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tokam
【アマノ文筆クラブ】私、どろんします|ショートショート
タイトル: 私、どろんします
その村では、「どろんします」と言えば、
ただの退席じゃなかった。
役目が過ぎると、
人は音もなく舞台を降りる。
次の人に、物語を交替させるために。
私は今夜、その順番だった。
枕元には、代々受け継がれてきた
安眠枕。
眠りに落ちると、
意識だけが薄くほどけて、
世界の縁から抜け出せる。
「じゃあ、頼んだよ」
そう言って笑った自分の声が、
少し他人みたいだった。
眠る。
深く、深く。
目を閉じた瞬間、
世界は静かに席替えを始める。
誰かが前に出て、
誰かが影に下がる。
朝、目覚めたとき、
村は何も変わっていなかった。
ただ、私の名前だけが
必要なくなっていた。
それでいい。
役目は、ちゃんと果たした。
物語は続く。
私は――
どろん、だ。
了

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