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第2話 わたしの奥に眠っていた情熱

「お前に世話ができるのか?
家のことをちゃんとやらないで、バラに夢中になるのが目に見えてる。
そんな高いの買って、枯らしたらどうする? どうせ駄目にするに決まってる。
家のことを疎かにするのは、絶対に許さないからな。」

……またか。

聞き飽きたいつもの言葉。でも、今回はなぜかいつもと違った。

「くそーーーっ!!」「こんなに頑張ってるのに文句ばっかり!!なんなんだーー!」

心の中で叫んだあと、私は初めて、夫に真正面から言い返した。

「バラを育てたいの!枯らすかどうかなんて、やってみないとわからないじゃない!」
いつもの私なら、悔しい気持ちを押し込め、歯を食いしばり我慢していた。

バラに恋した私は絶対に譲らなった!
そして、夫も巻き込んで一緒に初めて花屋さんに行った。
「バラの苗って、いくらくらいなんだろう…?」

色とりどりの苗を見て、まず飛び込んできたのは
そのお値段!

思わず心の中で「うわっ!高っ!」と叫んでしまった(笑)
しかも、バラは育てるのが難しいとよく聞くし、「こんな高価なもの、すぐに枯らしちゃったらどうしよう…」という不安が押し寄せ、弱腰になる。

花屋の奥の方から
「おーい。この黄色のバラ可愛いんじゃない?」って、
まさかの夫の反応!これは、夫の気に入ったバラを買っておけば、今後のガーデニングも協力してもらえるんじゃないかという下心が湧いてきた。

そして、
私のファーストローズは、一目惚れしたピエール・ド・ロンサールではなく、グラハム・トーマスになった。それでも満足だった。

それからの私は、朝起きるのがギリギリで仕事に行くのもバタバタだったのに、
気づいたら、毎朝4時に起きていた。
6人分の朝ごはんとお弁当を作り終えた頃には、外はやっと明るくなる。そして、そそくさと庭に出てバラを愛でる。
フルタイムの仕事に出かけ、夕方帰ってきてからは、また夕飯づくりに洗濯。
家族に文句を言われないよう、主婦としての“ちゃんと”をこなすことで精一杯だった。

でも――。
それでも私は、夜になると庭に立っていた。
ヘッドライトをつけて、暗い庭でバラの苗を植えたり、レンガを並べたり。
ひとり、黙々と、土と向き合う時間が、私の心を生き返らせてくれた。
真っ暗な庭で、大きなスコップを
「ザック、ザック…」と大きな音が響く。
ご近所さんに、死体を埋めてるんじゃないかって怪しまれたらどうしようって、テレビドラマの見すぎの妄想で、一人笑っていた。
家の中から、夫に何度も「いい加減にしろ!」という声がきこえてくる。
でも、庭では、誰にも遠慮せずに、私の「好き」を表現できた。
私がやりたいって決めたこと!
どうしてもやりたかったこと!
眠っていた情熱は、静かに確かに、目を覚ましていた――。

つづく…

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