センセー、なんで? │ 1000字日記
大きな窓の目の前の席が空いている。
よかった。
わたしはコーヒーを片手に、迷わずそこを選んで進んだ。
窓ぎわの、いちばん後ろの席になることが多かった。
くすんだベージュの学校机の上に、しゃらしゃらと揺れる木の陰をぼうっとなぞっていた。掃除の時間に拭いているはずなのに、なんだかざらつきが残っている不快感。
あれは、だれもいない放課後の教室……だったと思う。
「センセー、なんで私、いつもあの席なの」
窓ぎわの席は、決してきらいではなかった。
むしろこの席になりたいとみんなが言っていた、人気の席なのである。
でも、そう言う彼ら──クラスの真ん中のほうでかたまりになって楽しげにしている人たちから、この席は、なんとなく隔絶されているような。
いや、それでもよかったのだろうか。
わたしはあの位置には行けない。真ん中にいて、その場でひとりになってしまう方がつらいのではないか。
もしかして先生は、そんなことを考えて窓ぎわにしてくれているのだろうか。
いつもわたしに変なことばかりいう先生を見直した。
その瞬間だった。
「……のよ」
先生が、くちびるを噛んで言った。よく聞こえない。
「え?」
「汚いのが許せないのよ!」
先生は、漫画なら「キー!」と効果音がつきそうな感じで言った。
きっとそこにハンカチがあったら噛んだだろうし、足まで踏み鳴らしそうな勢いだった。
「早くこっちに来て。見て」
先生は、わたしを窓ぎわの自席に誘導すると床を指さした。
わたしのすぐ横の場所。そこには、なにもない。
「窓側の席って、広いの。だから、やつらを窓ぎわにしたら、荷物を置くでしょう?」
「ああ……」
なんとなく、想像できた。
「ここを汚くする人にはぜったい!ぜったい! ぜぇーーーーーーったいに!座らせたくないの。私、潔癖症なの」
「ええ……」
なんのはなしですか。
幼稚園の参観日に行くと思う。
わたしは先生の言う「やつら」のポジションにいるような気がする。
かつては続かなくて困っていた会話も、同じライフスタイルを持つ「ママ」たちであれば問題なく続けられるようになった。
でも。
学生時代はひとりの時間が苦手だった。
周りの目が、──だれも見ていないだろうとわかっていても──怖かったのをよく覚えている。
だから、なるべく端っこのほうにも目を向けるようにしている。
しゃべるのが苦手で硬くなっている人が、すこしでも輪に入りやすいように。
それはきっと、わたしが誰かにやってほしかったこと。
9月の1000字日記お題から、
教室+採集した言葉で書きました!
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