ワインは「年」で語られ、日本酒は「今」で語られる──発酵酒に刻まれた価値観の違い
今日は時間が過ぎるほどに気温が下がっています。身を縮めながら帰宅しましたが、明日の朝には0℃になる予報が出ています。温かくしてお過ごし下さい。
さて、……。
はじめに
ワインも日本酒も、アルコール発酵によって造られる醸造酒の一種。両者の主な違いは原料と発酵方法にある。
原料はブドウと米で違うことはご存知だと思う。そして発行方法に差異がある。
ワイン:原材料のブドウにブドウ糖が含まれているため、アルコールにするための糖を作る工程(糖化工程)が不要。アルコール発酵の単発酵のみ。
日本酒:米のデンプンを米麹により糖分に分解する糖化が必要。1つのタンクで糖化とアルコール発酵を同時に行う並行複発酵。
ワインと日本酒はこのような差異があるが、醸造酒であることに変わりはない。それなのに、ワインには「○○年もの」という言い方がある。一方で、日本酒ではほとんど見かけない。
この差はどこから生まれたのかが気になったので調べてみた。
① 原料が生む「年の個性」の差
ワインの原料となるブドウは、天候の影響を強く受ける。日照、雨量、寒暖差で味が大きく変わる。
そのため、ワインの醸造にあたっても収穫年そのものが品質情報になる。「当たり年」「外れ年」という言葉が生まれる理由でもある。
一方で日本酒の原料は、米と水。米は品種改良が進み、品質が安定している。精米歩合で狙った味を作れる。
結果として、年ごとの差は小さくなる。「何年の酒か」より「どう造ったか」が重要になる。
② 熟成に向く酒と、向きにくい酒
ワインは酸とタンニンが豊富。これらが時間の経過とともに味をまとめていく。熟成により風味豊かに、味が良くなる酒である。
一方で日本酒は、繊細である。香りが命で、酸は控えめ。そのため時間が経つと劣化しやすい。基本は「できたてが一番うまい」という酒である。もちろん日本酒であっても古酒や熟成酒は存在する。但しそれは主流ではない。
③ 例外となるボジョレーヌーボー
ここで思い出さねばならないのが、ボジョレーヌーボー。これはワインでありながら、熟成させない。収穫した年のうちに飲む酒である。
見方を変えると、ワイン側に存在する「日本酒的な酒」という評価もできる。
毎年解禁日が話題になる。味の評価より、季節行事として消費される傾向が強い。「今年もその時期が来たな」という確認の酒である。
これは、日本酒の「しぼりたて」に近い。新酒を祝う文化が、ワイン側にも存在していることを示す例である。
④ 文化が決めた評価軸
ワインは「寝かせた時間を楽しむ酒」である。何年寝かせたか、それ自体が物語になる。
これに対して日本酒は「今を味わう酒」である。しぼりたて、ひやおろし、季節限定。旬を楽しむ日本の文化に見事に適合している。
ボジョレーヌーボーは、その中間にある。年号は付くが、寝かせない。時間より「今年」を祝う酒である。それぞれの評価軸の違いが、ラベル表示にも表れる。
ワインは年を前に出す。日本酒は造りと鮮度を前に出す。ボジョレーヌーボーは年号を表示するが、例外的にすぐに消費される。
これらの方向性に優劣はない。そのように捉えるべきではなく、背景となる文化の違いである。
まとめ
ワインは○年ものと「年で語る酒」である。一方で日本酒は「造りと瞬間で語る酒」である。ボジョレーヌーボーは、ワインの例外である。
同じ醸造酒でも、目指す美味しさのベースが違う。だから文化としての方向性も分かれたと考えるべきであろう。
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