『バウムクーヘンの穴。それは哲学的で、』
わたしが子どものころ、
祖父がバウムクーヘンに対し怒っていた。
パサパサしてのどにつかえると。
怒らなくたっていいのに。
それに、こんなにおいしいのに。
わたしの中の祖父のポイントは1下がり、
バウムクーヘンにはその分の応援ポイントを1足した。
バウムクーヘン。
たしかに年輪のように見える。
名づけた人は天才だ。
それにしても、この中央の穴はなんだろう。
なんで今まで注意深く見なかったのか。
先日、バウムクーヘンをひとついただいた。
小袋に入ったやつ。
しばらくとっておいたのだが、意を決して袋を破いた。
すると声がした。
「よかったね、気づいて。食べる前に」
え?
「いままで、すぐに食べてしまっていただろう。
そうするとできないんだ」
何を?
「穴から覗くこと」
え。
まあそうか。
「うん。実はそこから、そっと覗くと、
いま気になっていることの未来が見える」
なんと。
「どうだい?おもしろいだろう?
ただ、食べてしまうと、穴が崩れて見えなくなってしまう」
それは……
気になる。
「さあ、どうする?」
わたしは宙をあおいだ。
壁掛け時計が目に入った。
秒針が大きな5から9まで移動した。
「どうだい、決ま・・・」
わたしはバウムクーヘンをかじった。
バターとはちみつの味がした。
わたしはバウムクーヘンにもう1ポイント追加した。
いいなと思ったら応援しよう!
ありがとうございます!