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無味乾燥な食卓と、ぬるま湯の誓い


世間にとっては、ごくありふれた一年のうちの一日に過ぎなかった昨日は、私にとっては、コツコツと積み上げてきた時間と努力と金銭を、一瞬で奪い去られた「忘れられない日」となった。
仕事帰り、消え入りそうな情熱をわずかに繋ぎとめ、私は重い足取りで銀行のATMへと向かった。失った資産の数十分の一にも満たない種銭を、空っぽになった口座に補充する。
その後の帰宅路、家族の前で「何事もなかったかのように」振る舞うことは、当時の私にとって何よりも難儀な課題だった。
当時の世間において、FXという投資——あるいはゲーム——に手を出すことは、身を滅ぼす「破滅への道」を歩むのと同義だと思われていた。
数時間前、自分の旦那がその道で転落したばかりだとは、妻も夢にも思っていなかっただろう。
唯一の救いは、給料が振り込まれる通帳もカードも妻が管理しており、破滅した「未来のミルフィーユ」たちは、すべて独身時代から自分がコツコツと節制して積み上げてきた、唯一自由にできる貯金から捻出されたものだったことだ。
妻が仕事帰りの私を労うために用意してくれた夕食も、今の私には何の味もしなかった。
数時間前まで未来を夢見ていた男とは、もう、中身が入れ替わってしまったかのような感覚。
妻との会話も、テレビから流れる芸人たちの騒がしい笑い声も、暗礁に乗り上げた私の鼓膜をピクリとも震わすことはなかった。
「会社で何かトラブルでもあったのだろうか」
一生懸命作った料理を、まるで車がガソリンを補充するかのように無感情で口に運ぶ私を見て、妻はそう思っていたのかもしれない。
帰宅後の流れ作業である食事、そして入浴というベルトコンベアーに乗る。
湯船に浸かり、失ってしまった未来をどう巻き戻していくべきか、戦略を練り直す。
「まだ、終わっていない。負けを認めた時が、本当の負けなんだ」
どこかの喧嘩自慢が発するような言葉を、ぬるめのお湯の表面に向かって、ボソボソと弱々しい声で呟いた。それは自分自身への、あまりに頼りない叱咤激励だった。
ベッドという終着点へ運ばれるベルトコンベアーに身を預け、私は暗闇の中で一人反省会を開いた。
初めて経験した、世界規模のイベント。
ローソク足があんなにも激しく、狂ったように上下するなんて思ってもみなかった。
あの嵐のような狂騒の中、何の根拠もなく飛び込み、理性を失ってしまった。
整理すべき敗因は、山のようにあった。
「……よし、明日からまた、1から積み上げていけばいい」
半ば無理やり自分を納得させ、明日の仕事のためにスマホのタイマーをセットする。
セットを終え、吸い寄せられるように、数時間ぶりにチャートを覗き込んだ。
口座には、先ほど振り込んだごく僅かな種銭。
画面の中では、さっきまでの嵐のような狂騒が嘘のように、普段の穏やかな動きを取り戻したローソク足が刻まれていた。
その静かな動きが、私の心の中の小さな火種を、再びパチリと弾かせた。

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