいだろう。

「まだ決まってないわー」

泣いているちいかわのスタンプとともに、メッセージを返す。
3分後、バツ丸からの返信が届いた。

「前に俺が帰省したときさ、アルロンに実家まで迎えに来てもらったことあったじゃん?だから今回もお願いできないかなーって思ったんだよね」

あーそういうことか。ごめんごめん、察しが悪かったね。

僕はバツが悪そうに(バツ丸だけに)謝った。
すると、バツ丸が続ける。

「その辺の話を詰めたいから、通話しようぜ」

OKの返事をすると、すぐに着信が。
風呂上がりだった僕は、右手にアクエリアスのペットボトルを、左手にスマホを持ちながら、2階の自室に入った。通話、スタンバイ。

「こんばんは。夜分遅くにすみません」

スマホを左耳にあてると、バツ丸のわざとらしい挨拶が聞こえてきた。
相変わらずの様子に安堵しつつ、本題の日程調整に移る。


気の置けない友人との会話は、その頻度にかかわらず、楽しいことこの上ない。
ゆえに、お盆の予定以外にもいろいろな話で盛り上がった。

仕事の話、家族の話、ポケモンカードの話(これが一番長い)。
普段はクールなバツ丸も、会話のエンジンがかかれば饒舌になる。
夜行性の彼らしいが、少し暴走気味な気もする。冷静になれよミ・アミーゴ。
まあ僕も僕で、久しぶりの男子トークにテンションが上がったのは否めない。お互い様か。

二人を裂くように電話が切れた後、僕たちは2時間ほどくっちゃべっていたことに気づいた。


本人がどう思っているかは知らないが、バツ丸は僕の一番の友人だ。

性格は異なるが、芯となる考え方は通じるものがある。
年が近いから話題や趣味も合う。
また、バツ丸は頭が良く視野が広いので、彼の見解は勉強になるし、とても尊敬している。

そして何より、バツ丸は優しい。
言い方はぶっきらぼうだが、その言葉の奥にはあたたかい光がある。

そう、あのときも。



さかのぼること2年前、ちょうど今ぐらいの時期だったっけ。

共通の友人の結婚式で、僕はバツ丸と再会した。
コロナ禍の影響もあり、彼に会うのは1年以上ぶりだった。

当時の僕は、仕事のストレスで『パニック障害』と診断されたばかりの、メンタルゾンビだった。
久しぶりに会う友人たちにもれなく「大丈夫か?」と声をかけられたのを思い出す。めでたい日だというのに。
そんなことを考えながら、メンタルゾンビはウエディングケーキを頬張り、友を祝福した。


式を終え、特に仲の良かったグループで、バツ丸宅に集まることになった。
実質、これが二次会だ。

繰り返しになるが、気の置けない友人との会話は、その頻度にかかわらず、楽しいことこの上ない。

僕は日帰りの予定だったが、友人たちとの別れが名残惜しく、ほかの友人とともにバツ丸宅に泊まらせてもらうことになった。


夜遅くまで語らう若者(30代前半)たち。
当然、僕の近況についても話題になった。

仕事しんどい。
この前職場で倒れた。
だから精神科に通院している。
仕事やめたい。
でもやめたら職場に迷惑が。

暗く重い話だが、思いのすべてを吐露した。
それは、僕自身がすでに限界だったのもあるが、彼らへの信頼がそうさせたのだと思う。


ひととおり話したあと、バツ丸にもらった言葉が忘れられない。

「そこまでがんばったんなら、お前がやめてもだれも責めない。それに、俺とお前は薄っぺらい関係じゃないんだからさ、何かあったら話聞くよ」

ぶっきらぼうなその言葉は、メンタルゾンビを浄化する白魔法のようだった。
僕の視界は、両目からあふれ出る水で揺らいでいた。



『友人』の定義は広い。

その中で、楽しいことばかりではなく悲しいことやつらいことも共有できる相手というのは、貴重で大切な存在だ。

そういう相手を、『親友』あるいは『心友』と呼ぶのだろう。

僕にとっては、バツ丸が心友だ。
バツ丸がいる限り、僕の、いや僕たちの青春は終わらない。
いくつ年を重ねてもポケモンカードできゃっきゃする、そんな関係であり続けたいと切に願う。


彼と再会する8月が待ち遠しい。

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