【詩】傘の下の距離
雨が降る。
街の輪郭が、少しやわらいでいく。
足音が、隣に並ぶ。
傘をひらくと、
その中だけ、少し違う空気になる。
音がやわらいで、
外の気配が、少し遠くなる。
ひとつの傘に、ふたりが入る。
肩が、少しだけ近い。
触れそうで、触れない距離。
雨音が、そのあいだを静かに満たしていく。
言葉はないのに、
このままでいい気がした。
そう思った瞬間、
ほんの少しだけ、距離が生まれた気がした。
外の世界は変わらず雨なのに、
この小さな空間だけ、違う時間が流れている。
やがて傘を閉じる。
また、ひとりに戻る。
それでも、
さっきの距離だけが、どこかに残っている。
近づいたままでは、いられない時間。
次の詩へ →
【詩】音に滲む距離 |haru
