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久保田が部長を殴ったらしい | 第2回「最後の一行小説大賞」

 おはぬーん、理生です🤗

 本日は、イトーダーキさんが主催なされている第2回「最後の一行小説大賞」に応募させていただきました。

 応募は最後の一行だけでいいのですが、最後の一文を考えることが楽しすぎて、ついつい本文まで作ってしまいました🤣

 選考はあくまで最後の一文のみですので、私は下記のようなイメージとなります。


───────書き出し───────

 研修で聞いた「生まれ変わるなら、生きてるうちに」という言葉が
よほど胸に刺さったのだろう。
それに気づいているのは私と、人事部の澤村だけだと思っていた。

───────最後の一行───────

  生まれ変わったような顔の澤村が、額から冷たい汗が流れ落ちている私の顔を、
久保田のような笑みを浮かべながら見つめていた。

 これに本文を作ってしまいましたので、記しておきます。


久保田が部長を殴ったらしい



 研修で聞いた「生まれ変わるなら、生きてるうちに」という言葉がよほど胸に刺さったのだろう。それに気づいているのは私と、人事部の澤村だけだと思っていた。

 私の所属している会社は大企業ではない。だから、久保田が部長を殴ったという噂はすぐに社内に広まった。

 私と人事部の澤村、そして部長を殴った久保田は、ともに同期である。事件が起きる前に、研修の帰りに私たち3人は新橋の居酒屋で飲みに行った。その時、いつもは饒舌な久保田がほとんど喋らず黙々と飲んでいた。


 研修の名称は【あなたの潜在能力を120%開花させる禁断のセミナー】である。
 なぜ、これを会社が研修として行ったのかということは、人事部の澤村から話を聞いた。

 その研修会社は、社長の娘の婿である次期社長からの推薦だったという。

「なんだか、胡散臭いな」私は、澤村に問う。「オレも気になって調べてみたんだよ。そうすると、凄いことが分かったんだ」

 隣にいる澤村は、目を細めてそう言った。「凄いこととはどういうことだ?」

「ああ」と澤村は、自分の眼鏡に手をかけて言った。

「次期社長の妹が絡んでいるんだ」と、澤村は誇らしげな様子だった。要するに、家族内での紹介ではないか、そう思ったのだが、どうやらそうではなかったらしい。

「そんな単純な話ではない」澤村は、細い目をさらに細めて、目が無くなるんじゃないかと心配になるぐらいだった。

「その妹の彼氏が絡んでいるんだ」
 なにやら、ちょっとややこしくなってきた。この段階で他人である。
「なるほど、その彼氏というのは何者なんだ?研修をしたのは、その彼氏の会社なのか?」

 その時、澤村の目がキラッと光った。
「いや、その彼氏は絡んでいるだけなんだ。その彼氏の父親が不倫している女性の会社だったんだよ、研修会社は!」

「澤村。お前が凄いという事は分かった。ただ、それってうちの会社と何の関係もないじゃないか」
 澤村は、フフっと不敵な笑みを浮かべた。


「聞いて驚くな。彼氏の父親は、部長だ。そして、その不倫相手の女性は、久保田の嫁さんだ」
「なに!!」私は、驚きのあまり大声を出してしまった。

「そして、この研修を決めたのは、部長だ。そう、久保田は自分の嫁が部長と不倫していることが分かり殴った。そうオレは解釈している」

「では、冒頭の一文とは、何も関係がないのか!殴った理由は、この書き出しの内容が大事なんじゃないのか」私は、澤村の襟を掴んで、そのまま壁に押し付けた。その拍子に、澤村が自慢している眼鏡が床に落ちた。

 澤村は、私の手を払いのけて言った。
「まあ落ち着け。『生まれ変わるなら、生きてるうちに』というのは、久保田の嫁さんが言った言葉だ。その言葉は、久保田が先日、嫁さんから離婚を切り出された時の言葉だった。そう、研修の時に聞いたあの言葉だ」
「そうか。だから、その言葉を聞いて、久保田は、久保田は部長が不倫しているのを確信して殴ったのか」

 「その通りだ」と言って、満面の笑みを浮かべていた。


 私は事の顛末てんまつを知った。久保田は嫁さんを愛していたのだ。久保田の愛人である同じ部署の女性社員と同じくらい彼は嫁さんを愛していたのに。
 なんて、可哀想な事件なんだ。私は、少し涙が出そうになった。


 しかし、私は涙が流れ落ちることを思い止まった。

 そう言えば、澤村は一体、何者なんだ?どうして、こいつはそこまで色々な事情を詳しく知っているんだ。

 もしかして、私が澤村の嫁と不倫しているのも…


 生まれ変わったような顔の澤村が、額から冷たい汗が流れ落ちている私の顔を、久保田のような笑みを浮かべながら見つめていた。






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