伝えられるうちに~愛は続くよどこまでも
私がシングルになったのは上の子たちが小学生、一番下の子が幼稚園生の頃だった。
それまで専業主婦だった当時の私は、本来の自分を消し、『俺様』気質に磨きがかかった夫の影響で感情さえも消し去っていた。
ただの抜け殻だ。
そんな私が取り残され、子供たちと生きていくために初めて社会を知ることとなる。
考えられるのは「子供たちにできることはなんだろう」ただそれだけで、自分が崩れてしまわないように糸みたいな気持ちだけを張りつめていた。
どこへ向かっていけばいいのか分からないけど、とにかく必死で がむしゃらで、子供たちが不安にならないよう気を張りながら生きていた。
その数年後、子供たちが全員 反抗期に突入した。
私が心配して言った言葉にも、進路を心配して聞いた言葉にも、返ってくるのは「ウザい」と拒絶する言動ばかりだった。
そんなある日、末子と言い合いをした。
根本の原因は思い出せない。
きっと些細なことだった。
だけど私は反抗する息子への腹立たしさと、日々 思いが通じない悔しさから、子供たちに対抗するような反抗期スイッチが瞬間的に稼働しはじめた。
「もぉーなんなのお前ら!! なんで聞いてくれないの…ムカつく!! ばか… ばーか!! みんな、ばぁかぁー!!」と暴れて騒いで大泣きをした。
いままで大人として、親として、しっかりしなくちゃと気を張っていたけど… 誰にも届かない思いや、受け止めてもらえない気持ちとか…
いままでの吐き出せなかった思いが、一気に溢れ出していった。
(もぉいいや…子供たちも反抗するくらい大きくなったんだ。 こんなダメでどうしようもない大人も親もいるんだって、反面教師にでもしてくれ……)そんな気持ちだった。
暴れ終えた私は、家族の中で自分が1番子供じゃないかというくらい声を上げて泣き続けた。
そんな私を末子が見つめる。
そこへ騒ぎを聞き付けた上の子が現れる。
「は?何があったの? まぁまぁ落ち着け」と泣き崩れてる私をなだめながら、荒れた部屋を見回す。
「うぇーん うぇーん」泣き続けながら、私は心の中で後悔をする。
ごめんね…ごめんなさい…
悪いのは 君じゃない
君たちじゃないよ…
私が暴れて反抗期に入ったのは、これが最初で最後。 未だに後悔している。
そんな親を持った4人の子供たちも、今はみんな成人を過ぎた。
それぞれ結婚したり、離婚したり、子供ができたり、自分の『好き』求めて歩んでいたりする。
それまで子供たちとガヤガヤと過ごしてた私は、1人になった。
そして時々いまでも子供たちの夢を見る。
決まって幼い時の子供たちで、私はずっと申し訳ない気持ちで泣いている。
子供たちはみんな、本当はもっと色んなことがしたかったんじゃないか。
色んな我慢をしてきたのではないか。
もっと私がしてあげられることがあったんじゃないか…
そんな思いばかりで、夜中に目覚めた時には泣いている。
そんな時、決まって私は「伝えなくちゃ」と感じる。
すぐさまグループトークにメッセージを送る。
ごめんなさいと、ありがとうと、大好きだよの入り交じったメッセージ。
「伝えられるときに伝えた」と少し後悔が和らぐ。
翌朝しばらくして「誰もそんな事思ってないよ。心配しないで。」と娘からメッセージが届く。
泣きそうになりながら少し安心する。
だが既読だけをするメンズたちに「実際どう思ってるんだろ?」とまた心配になったりする。
シャイな3人のメンズたち。
弱音を吐く母に何を言ったら良いか分からないのか?…
(きっと照れくさくてメッセージできないのね)なんてポジティブに変換してから心の中で付け加える。
ある日ふと「みんな また小さい頃に戻らないかな…」とつぶやく私に、すっかり大人になった末子は「こっちとしても戻れるものなら戻りたいんですけど?…」と返してきた。
「ぁ…そーだよねぇー」って笑ったけど「戻りたくない」じゃなくて 「戻りたい」でよかったと心から思った。
私は子供たちがいたから ここまで生きてこられた。本当に。綺麗事ではなく。
何度もこの世から消えてしまいたいと苦しくなった。だけど残された子供たちは? って考えたら、そんなことはできなかった。
だからなのか? 私はこの世を去ることを時々 想像する。そして、その時が来た時は「色々あったけど 楽しい人生だった」そう思いながらこの世を去りたい。
そして「愛し、愛され、大切にし合える人とまた巡り会えて幸せだった」と目を閉じたい。
……そんな事を書きながら(私は4人もの心から愛せる存在がいたわ♡)と少し救われる。
小さかった子供たちは今度は私の心配する側へと代わってきた。「彼氏はできたの?」「何かあったらすぐに連絡しなよ」と。
ありがたいと思いながらも、これからは自分たちが思うように生きて欲しいと願う。
思い浮かぶのは日が落ちるまで外を走り回り、はしゃいでた子供たちの顔。
子供たちが楽しいことだけを追いかけてた毎日。
末子はただ、そんな日々に「戻りたい」と思っただけの話かもしれない。
だけど それがとても、嬉しくて 愛おしい。
友達の目を気にするようになった息子と無理やり手を繋いで嫌がられた日。
嫌がられるのに高校生になるまで覗きに行った学校公開に、体育祭。
一つ一つの成長が嬉しくて ありがたく、それが私にとっての唯一の支えだった。
いまは私よりも大きく成長した子供たち、ひとり ひとりを 「ぎゅっ」と抱きしめたい。
後悔しないように いまのうちに…
こんな頼りない親を選んで生まれてきてくれてありがとう。
元気に育ってくれてありがとう。
全部 全部 伝えたい。
君たちのおかげで 母は母でいられました。
君たちのおかげで母は生きてこられました。
この先も、健康で 君たちの幸せがいつまでもずっと ずっと続きますように…
愛してる 大好きだよ
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