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日本人 インド工科大学ボンベイ校 大学院生のアッサム旅行記—インドで豚を食べ、自家製ライスビールを飲んだ話

「インド」と聞いてイメージするものは人によって違うと思う。カレー、喧騒、カラフルな街並み、牛、スパイスの匂い——。

でも自分がアッサムで体験したことは、そのどれとも少し違った。

グワーハティ—マールワリの家に泊まる

1回目のアッサム行きで最初に向かったのはグワーハティ。IIT Bombayで仲良くなった友達の実家だ。

彼の家はマールワリの家庭だった。マールワリはラジャスタン州出身の商人コミュニティで、ビジネスのためにインド各地に移住した人々だ。グワーハティにもそのコミュニティが根付いている。そしてマールワリといえば、厳格なベジタリアンで知られる。玉ねぎやにんにくを使わない家庭も多い。

家に着くと、家族みんなが大歓迎してくれた。夜は大きな部屋にみんなで並んで寝た。インドの家族の温かさを、そのまま体験したような滞在だった。

朝食はパラタとチャイ。パラタは全粒粉の生地を薄く伸ばして焼いたパンで、いくつかのカレーと一緒に出てきた。シンプルだけど、朝からしっかり食べられる。

おやつにはカチョリとジャレビも出てきた。カチョリはスパイスを詰めた揚げパンで、ザクッとした食感の中にスパイシーな具が入っている。ジャレビはオレンジ色のらせん状の揚げ菓子で、甘いシロップにたっぷり浸されている。どちらもラジャスタン系の定番おやつで、これがマールワリの家の食卓だった。

ブラマプトラ川を渡って、島の寺院へ

グワーハティ観光で印象的だったのが、ブラマプトラ川を渡るロープウェイだ。全長約1.8km、川の真ん中に浮かぶウマナンダ島(別名ピーコック島)の上空を通過する。眼下に広がる大河と、その中に静かに浮かぶ小島。ムンバイとはまったく違うスケール感だった。

その後、渡し船で島に上陸し、ウマナンダ寺院にお参りした。世界最小級の有人河川島に、ヒンドゥー教の寺院がひっそりと建っている。川の真ん中に来てしまったような、不思議な静けさがあった。

夜のグワーハティの街も歩いた。電線が複雑に絡み合い、オートリキシャが行き交い、屋台が並ぶ。賑やかで、少し懐かしいような空気だった。

友達のおすすめの店でチーズモモスを食べた。モモスはチベット発祥の蒸し餃子で、アッサムを含むインド北東部では身近な食べ物だ。日本の餃子に近いが、皮が厚くもちもちとした食感で、辛いチリソースと一緒に食べる。チーズが入ったバージョンは、もちもちした皮の中からとろけたチーズが出てきて、スパイシーなソースとの組み合わせが予想以上によかった。地元の人に連れて行ってもらわなければ、たどり着けなかった店だと思う。

その夜は友達の先輩も一緒にディナーを囲んだ。モモスの後に食べたのがポークトゥクパ。トゥクパはチベット発祥のスープ麺料理で、日本のうどんに近いもちもちした麺をあっさりしたスープで食べる。豚肉入りのバージョンはアッサムならではで、スパイスの効いたインド料理が続いた後に食べると、その素朴さがしみた。

特急でコクラジャールへ

グワーハティから特急列車でコクラジャールへ移動した。車窓から見える北東インドの風景は、ムンバイとは全然違う。緑が多く、平らな大地が続く。列車の中でぼんやりと外を眺めながら、「インドってこんなに広いんだな」と改めて感じた。

コクラジャールはボドランドと呼ばれるアッサム西部の自治区域にある街だ。もう一人の友達の出身地で、彼の家に泊めてもらった。

最初の夜ごはんはチキンカレー、ポークサブジ(豚肉と野菜を炒めたもの)、そしてダール。特にダールが激ウマだった。豆を煮込んだシンプルなスープなのに、スパイスの使い方が絶妙で、グワーハティのベジ料理とはまた違う、素朴で力強い味だった。

翌朝の朝食の食卓に、何気なく小皿が置かれていた。真っ赤な唐辛子が2本。ブートジョロキア(ゴーストペッパー)だった。世界最辛クラスの唐辛子が、朝ごはんの付け合せとして普通に出てくる。アッサムが原産地のひとつなので、ここでは特別なものではないのだ。恐る恐る少し食べてみたが、辛さの中にしっかり旨味があって、普通においしかった。

「The Other World」と、ゴーストペッパー

コクラジャールで連れて行ってもらったのが、「The Other World」というバー兼レストランだ。カラフルなライトで飾られた、地元の人たちでにぎわう場所だった。

ここではお酒と豚のつまみを楽しんだ。揚げた豚肉に赤玉ねぎと青唐辛子を和えたシンプルな一皿だが、これがよく合う。インドでは宗教的な理由から豚肉を食べない地域が多いが、ボドランドではそうした制約がない。豚肉は食文化の一部だ

別の日には「Nagadinner」という店にも足を運んだ。名前の通りナガ料理の店で、ここで食べたものが特に印象深かった。

まず目を引いたのがパープルライス。インド料理といえば白いバスマティ米のイメージが強いが、ナガ料理では紫が

かった在来種の米が使われる。もちもちとした食感で、見た目から違う。テーブルには他にもポークリブ、バンブーシュート(竹の子)の料理、ダール、チャトニーが並んだ。ターリー(大きな丸皿に複数の料理を盛り合わせたインドの定食スタイル)として一度に出てくる。

ナガ料理の特徴は、インド料理のようなスパイスの複雑さよりも、素材そのものの味を活かすシンプルさにある。燻製や発酵を使った調理法も多く、どこかアジアの山岳地帯の料理に近い印象を受けた。コクラジャールはナガランド州の隣に位置するため、こうした料理が普通に食べられる。。

