43歳、モーニングはなしでお願いします
「朝ごはんを食べない」というと、「おなか空かない?」「果物だけでも食べたほうがいいよ」とだいたい言われる。
心配してくれる気持ちはありがたいが、今のところ支障はない。
大丈夫、私はもう43歳。朝ごはんを食べない暮らしは、軽く20年を超えている。
これはもう生活習慣ではなく、体質であり、場合によっては思想に近い。「きき手を変えろ」と言われるくらい、今さらどうにもならない。
そんな私でも、モーニングに行くことはある。ただし食べない。
喫茶店に入り、「モーニングはなしでいいです」と堂々と拒否し、コーヒーだけを飲む。
メニューを開かずとも、注文は決まっている。ブラック一択だ。
机上のメニューには、バターがじゅんわりとしみたトーストや、つややかなゆで卵。店によっては、主張強めのベーコンや、朝から本気100%のスープなんかもならんでいる。
「この内容でこの値段!?」なんて驚くこともあるが、驚くだけで注文はしない。
なぜなら朝の私の胃は、3時間は動かないナマケモノ並みにスロースタートだからだ。
バターじゅわりのトーストなんて入れたら、確実に機嫌を損ねる。
下手をすれば、その日1日が「不機嫌モード」で固定される。
それでも、店員さんは0円のスマイルで聞いてくる。
「モーニング、おつけしますか?」
ここで負けてはいけない。
こちらも100%のスマイルで「コーヒーだけで大丈夫です」と答える。
朝の喫茶店は、人間観察の宝庫だ。
新聞を隅から隅まで読むおじさま、スマホを睨みつける会社員、一方通行で話をする主婦たち。
みんなトーストをかじりながら、それぞれの一日を立ち上げている。
その横で私は何も食べずにコーヒーをすすり、「これが私のやり方ですけど?」という顔をして座っている。
朝ごはんは食べないけれど、朝を味わっていないわけじゃない。
朝ごはんを食べなくても、ちゃんと今日を始められる。
私のモーニングは、トーストでも卵でもなく、濃く苦いブラックコーヒーと少しの開き直りでできている。
そして、今日も元気に、何も食べないまま一日が始まる。
