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【短編小説】 魔女のスープの作り方

あたし、見習い魔女のチャイ。
今年15歳。
ちょっと、大人の階段登ってる最中よ。

15歳になった魔女は、試練に受かると、
魔法の杖を授かるの。

あたしはね、透明なガラスの先に、
金色の星のついた杖が欲しいんだ。

夏が近づこうとしてる。
夕立が多くなり、湿気が身体にまとわりつく。

女の子代表して言うけど、
湿気で前髪が乱れるの、ほんと嫌よね。

気の早い蚊に刺され、右の二の腕に
ぷっくりとした虫刺され跡。

柔らかくて白いだけの肌に、
そこだけがやけに熱を持って主張している。

あたしは虫除けスプレーを買って、噴射する。
まるで勇者の鎧を纏ったよう。これで安心ね。

あたしは森にわけ入った。
試練を、受けるために。

試練はひとつ。
魔女のスープを作ること。

材料がわかんないの。
だから、ママの書斎の本「魔女の試練」を開いた。
その本によると、次のアイテムが必要みたい。

眠り苔、黒すぐり、銀葉草、星降りの実、白い息のガラス玉、梟羽草、夜露ミント、影山椒、宇宙のきのこ

魔女の試練   15頁

えっ?多すぎない?(笑)

でも本格的な魔女になるための試練。
頑張らなきゃ!

わーーーん、大変だった。
途中、何度も死ぬかと思ったよぉ。
なんだか身体もじんじん疼くし。

でもね、
“宇宙のきのこ”以外は集まったの。

何があったかは、
また別の話でゆっくりと語らせてもらうね。

だって、これだけで20,000字超える大作になっちゃうもん。
創作大賞に応募出来るよね。
ファンタジー部門でね。

で、最後の“宇宙のきのこ”。

聞いたこともないなぁ。
ま、全アイテムそうなんだけど。

「さてさて、また本で調べなくちゃね、ブラン」

使い魔のブランに声をかける。

ブランは真っ白な猫でね、
ふわふわの毛並みで、ちゅ〜るが大好き。
あたしが赤ちゃんの時から、この家にいるんだよ。

「調べ方、手際良くなってきたな」
ブランが鼻をピクピクさせる。

「宇宙のきのこ」
ソーセージ座が宵闇に輝くとき、
星のように光り、小さな朝露を宿して、
夜の底でだけ息をする。
別名“星雫茸”

魔女の試練 222頁

「任せてよ、ブラン」
ブランを抱きしめると、
彼は満更でもなさそうに髭を揺らした。

月が夜を照らすのを待ち、
あたしは森の奥に進んでいく。

はぁはぁ、という息の音だけが、
静寂の中に溶けていく。

チャイ、立派な魔女になるにはね、
ただ頑張るだけじゃないの。

自分を遠くから見つめる眼差しと、
辛い時笑い飛ばせるユーモアが必要なのよ。
ケセラセラ〜って歌ってね。

ママの声が木霊する。
優しいママ。
いつも忙しそうだったけれど、
夜は暖かなベッドの中で、おとぎ噺を読んでくれた。

その時間は、あたしの宝物だったんだ。

深い森は迷宮みたいで、
魔物が潜んでいるような気配がする。

おとぎ噺で読んだ魔物は、
頭に山羊みたいな捻くれた角が付いていて、
静かに笑っていた。

まるでこれから、
食べちゃうぞって言うみたいに……。

ぶるぶる……。

背筋が細かく震えて、身体が冷えてくる。
あたしはブランを抱えて、胸を張った。
鼻歌を口ずさむ。

「ケセラセラ〜!ね、ブラン」
「いい調子じゃねぇか、嬢ちゃん」

ブランの身体はあったかい。
歌ったことで、なんだか楽しくなってきちゃった。

森を抜けると、小さな芝生の空き地があった。
空には満天の星。
ソーセージ座が輝いている。

手のひらのガラス玉が光った。
その光は真っ直ぐに空き地の真ん中に。

小さなきのこが、白い息で光っている。

えぇっ!?見て、きのこ、光ってる。

「見つけやす過ぎない?」
「まぁ、親切が一番ってことで」

ブランと目を合わせて笑った。
彼は、少しだけ優しい目をしていた。

「よくやったな、チャイ」

ブランが、あたしの胸に頬擦りする。

……見つけたよ、ママ。

白く光るきのこは、夜の底で呼吸をしていた。
あたしは、宇宙のきのこにそっと触れた。

指先から、湿り気を帯びた熱が広がっていく。
心臓が、ドクンドクンと大きく脈打った。

一瞬、息が止まった。

これで一人前の魔女になる。
待ってて、ママ。

前回のソーセージ座流星群の夜、
行方が分からなくなってしまったママ。
あたし、絶対に捜し出すからね。

ママと同じ、金星のガラスの杖を携えて。





■セリフ
「見て、光ってる」
■三題
・宇宙
・スープ
・虫よけ

■お題
・ソーセージ座流星群

田原にかさんのお題は、文字数オーバーのため、
フレーズのみ引用させて頂きました🙂‍↕️



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