川辺の誕生日バーベキュー

1回目のコクラジャール滞在中、自分の誕生日が重なった。

友達が「川に行こう」と言い出した。コクラジャールから車で4時間ほど離れた川辺だ。友達の友達も加わって、数人で車に乗り込んだ。

川に着くと、みんなで石を積んで即席のグリルを作り始めた。石の上に金網を渡して、薪に火をつけて、豚肉を焼く。バーベキューコンロも炭もない、完全に手作りの火おこしだ。

焼き上がった肉を大きな黒い皿に盛って、玉ねぎとパクチーをたっぷり混ぜる。

途中の道がかなりの悪路で、車がずっとシェイクされ続けた。川に着いてケーキを開けると、中がぐちゃぐちゃになっていた。それをみんなで笑いながら食べた。

4時間かけて川まで連れてきてくれた。それだけで十分すぎた。

インドに来てから、人の温かさに何度も驚かされているが、このときもそのひとつだった。

コクラジャールの景色

食べることばかり書いてきたが、コクラジャールで印象に残っているのは景色もだ。

友達とドライブに出かけたとき、一面に広がる黄色いマスタード畑が目に飛び込んできた。地平線まで続く黄色と青空のコントラストが鮮やかで、思わず車を止めたくなるような眺めだった。ムンバイのコンクリートの景色とは別の世界だ。

夕暮れ時には、広大な平原に沈む夕日も見た。遮るものが何もない地平線に、オレンジ色のグラデーションがゆっくりと広がっていく。コクラジャールがこんなに美しい場所だとは、来るまで知らなかった。

2回目——村へ

シリグリから列車で移動してコクラジャールへ。冬の乾季で、シリグリの街は細かい埃に包まれていた。
コクラジャールに着いたのは夜で、駅の看板を見てようやく「来た」という実感が湧いた

火と井戸水と鶏がいる村

2回目のコクラジャール行きでは、初めて村に足を踏み入れた。友達のお母さんの実家がある村で、1回目では行かなかった場所だ。

村に入ると、そこには別の時間が流れていた。

ガスコンロはなく、火を起こして大きな鍋で調理している。蛇口をひねっても水は出ず、井戸から水を汲む。鶏が庭を歩き回っている。日本もムンバイも関係ない、どこか懐かしいような生活がそこにあった。

村の人たちとの会話は友達と従兄弟が通訳してくれた。彼らが話していたのはボド語。そして自分が来たことで、この村に外国人が訪れたのは初めてだったという。

ボド族はチベット・ビルマ語族系のアッサム先住民族で、東アジア系に近い外見的特徴を持つ。その祖先がチベットや中国国境地帯から移住してきた歴史を持つからだ。友達に連れてきてもらわなければ、一生来ることはなかった場所だと思う。

2軒のライスビール

友達の従兄弟が「せっかく来たんだから飲んでいけ」と連れて行ってくれたのが、村の2軒の家だった。

どちらの家でも出てきたのは自家製のライスビール。ボド族の伝統的な醸造酒で、各家庭でレシピが違う。

1軒目は、スパークリング日本酒に近い感じ。外の光の下でグラスを持つと、細かい泡が見えた。酸味は少なめで、スッキリした口当たりだった。

2軒目は室内で出てきた。炭酸なし、でも濃厚で、1軒目とはまるで別の飲み物のようだった。「同じライスビールでも、こんなに違うのか」と驚いた。


そしてライスビールとは別に、1軒目では透明の液体も出てきていた。昼間から皆がめちゃくちゃ飲んでいる。テイスティングしてみると、ウォッカのような強烈なアルコール感。これも自家製だと聞いたが、何の酒なのかはわからなかった。村の人たちが昼から豪快に飲んでいる横で、自分はそっとグラスを置いた。

村の夜、屋上のたき火

村から戻った夜は、友達の友達の家の屋上でバーベキューをした。屋上にたき火を囲んで、増えたメンバーと夜遅くまで過ごした。ストリングライトが張られた屋上、たき火の炎、見上げると星空。2回目のコクラジャールも、こうして賑やかに終わった。

豚料理と、インドの広さ

村でも豚料理が出てきた。煮込んだ豚で、アッサムの豚は脂身の味が日本のものとは明らかに違う。うまく言語化できないのだが、素材そのものの味が違う。それだけ、環境や育て方が違うということなのだと思う。

2回のアッサム、そして次へ

2回のアッサム旅行を振り返ると、食べたものより先に、人の顔が浮かぶ。

グワーハティのマールワリの家族が大部屋に迎えてくれたこと。コクラジャールの友達が誕生日に4時間かけて川に連れて行ってくれたこと。悪路でぐちゃぐちゃになったケーキをみんなで笑いながら食べたこと。村で外国人として初めて迎えられ、自家製ライスビールを注がれたこと。屋上でたき火を囲んで、夜遅くまで過ごしたこと。

どれも、IIT Bombayで友達ができなければ、絶対にたどり着けなかった場所の話だ。

グワーハティのベジ料理、コクラジャールのゴーストペッパーと豚肉、ナガのパープルライスとバンブーシュート、村の自家製ライスビール——同じ「アッサム」の中だけで、食べるものも、話す言葉も、文化も、全部違う。インドは多様すぎて、ひとことでは語れない。そしてその多様さを、インド各地から集まった友達がいるIITだからこそ、体験できている気がしている。

「インドらしくないインド」を旅したつもりだったが、気づけばこれが自分にとってのインドになっていた。

3回目は、もう少し先まで行ってみたいと思っている。

藤田麟太郎 / Rintaro Fujita MDes by Research, IDC School of Design, IIT Bombay

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