見出し画像

コラム │ 書類に溺れた母がつくった説明会を攻略するバッグ


鴨の列みたい──。

旗を持った先生について行く息子の後ろ姿を見ながら、そんなことを思った。肌寒い風が肌をなぞる。

わたしたちは、進み出した列に流されるようにして前に進んだ。
毎朝、園に向かう息子と離れているはずなのに、なぜだか名残惜しくて何度も振り返ってしまう。けれども息子は振り向くことなく、まっすぐに前を見て進んでいった。小さな背中が遠くなってゆく。

ふと数年前、娘が同じようにわたしのもとを離れたときのことが思い浮かぶ。
列の中でひとりだけつんと背の高い娘が、不安げな色を乗せて、何度も何度もこちらを振り返りながら遠くなっていったことを。


就学時健康診断──それは、小学校入学前に、市町村が実施する健康診断のこと。
学校に着くと、親子は別行動となる。子どもたちは数人のグループに分かれて校内でさまざまな検査を受けるものだ。

息子と離れたわたしは、指定された席に座ると、すぐに渡された茶封筒の中身を開けた。そして、仕分けをはじめた。

知り合いもおらず、なにもわからない初めての入学でやってきて、書類に溺れたときの教訓を生かして、わたしは学校行事を攻略するためのバッグを作っていた。




3年前、二度手間がくやしかった話


今から3年前──。
長女の就学児健診の帰り道、わたしはぐったりと疲れていた。

その日は、早い時間から並んで待っていた。体育館の前でも十数分待ったが、受付を終えてからの待ち時間も30分あった。

子どもと離れ、長時間の講演を聞いたあとは親子面接が待っている。
(ちなみにベテラン主婦の方による上から目線の子育て論で、かなりメンタルが削られたことを添えたい)

ところが、娘のグループがいっこうに戻ってこない。
長い時間待つことになった。

あとから受付したグループがどんどん立ち去る中、わたしはがらんとした体育館で不安な気持ちで、ただ、校歌の歌詞に目をやっていた。

待ったのは確か、1時間半──。せっかく早くから並んでいたのに、面接がはじまったのは夕方になってからだった。


習い事になんとか間に合わせ、ひと通りのタスクを終えて帰る。
学校からむき出しのまま手に持って帰った茶封筒の中には、大量の書類が詰まっていてげんなりした。

待ち時間が長かったので、ひと通り目を通し終えていた。でも、さっぱり記憶にない。

結局その日は気絶するようにねむってしまい、提出物の〆切ぎりぎりになってから1枚ずつ確認するはめになった。
場合によっては書き込み、仕分けしていく──。

このとき、なんだかくやしかった。体育館で読んだのに。それなのにもう一度読み返す。その時間がむだに思えた。

ちなみに学校から渡されたプリントには、就学時健診の持ちものは、上履きとしか書いていなかったのだ。はじめての私には、なにがあるのかさっぱりわからず、筆記用具も、書類を持ち帰れるサイズの袋もなかった。


前夜に立てた作戦


あれから3年が経った。

健診前日。わたしは家族用玄関の、すこし高い棚の前で背伸びをした。そこには黒のトートバッグが3つ入っている。
棚には左からスポーツ、病院、学校と英字印刷されたラベルシールが貼ってある。
「学校」と書かれた場所からバッグを取りだした。

ここには、学校や幼稚園の参観日や行事へ行く時の持ちものがすべて入っている。ダイソーで買ったもので、同じバッグを3つ買って使い分けている。

ただし、ぱっと見わかりにくいので、チャームなどを付けておいたほうが良さそうだと思うこのごろ。

バッグを手にしたら、一度すべてを出す。
そして、家に置いておくもの──つまり、明日は要らないものをメッシュバッグへ仕分ける。

▼持ちものの基準はこちら。プリント通りの持ちものだけだと「足りない」ことは意外と多い。

家族参観じゃない。だから、夫のスリッパは要らない。今回は保護者ネームも不要だ。

持って行くのは、自分のスリッパ。
健診票は、提出物やプログラムなどすぐ出したいものをまとめるためのクリアポケットへ。

それから、普段は持参しないバインダーと筆記用具。
この中には、4枚のクリアファイルが入っている。


前回の就学時健診で、書類に溺れた経験から作ったものだ。


▼過去記事で「参観バッグ」として紹介したもの。当時の画像を紹介。

※このバインダーはFrancfranc
筆記用具は、ボールペンと蛍光ペン
試行錯誤の結果、画像のような
ポーチタイプより、小さなバッグがおすすめ!
そのまま出し入れできると便利。

