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部活動の未来を考える──柔道大会で感じた「本気になれる場」の価値



工業高校の教員が、柔道大会の引率を通じて考えた部活動の意義と課題。競技人口が激減するなか、子どもたちが「何かに打ち込める場」を社会全体でどう守っていくべきか。


思っていたより閑散とした会場

ゴールデンウィーク、私は柔道部の試合に引率として足を運んだ。

といっても、岐阜工業高校には柔道部がない。かつては存在したものの、部活動の再編でなくなってしまった。しかし今年入学した1年生のなかに「柔道をやりたい」という生徒がいた。学校で協議した結果、特別に顧問をつけて活動させてあげようということになり、柔道のことはまったくわからない私が引率を担当することになったのだ。

「柔道の会場は熱気に包まれているはず」「ごついひとたちばかりなんだろうな」

そんな勝手なイメージを抱きながら長良川の武道場に向かった。ところが、会場は思っていたより閑散としていた。参加生徒は男女合わせて30名弱程度。岐阜地区大会なので県大会とは規模が違うとはいえ、他の地区はもっと少ないという話も聞いた。

柔道の競技人口は、この20年で約20万人から12万人へと激減しているという。中学生に限れば、ほぼ半減に近い状態だ。オリンピックを見ていると盛り上がっているように感じるが、実際に競技をしている子どもの割合は、昔とは大きく変わってきている。


複合的な問題が子どもたちの選択肢を狭めている

競技人口の減少は、柔道に限った話ではない。私自身が続けてきた野球も同様だ。

小学校のスポーツ少年団では、保護者が土日に朝から晩まで付き添い、審判やグラウンド整備を担う。子どもと一緒にいたい親ならまだしも、仕事で疲れている親にとっては正直きついというのが現実だろう。

中学校では、熱心な先生がいれば部活動は活発に行われる。しかし、野球部がない学校や、あっても活動がほとんどないところが増えている。そうなると、生徒たちはクラブチームに流れていく。

クラブチームは当然費用がかかる。野球はただでさえ道具にお金がかかるうえ、チームへの月謝や遠征費も発生する。練習場所が遠ければ毎週末の送り迎えが必要になり、親の負担は増すばかりだ。こうした事情で競技を断念する子どもも少なくない。

一方で、「お茶当番やグラウンド整備は不要」「朝送ってきてくれればOK」という形で生徒を集めるクラブチームも出てきている。ただ、人数が増えれば試合に出られる機会は減り、費用も高くなりがちだ。

さまざまな問題が複合的に絡み合い、結果として「部活動をやらない」「スポーツを続けない」という選択をする生徒が増えている。本気でその競技を極めたいと燃えている子どもなら、親も全力で協力したいと思うだろう。しかし「ちょっとやってみたい」「興味がある」という段階の子どもにとっては、スタートを切ること自体が難しくなっているのだ。


それでも部活動が必要だと感じた理由

では、部活動は本当になくなってもいいのか。スポーツをやらなくても構わないのか。

私は、そうではないと思う。今回の柔道大会を見て、改めてその思いを強くした。

成長の場である

高校から柔道を始めた子もいた。経験者と比べれば明らかに力の差はある。それでも試合前は緊張し、一生懸命練習してきた成果をぶつけ、負ければ本気で悔しがっていた。高校生の時期に何かに本気で取り組むという経験は、かけがえのないものだ。しかも、思い通りにいかないことのほうが多い。その経験こそが、人間を成長させるのではないだろうか。

所属の場である

部活動に居場所があれば、クラスがうまくいかなくても生き生きと過ごせることがある。自分らしさを発揮できる場所が複数あることは、心の安全保障につながる。

文化継承の場である

柔道のような伝統的な競技には、技術だけでなく、身体感覚や心構え、志といったものが含まれている。これらは文字や動画だけでは伝わらない。人から人へと直接伝えていくことで、初めて継承されていく。

出会いの場である

私自身、今回の引率を通じて多くの人と出会うことができた。生徒たちも同じだろう。いろんな大人と関わり、試合を通じて他校の選手と知り合う。そうした出会いが、人間関係の幅を広げていく。


「何かに打ち込みたい」という気持ちにどう応えるか

結局、一番大事なのは「何かに打ち込みたい」「何かを一生懸命やりたい」という場を、社会全体でどう守っていくかということではないだろうか。

生徒たちの「やりたい」という気持ちに、大人がどう応えられるか。今回、部顧問でもなく柔道のいろはも知らない私が引率を務めることができた。たとえ一人でも、その生徒が岐阜工業高校の名前を背負って戦う姿を見て、私自身も大きな充実感を得た。

たとえ一人でも、その試合は彼にとっては彼の世界そのものだ。この重みを忘れてはいけない。本気になれる機会を、すべての子どもに平等に開いていくにはどうすればいいのか。これからも考え続けなければならない。


皆さんの周りでは、部活動や地域の活動はどう変わってきているだろうか。失敗を恐れず、本気で泣き笑いできる場所を、私たちはどう残していけるだろうか。

ちなみに今回引率した1年生は、なんと地区大会で優勝した。「インターハイに行きます」と力強く宣言していた彼の姿は、素人目にもわかるほど強かった。柔道のことは何もわからないが、手続きやサポートでしっかり支えていきたいと思っている。


▶ この話の続きは、Podcast「未来をつなぐものづくり」で聴くことができます。

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