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エッセイ │ 動けない日に検索する5つの英語

ずっとキッチンに立ちっぱなしだったものだから、ふくらはぎのあたりがじいんと鈍く重たくなったお風呂上がり。
髪を乾かして、ぺたりと洗面所で座り込む。疲れた。動けない。

1階の床にばらまかれたおもちゃのことを思うと、床に貼りつけられたみたいに動けなくなった。

こういう話をSNSに書くと「休んでいい」「散らかってても死なない」というコメントがつくことが多かった。
優しさが沁みる。

けれども、今日がんばらなければ明日やることが2倍になってしまう。身をもって知っている。
それをこなせるほど器用な性質ではないから、だから、わたしは気まぐれな自分を奮い立てて、なるべくコンスタントに動きたいのである。


子どものころから3日坊主だった。
ノートは使い切れずにまっ白。たくさん買い込んだ趣味のものがどんどん増えて部屋を圧迫していく。やりたいことがくるくる変わり、やりたくないことは後回しにしてしまう。そして、散らかったりやることを溜め込んだり……。そういう負のループを何度も何度も何度も経験してきた。

どうせ動けなくなる。
今よりもっと動けなくなるときがくる。──だから、今日は動きたい。明日のために今やっておきたい。




そういうときわたしは、Instagramをひらく。
大事なのは、すぐに検索欄へ飛ぶこと。そうしないと、きらきらしい投稿に引きずられてまた動けなくなってしまう。

ハッシュタグは要らない。
英語でこの言葉のどれかを入れていく。今やりたいことに合わせて。

closing shift
deep clean
restock day
folding clothes
home reset

ぼうっと時計に目をやる。20時を過ぎている。
やるべきことは家のリセットだ。それなら今日は「closing shift」を選ぼう。


これは"店じまい”という意味合いのようだ。おうちの店じまい。なんだか可愛くって、この単語を知ったとき、自分でも似たものをやってみることにしていた。

名前はそのまま借りて「クロージング家事」。
そこにルールを付加した。
今いる場所を短時間で徹底的にリセットすること。そして、これが肝心。最後に電気を消すこと。

▼クロージング家事の例

1.朝の準備物の確認
2.ゴミをまとめておく
3.机の上を空っぽにする
4.キッチンの上をなにもない状態にする
5.バスルームの水気を取り、ボトルをきちんと並べる
6.寝具を整える
7.洗濯ものをたたむ
8.ペットまわりの掃除
9.玄関の靴を揃える
10.戸締まり確認

この「最後に電気を消す」というのがとても大事。
ふしぎなもので、実際に手を動かしてスイッチを消すと、気持ちがきりっと引き締まるのだ。



どうして日本語で検索しないのか。


日本でもきっと同じテイストの動画はあると思う。

単純に自分の好みなのだけれど、海外の動画は、雑でもゆるされるし、そして静かな気がするのだ。

日本のリール動画でこうした家のリセット作業をしているものは、ていねいなものや、心が揺れるものが多い。


たとえば床に落ちたクッションを集めて定位置にもどす。日本のひとは、ふわっと持ち上げてていねいに置き、そっと上から押さえてハート型のような形に整える。
これはこれで素敵だし、憧れる。でもこの動画を見たいのはやる気があるときだ。床にぺたりと座っている今見ると、できない自分が虚しくなるだけ。

その点、海外のアカウントは、もう少しハードルが低い。
床に落ちたクッションはまるで手裏剣を投げるみたいに手早くソファにもどしていき、最後にチョップして形を整える。
ちょっと雑。

はじめて見たとき「なんのはなしですか」と思ったことは今も記憶に鮮やかに残っている。

わたしはどちらかというと(いやあるいは完全に)雑寄りなので、海外のていねいながらも過程は少し雑で、くすっと笑える動画に、背伸びしない自分でもいいんだという気持ちになれる。



もうひとつ。海外の動画のほうが静かだということ。これは音のことじゃない。リールを見るとき、音は出さないからだ。
日本のリセット系リール動画の多くは、わたしにとって情報過多に感じられる。

たとえば、片づけや料理についての動画なのだけれど、そこにはテロップが入っていて、ご自身の悩みが綴られているというもの。
とてもよく見かけるから、たぶん「バズる構成」のようなものなのかもしれない。

動画と文字がべつのジャンルだから、だんだん混乱してきてしまう。
中でも綴られる悩みが「こんな批判が来た」「離婚します」といったやや重ためのものだったりすると、ただでさえ疲れているところで、しゅんとやる気がしぼんでしまう。

くり返すけれど、暮らしを整える動画と重ためのテロップを別々に見ていたらまったく気にならないのだと思う。
たとえばnoteで読む分には重い内容でもわたしは気にしていないのだ。

それは、自分のタイミングで、自分で選んで読んでいるから。でもInstagramの場合はそうじゃない。自分の気分に関係なく、おすすめのものが上位として表示される。

なにより、相反するものが同時に動いているから、すごくたくさんの情報が入ってきて疲れてしまうのだと思う。


海外のリール動画にはこの傾向は少ない。
ゼロではないけれど、リセット動画ではあまり見かけないし、もし見ても、英語のテロップはさすがにフラッシュカードのような速度だと追いきれないからあまり気にならないかもしれない。



手元でどんどん綺麗になっていく部屋を眺めているうちに、なんとなくそわそわする。

そしてわたしはついに立ち上がり、タイマーを1分にセットして、ダイニングテーブルの上のものをどかしはじめた。
ふだんはのろのろしているものだから、機敏に動く母の姿に息子はすぐに察したらしい。

にやりと笑って勝負をしかけてきた。


タイマーをセットして、どちらが早くたくさんかたづけられるかだ。

対戦はまず1分からはじめる。
1分間で何を終わらせるか宣言し、カウントダウンがはじまる仕様になっている。

1分の結果が出たら2分、それが終わったら3分と少しずつリミットを延ばし、大物に取りかかっていく。
これをわたしは「レベル上げタイムアタック」と呼んでいる。

ふだんは何をやっても動かない息子だったが、最近、自著で提唱しているこの方法をすすめたら、ゲーム感覚で楽しめるのかレベル7(合計28分間)までクリアした。
子どもたちには1分1円相当のおもちゃ宝石を渡している。息子は28個の宝石を手に入れほくほくしていた。

やがて、寝かす時間が来た。

部屋は完ぺきとまでは言えなかったけれど、やる前とあとでは明らかに違う。
わたしは今日の自分に心のなかで"はなまる"を贈り、リビングのスイッチを消して2階に上がったのだった。


ある日のリセット後のリビング


まとめ

・動けない日にInstagramで5つの英語を検索するとやる気が出る(可能性がある)
・closing shift、home reset、restock day→家がちらかっているときに
・deep clean→掃除が面倒なときに
・folding clothes→洗濯物を溜め込んだときに
・アプリを立ち上げたらすぐに検索しないと、他の投稿に目を引かれて逆効果なので注意
・クロージング家事は、closing shiftにインスピレーションを得て決めた夜のルーティン。できた日はとても爽やか。
・レベル上げタイムアタックは、タイマーを1分からはじめて少しずつ時間を延ばしていくもの。







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三條 凛花 最後までお読みいただき、ありがとうございます♡

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