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トロントで夫婦別姓について考える

時:2015年12月
場:カナダ・トロント
人:D&R(カナダ人夫婦)

数年前に友人カップルが結婚した。2人とも姓を同じにすることを望んでいたが、どの姓にするかで難儀したと言う。

事をややこしくしたのは、どちらも両親の姓をつないだ連結姓(例:Smith -TaylerとJohnson-Brown)であったこと。この4つの姓のどれを選ぶか、あるいはいずれか2つをどうつなげるかで24通りになる。これに複合性(例:Smith Johnson)という選択肢を加えると30通りを超える。さらに、2つの姓をつなげて縮めて新たな姓を作る結合姓(例:Smison)なるものも含めれば、オプションは無限に広がる。

もはや世界で唯一、夫婦同姓が法律で義務付けられている国からきた私は、この選択肢に驚いた。日本では、婚姻時の姓の選択は夫側か妻側の二択であり、約95%の夫婦が夫側の姓を名乗っている。そんな日本でも、国際結婚の場合は夫婦別姓が認められる。

私の下の名は日本でも珍しいが、英語圏では「読みにくい名」になる。夫の姓はドイツ語圏由来で、英語圏では「読めない姓」である。これまで夫の姓を正しく発音できた人に出会ったことはなく、フランス語風のかけ離れた発音で読む人もいる。

つまり、私の名と夫の姓をつなげると、「読めない」「綴れない」「覚えられない」の三重苦になる。しかも、その組み合わせからは「性別」も「人種」も「国籍」も想像がつかなくなる。厄介な人生が待ち受けているような気がして、迷わず別姓を選択した。日本とオンタリオ州の双方でこの選択が認められていたのはありがたかった。

ちょうどその頃、トロントのある夫婦の新聞記事を読んだ。2人とも非英語圏の出身で、どちらも英語では「読みにくい姓」であったため、結婚を機に揃って改姓することにした。女性が「エミリー・ブロンテ」をこよなく愛し、男性の旧姓が母国語で「お茶」を意味する言葉だったことから、”Bronte” + “Tea” = “Brontea” という新しい姓を作り、氏名変更を申請したという。カナダにはそんな離れ技もあるのかと唖然とした。

その一方、すぐ隣のケベック州では1981年に婚姻による改姓が州法で禁じられ、原則すべての夫婦が各々の旧姓を維持している。公文書には「男女平等の理念に基づいて……」と記されているが、「離婚率が高く、役所の氏名変更手続きの負担が大きいため」というのも各方面から聞く話で、確証はないが、あながち都市伝説でもないような気がする。

「家族の絆が損なわれる」ことを危ぶんで、夫婦同姓を維持する日本。

「夫婦の絆はすぐに壊れる」のだからと、原則夫婦別姓にしてしまった(という噂の)ケベック州。

本人が選べるオンタリオ州。

それぞれに社会のあり方や価値観が反映されているように思う。

私自身はこの選択ができたことで日常生活でも仕事面でも救われた。先日、日本の夫婦別姓の記事を目にし、このことを書き綴っておきたいと思った。

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