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特別寄稿(その2) 「欧州造船の最前線で――Lindø造船所と、闘いの日々」、Niels Roed

第2期:1987年〜2005年

Lindø(Odense)造船所時代

1987年、私は当時のMAERSKオーナーであったマースク・マッキニー・モラー氏の要請を受け、コペンハーゲン本社からデンマーク・フュン島にあるMAERSK所有の造船所、Lindø(オーデンセ)造船所へ異動しました。ここで私は、調達およびロジスティクスの責任者を務めることになります。

この時期は、私のキャリアの中でも最も刺激的で、やりがいに満ちた時代でした。同時に、極東の造船所との厳しい競争の中で、欧州造船業が生き残りをかけて苦闘していた時代でもあります。

Lindø造船所では、次の三つの施策を柱として生き残りを図りました。

  1. 生産能力の一部を低コスト地域(バルト諸国)へ展開

  2. デンマーク国内工場の近代化(ロボット化、CAD導入など)

  3. 造船用機器・部品の国際調達の推進

私は調達責任者として、これら三つすべてに深く関与しましたが、本稿では特に②と③について触れたいと思います。

これらを推進するため、私たちは世界の主要造船所と緊密な協力関係を築きました。最初は日立造船との協業から始まり、CADシステムの導入やロボット化を進めました。その後、この協力関係は韓国のSamsung Heavy Industries、米国のNewport News造船所へと広がり、調達やサプライチェーンの国際化も含めた連携体制へと発展しました。

私たちはこの枠組みを「Global Shipbuilding Family」と呼んでいました。そこから得られた知見は非常に貴重なものでした。なかでも米国のNewport Newsは、伝統的に海軍艦艇を建造してきた背景から、他の造船所とは大きく異なるコスト構造を持っており、商船市場への参入に苦労していました。

一方、韓国の造船業は急速に成長し、近代的な造船技術と低コスト・高生産性を巧みに融合させ、結果として欧州、さらには一部の日本の造船業をも凌駕する存在となりました。日立造船は最後までLindø造船所にとって最も親しいパートナーであり、設計力と品質では互いに一歩も譲らぬ存在でしたが、それでもデンマークでの造船事業継続を支えるには至りませんでした。

欧州の造船業はその後ほぼ姿を消しましたが、今日では海軍艦艇を建造できる能力を失ったことを、政治家たちがようやく悔やむようになっています。

2012年にLindø造船所での建造は終了しましたが、今もなおMAERSKの船隊には多くの「Odense建造船」が現役で残っています。乗組員たちが、これらを「最も品質の高い船だった」と呼び続けていることは、私にとって大きな励みです。果たして当時、「総保有コスト(Total Cost of Ownership)」は本当に正しく評価されていたのか――この問いは、今も私の中に残っています。

(つづく)

・・・・・
Niels Roed(ニールス・ロッド)

MAERSKにて50年以上にわたり購買・調達・物流の中枢を担い、デンマーク・Lindø(Odense)造船所では調達・ロジスティクス責任者として欧州造船の最前線に立つ。
近年は中国・上海を拠点に、港湾事業およびコンテナクレーン製造に従事。
現場と経営の双方を知る、稀有な実務家の一人である。

国や文化の違いを越え、常に現場と人を尊重する姿勢を貫いてきた。
調達とは単なる価格交渉ではなく、信頼の積み重ねであるという信念は、その長いキャリア全体を通じて一貫している。

本寄稿の背景や、Roed氏の歩み・人となりについては、
AMCO-知見Lab にて紹介している。

https://qs07n.hp.peraichi.com/

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