Photo by
clever_coyote275
【せりふ三題噺】内緒だからな|第二ボタン.たい焼き.駐輪場|ショートショート
タイトル:駐輪場のラスボス
放課後の駐輪場は、少しだけ静かだ。
自転車の列のあいだに、
たい焼きの甘い匂いが漂っている。
「ほら」
君が紙袋を差し出す。
まだ温かい。
「さっき買ったの?」
「うん」
たい焼きを半分に割ると、
湯気がふわっと上がる。
「でもさ」
君は急に真面目な顔になる。
「今日で、このクエスト終わりだから」
「クエスト?」
「高校生活ってやつ」
私は笑う。
「なにそれ、ゲームみたい」
君は肩をすくめる。
「だってさ、
ラスボス倒さないと終わらないだろ」
そう言って、制服の胸を見下ろす。
第二ボタン。
風が吹く。
駐輪場の屋根が、かすかに鳴る。
君は少し照れた顔でボタンを外した。
「ほら」
私に差し出す。
「内緒だからな」
その言葉は、
秘密の魔法みたいに小さかった。
たい焼きの甘さと、
夕方の光と、
少し早い春の風。
たぶん、
この瞬間が――
高校生活の、本当のラスボスだった。
了

*下記企画に参加させて頂きました*
☆次の作品はこちらです。↓↓↓
前回の作品はこちらです↓↓↓
最後までお読みくださり、ありがとうございます😊すず
いいなと思ったら応援しよう!
読んで下さりありがとうございます!励みになります!