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AWSレイオフが証明した、会社都合を知る人と知らない人の百万円

退職する人間の大半は、自分が思っているより有利な立場にいることを知らないまま、その立場を手放して辞めていく。 Amazon Web Services Japan でレイオフ対象となったある人物の記録がある。2026年1月28日に通知を受け、退職日は5月25日。ハローワークに申請し、7日間の待機期間が終わると翌週から失業給付が始まった。給付日数は330日間。会社都合退職として処理されたから、こうなった。 これは特殊なケースではない。制度通りに動いた結果だ。問題は、同じように「辞めてほしい」と言われながら、この給付を受け取れなかった人間が、この国には無数にいるということだ。

離職票に書かれた2桁の数字が、百万円を動かす

日本の失業保険は、「なぜ辞めたか」によって給付内容が根本から変わる仕組みになっている。その分岐を決めるのが、離職票に記載される「離職理由コード」だ。 会社から退職を促された場合は「特定受給資格者」に分類される。離職理由コードは31番。このコードが付くかどうかで、以下のように設計が丸ごと変わる。

会社都合(コード31)の場合

  • 受給資格:離職前1年間に通算6ヶ月以上の雇用保険加入

  • 待機期間:7日のみ

  • 給付制限:なし(待機終了後すぐ受給開始)

  • 給付日数:年齢・通算加入期間に応じて最大330日

自己都合退職の場合

  • 受給資格:離職前2年間に通算12ヶ月以上の雇用保険加入

  • 待機期間:7日 + 1ヶ月の給付制限(2025年4月改正で2ヶ月から短縮)

  • 給付日数:通算加入20年以上でも最大150日

この差を実感値に変換しよう。 月収35万円の場合、失業給付の日額は賃金日額の60〜80%が目安で、6,000〜8,000円台が標準的な水準になる。自己都合では7日の待機に加えて1ヶ月の給付制限があるため、実質5〜6週間は収入がゼロだ。最初の1ヶ月だけで20万円超のロスが確定する。 さらに問題は総給付日数だ。会社都合で330日・自己都合で90日の場合、差は240日。日額7,000円で計算すると168万円の差になる。 「会社都合でお願いします」という一言と「自己都合で結構です」という一言の間に、この数字が静かに潜んでいる。

なぜ会社はこれを教えないのか

ここが構造の本丸だ。 失業保険の財源は雇用保険料——労働者と事業主が折半で積み立てたものだ。会社都合か自己都合かで、会社が支払う保険料は変わらない。つまり会社にとって、どちらのコードになるかは財務的にほぼ無関係だ。 にもかかわらず、人事担当者は慣行的に「自己都合」へ誘導する。理由は主に二つある。 一つは記録リスクだ。「会社都合」が書面に明記されることは、整理解雇の正当性を事後的に問われる口実になりうる。特に大規模な人員削減では、この記録が集合的な法的問題の材料になることを会社は警戒する。 もう一つは慣性の問題だ。「辞表を書いてもらう」という手順が人事実務の既定動作として定着しており、担当者も深く考えずに行使する。悪意より慣行の問題が大きい。

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