▼詳しく読みたい方はこちらへ。



帰宅後、読み直さなくていい方法


「なんだか親のほうが緊張しますね」

席に腰を下ろしたわたしは、後ろに座ったママ友にひっそりと声をかける。

息子は、幼稚園で仲のいいお友だちと前後に並んでその場を後にしていた。だからだろうか。長女のときのように不安な色は見えなかった。

たぶん二人なら大丈夫だと思う。あとはふざけたり、騒いだりしなければいいのだけれど……。

見回してみると、体育館のあちらこちらに、見知った顔がある。──どこかほっとする。ママ友って、顔見知り程度でも同志のようなもので、外の、アウェイな場所で会うとすごく安心するのはなぜだろう。


壇上に先生が立った。
開始時間まであと5分休憩とのこと。前回は30分以上待ったことから考えるとちょうどいい。

わたしは茶封筒の中身をすべて膝に出した。そして、4枚のクリアファイル──「捨て」「保管」「提出」「その他」と書かれたものに、仕分けしていく。書けるものは記入までやってしまう。


「捨てるもの」には校門前で受け取ったチラシ類や、自分には関係のない書類を。これはミスがあるといけないので、家に帰ったら、捨てる前にもう一度きちんと見る。

「保管するもの」は、提出しなくていいけれど、当面は家に置いておきたい書類。たとえば、今後の予定について書かれたもの。チラシでも、購入予定の制服店のものは割引クーポンがついていたりするため残した。

「提出物」はそのまま。書いて提出が必要なもの。

「その他」は、上の3つに分類しきれないもの。提出は不要で、長期保管も不要なものだ。
たとえば「任意参加のもの」や「塾のチラシ」といった、検討が必要なものもここに入る。


前回の就学時健診で疲れたのは、一度読んだ書類をもう一度読み直して、それから仕分けし、書いていく作業が必要だったこと。ざっくりとこんなフローができあがる。

それなら「読み返す」手間をなくせないだろうか。そう考えた。もらったらその場で仕分けてしまえば、楽になるはず。

はじめは、ファイル3つを使ってその場で仕分ける方法を考えてみた。


あれから3年。保護者会などで何度も使っていくうちに分類できないものが出てきた。
「その他」ファイルがほしいなと思い、最終的に4種類のファイルで補っている。色分けだけだとわかりにくかったので、面倒でもラベリングは必須。

それ以外にも、メモ帳があるといい。
「いつ」「何を」やるのか形式を決めてメモを取っておけば、何度も読み返さなくてよくなるからだ。ノートよりも、バッグから取り出して戻す必要がないメモ帳(プリントの裏とかでもいい)がおすすめ。



旗を持った先生の後ろに、息子と友だちがぴんと背すじを伸ばして戻ってきた。まだまだ小さくて、来年小学生になるだなんて信じられないけれど、少し離れている間になんだか大人っぽくなったような気がする。

最後のほうに受付をしたけれど、面接は早い時間に終わった。
遅めに来たおかげで、待ち時間も3年前と比べると1時間以上短縮されている。

ふーっと息を吐いて校門を出た。校舎を出るなり走り出した息子が、捕まえなくても門を出る前に立ち止まっている。

空の色が少しずつ黄みを帯びてきている。
日が暮れるのが早くなった。肌寒さに腕をさすりながら、わたしはすっきりとした気持ちで息子と手をつないで、家路についた。





▼ポートフォリオはこちら。


いいなと思ったら応援しよう!

三條 凛花 最後までお読みいただき、ありがとうございます♡