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【アマノ文筆クラブ】ロマンスが足りない|ショートショート


タイトル:ロマンスが足りない

この町には、少し変わったローカルマナーがある。

それは、恋をする前に「ままごと」をすること。

役割を決めて、
ごはんを作るふりをして、
お茶を出すふりをして、
小さな生活を演じてみる。

もしそれで笑えたら、
その二人は恋人になれる。

でも私は、どうも上手くいかなかった。

お茶を出す役も、
買い物に行く役も、
なぜか途中でぎこちなくなる。

「君はさ」

向かいに座った彼が言う。

「ロマンスが足りないんじゃない?」

私はむっとする。

「じゃあ、あなたは?」

彼は肩をすくめる。

「止まらないのはロマンティック、ってやつ」

そう言って、急に立ち上がる。

「ままごと、やめよう」

「え?」

「だってこれ、練習だろ」

窓の外は夕焼けだった。

風がカーテンを揺らす。

彼は笑う。

「本番は、もっとめちゃくちゃだ」

私は少し考えてから、
くすっと笑った。

この町のローカルマナーは、
たぶん恋を上手にするためのものじゃない。

ただ、
恋を始める勇気をくれるだけなのだ。

そしてその瞬間、
私は思った。

足りないのはロマンス。
でも――

止まらないのは、
やっぱりロマンティック。


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