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最初の数日は、同じ説明を何度もしていました

会社の月次集計を自動化してもらおうとしたときのことです。うちのグループには自動車学校があり、毎月の検定結果を帳票から表計算ソフトに手作業で転記して集計する仕事がありました。

これをAIに任せようとしたら、最初の成果物はひどいものでした。

役割の違う4種類の帳票を、1つの表にまとめて混ぜてしまったのです。

同じ「区分」という列でも、帳票によって中身の意味がまったく違うのに、です。

「この列は帳票ごとに別物だから、表も分けてほしい」と指摘して、作り直してもらいました。

ほかにも、社内の言葉が通じない、判断基準を毎回説明し直す、前に言ったことを覚えていない。新しい道具に期待しすぎたかな、というのが数日目までの実感でした。

1週間後、寝ている間に仕事が進むようになりました

ところが1週間ほど経って、様子が変わりました。

夜に依頼を並べて寝たら、朝起きたときにはセミナー資料の構成案や経理データの点検プログラムなど、7つの仕事が進んでいました。

しかも「ここから先は社長の判断が要ります」という確認リストつきで、勝手に踏み込んではいけない領域の手前で、きちんと止まっていました。

体感としては、明らかに賢くなっています。

それで気になって調べてみたら、意外な事実が分かりました。AIのモデル自体は、この1週間で何も変わっていなかったのです。

進化したのはAIではなく、渡した文脈の量

では何が変わったのか。変わったのは、私がAIに渡した文脈の量でした。

このツールには、指示や判断基準をファイルとして残しておくと、次の仕事のときにそれを読んでから動く仕組みがあります。

私が一度指摘したこと、会社の用語、事業の背景、やってはいけないことのリストが、使うほどに資産として積み上がっていきます。

冒頭の集計の失敗も、「この帳票はこういう構造だ」と一度教えたら記録に残り、以後は同じ間違いをしません。

最終的には、手作業の集計結果と全数値が一致するところまで持っていけました。

AIが育ったのではありません。文脈が積み上がっただけです。

この構造には、見覚えがある!

はっとしました。

この構造には見覚えがあります。新人育成とまったく同じなのです。

入社1週間の新人が戦力になるかどうかは、本人の能力だけでは決まりません。会社側に、判断基準が言語化されているか。

仕事の型がマニュアルとして残っているか。先輩の指摘が本人のメモではなく、組織の資産として蓄積される場所があるか。

そうした「文脈を渡す仕組み」の有無が、立ち上がりの速さを左右します。

「うちの新人は使えない」と嘆く会社の多くは、実は文脈を渡す仕組みのほうが欠けています。

私がAIに対して最初の数日やっていたことも同じで、道具の性能に文句を言う前に、こちらが渡すべきものを渡していませんでした。

暗黙知を言語化できる会社が、AIでも人でも強い

当社の離職率が12%から3%に下がった過程でやってきたことも、根っこは同じです。人の頑張りや記憶力に頼っていた部分を、一つずつ言葉と仕組みに移してきました。目の前の課題を解決して、型にする。

その繰り返しです。

AI導入の相談をいただくとき、話題はどうしてもツール選びに寄りがちです。でもこの1週間で確信したのは、成否を分けるのはツールではなく、自社の暗黙知をどれだけ言語化して渡せるかだということです。

そしてそれは、AIが登場するずっと前から、人を育てるのが上手な会社が当たり前にやってきたことでもあります。

皆さんの会社では、新しく入った人に最初に渡す「文脈」を、どんな形で用意していますか。

毎日ワクワクしていますが、ちょっと立ち止まってまとめてみました。

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りえこ社長|輝ける会社をつくる人 ありがとうございます。読書に使います!