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琵琶湖で感じた、二種類の孤独

朝起きたら、湖に人がいなかった。
やけに静かで、雨の音だけが揺れている。
前日の喧騒が嘘みたいで、少しだけ怖くなった。


あれは、去年のゴールデンウィーク。
娘とふたりで7泊8日のキャンプ旅に出たときのことだ。
琵琶湖までたどり着き、家族連れや団体客でごった返すキャンプ場で、どうにかやっと場所を確保して眠りについた。

けれど、どうにも周りが騒々しい。
なんとなく嫌な勘が働いて、ケータイのお天気アプリを開いたら、天気予報は下り坂。
ああ、なるほどと理解して寝袋から抜け出し、テントの外に置いてある道具を車の中に仕舞い込む。
これでなんとかなるだろうと、再び寝袋に潜り込み、今度こそ深い眠りについた。


翌朝、気づくと、雨風がテントを揺らしている。
以前のキャンプでもっとひどいのに当たったこともあるから、このくらいはなんてことないだろうと思っていた。
けれど、やけに静かだ。
テントの外から聞こえてくるのは雨と風の音ばかり。なんだろうと思い、外を見た。

するとどうだろう。
そこはまさに、もぬけの殻。
人が出歩いてない、とかではない。
あれほどウジャウジャとサイトを埋め尽くしていた大小様々なテント群が、ほぼ皆無だった。
うちだけ、ポツン、なのである。

薄灰色の雲と空気に覆われて、場内はどこもかしこも水たまりが広がっている。
昨日はあんなに輝いていた琵琶湖も、くすんだように波打つばかりだ。
みんな車内に荷物をしまっているだけだろうと思っていたのに、まさかこうも揃いに揃って夜のうちに撤収してしまうだなんて思ってもいなかった。


私は、人混みが苦手だ。
都会の喧騒から逃げたくて、自然を求めて旅をする。
キャンプサイトを選ぶ時も、なるべく隣のサイトから離れたような、独立性の高いサイトを狙っている。
予算の都合で、安くて人気のここのフリーサイトに決めたものの、到着した時のあまりの人の多さと賑やかさに、「予算をケチるんじゃなかった」と後悔の念が混じった。

特に、「シングルマザーと娘」という女子ふたりだけという構成は、他の家族連れや団体の中に混じると急に心細さとよるべのなさに襲われて、孤独を感じることがある。
娘の前で、至って気丈に振る舞い、笑って肉を頬張っていても、心の中では周りの楽しげな雰囲気に当てられている。

だから本来、誰もいなくなった貸切りのようなサイトは、私が息をすることができる条件に適っている。
だけど、その時は少し、寂しかった。

関東を出発して、上高地、阿智村と経て、やっとたどり着いた、初めて見る琵琶湖。
昨日は混雑を尻目に一旦買い出しに出てしまったせいで、青空の下で輝く湖水を堪能する間もなく日暮れとなっていた。
はるばるやってきた琵琶湖を前に、今、目の前に広がっているのは、霞む景色と、声の途絶えたキャンプ場。
昨日とは違う孤独が、そこにあった。


しばらくして雨が弱まると、傘を差したままの娘が岸辺でひとり小さな石つぶを拾っている。
聞くと、もうそろそろおうちに帰りたいと言う。
ママもちょっとね、おんなじ気持ちだよ。

人がいなくなって、少し寂しくて、でもあまりに幻想的で少し息ができた朝のことを、たぶん私は、これからも思い出す。







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