見出し画像

深夜二時、わたしは目をさます。

深夜二時。
眠っていたはずの体が、ふいに浮き上がる。夢の続きも、現実の音も聞こえない。ただ静かで、暗くて、少しだけ孤独な時間。

娘の寝息が隣で聞こえる。夫も眠っている。
この家の中で起きているのは、たぶん私だけ。

不安があるわけじゃない。ただ、ときどきある。こうして、夜中に目が覚めてしまうこと。

枕元のスマホに手を伸ばすのは簡単だけれど、それじゃせっかくの“この時間”が、どこかへ逃げてしまいそうで。
だから、そっと布団を抜け出して、キッチンまで行ってみる。

麦茶をひとくち。冷たさが喉を通りすぎると、なぜかほっとする。
まるで、「大丈夫だよ」って、誰かが言ってくれているみたいだ。

窓の外をのぞくと、街灯の明かりがまだついていて、誰も歩いていない道が、しんと眠っている。
でも、きっとこの世界のどこかで、同じように目を覚ましている誰かがいると思うと、不思議と心細くはない。

そういえば、むかし祖母が言っていた。
「夜中に目が覚めるのは、体がなにかを伝えたいときかもしれないよ」って。

じゃあ、私の体は今、何を言いたかったんだろう。
たぶん、“ちょっとひと息、つきたかった”だけかもしれない。
昼間は、母として、妻として、職場の一員として、誰かのために動いている。
でもこの時間だけは、「ただのわたし」でいていい。

だから私は、少しだけ日記を書くことにする。
今日、娘が笑ったこと。仕事でうまくいかなかったこと。
夕飯の唐揚げがうまく揚がったこと。
そんなことを、静かな夜にこっそり綴っておく。

ふと時計を見ると、もう三時近い。
そろそろ、布団に戻ろう。

眠れなくてもいい。ただ、まぶたを閉じて、朝が来るのを待てばいい。
深夜二時に、起きてしまったっていい。
そんな夜があってもいいのだと、
やさしく思えるようになったのは、きっと、いまの暮らしが愛おしいから。


喜木 拝

#シロクマ文芸部 さんのお題で綴りました。
「深夜二時」は、日常と非日常のあいだにあるような、不思議な時間。
そこからはじまるエッセイを書きました。
締め切りギリギリですみません💦
お読みいただきありがとうございます💖


いいなと思ったら応援しよう!

喜木凛(ききりん) サポート頂けると飛んで喜びます! 本を買う代金に充てさせて頂きますね〜 感謝の気持ちいっぱいです!!