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まったく売れなかったサービスを「導入1,000社」に伸ばすまでにやった3つのこと

僕はスタメンという会社の社長をしています。

2016年に創業し、2020年には上場を達成。社員数は200人に迫るほどになっています。

主力事業はTUNAGという「組織づくり」の支援サービス。ありがたいことに、今では1,000社以上の企業に導入していただいています。

ただ、起業した当初は、マジで無風でやばかったんです!!

当時すでに社員は10名以上いました。それなのに年間の売上は600万円ほど。

ヤバい!どうしよう……!! 当時はめちゃくちゃ焦っていました。

初期スタートアップの「営業」は難しい

何がダメだったのか?

いちばんの原因は、やはり「営業が難しい」ということでした。創業期の会社はどこもそうだと思いますが……。

どれだけサービス自体が優れていたとしても、導入実績がほとんどない中で、新規の契約を取るのはめちゃくちゃ難しいですよね。

特に僕らの場合、そもそも商材自体が「営業の難易度が高い」サービスでした。

スタメンが提供しているのは「組織づくり」の支援をするSaaS。「熱量の高い組織」をつくることで、離職率の改善や売上、利益のアップに繋げる、というサービスです。

もちろん、僕らとしては「絶対に必要だ!」と思ってやっています。

ただ、お客さんからすると「あったら嬉しいけど、必要不可欠なサービスではない」んですよね。「組織づくり」って、いきなり売上がアップしたり、コストダウンに繋がったりするわけではないので。

そのため創業期は、営業をかけても断られ、かけても断られ……という時期が続いていました。

ただ、それでも営業で3つのポイントを実践したことで、事業はだんだんと軌道に乗っていきました。

今回のnoteでは、そんなスタートアップ初期の営業術について、お話しできればと思います。

これから起業したい、事業をつくりたいと考えている人にとって、少しでも参考になれば嬉しいです!

これは画期的なサービスに違いない!

そもそも、僕らが最初に始めた事業は「福利厚生サービス」でした。

きっかけは2016年の春。共同創業者と2人、中目黒のカフェで「どんな事業をやるか?」を話し合ったことでした。

テーブルの真ん中には、ルーズリーフが1枚。そこには10個ほどの「事業アイデア」が箇条書きにしてありました。2人でそれを睨みながら、それぞれの事業の成長可能性をあーだこーだと話し合いました。

その中で、共同創業者が「イチ推しの案」として持ってきて、かつ僕自身も「いちばん伸びそう!」と感じたアイデアがあって。

それが「福利厚生のあり方をテクノロジーで刷新することで、組織の活性化に繋げよう」というコンセプトだったんです。

2016年当時、福利厚生の市場自体はとても伸びていました。ただ正直なところ、僕らが消費者として「いいな!」「使いたい!」と思える魅力的なサービスは少なかったんですよね。

福利厚生サービスの形として「今の時代に合っていない」ものが多いんじゃないかという仮説があった。

従業員の方がスマホで気軽に利用しやすく、満足度も高い。かつ、企業にとっても提供価値を実感できるーー。

そんなサービスが、まだ世の中にはありませんでした。

そこで僕らは、

福利厚生のサービスのあり方を、現代的な感覚でアップデートすることができれば、画期的なサービスになるんじゃないか? 

と考えた。

こうして、これまでに無い、新しい福利厚生サービスをリリースすることに決めたのです。

まったく売れない

ただ!!

いざリリースしてみると、これがまったく売れませんでした。

商談のアポだけはたくさん取れました。お客さんと話す中での感触もいい。サービスの説明をすると「いいね!」「面白そう!」と言ってもらえます。

しかし、いざ契約の具体的な話に移ろうとすると、話が前に進まない。ぜんぜん受注に繋がらないんです。

理由はシンプルに「販売価格が高かったから」です。

僕たちが当時開発していた福利厚生サービスは、いわゆる「カフェテリアプラン」というもの。従業員が自分のニーズに応じて、福利厚生のメニューを自由に選択できる形態です。

このやり方で運用する場合、従業員に「ポイント」や「補助金」を付与する必要があって。

そうなると、そうしたポイントや補助金をまかなうために「原資」が必要になるわけです。

プラットフォームの利用料にプラスして、福利厚生の「原資」をお客様に予算捻出してもらわなきゃいけないーー。

その結果、どうしても価格が高くなってしまい、なかなか契約してもらえなかったんです。

半年間かけて開発した渾身のサービスだっただけに、かなりショックでした……。

3ヶ月でピボット

成果が全く出ない中で、どうするか??

悩んだ末、僕らは「ピボットする」ことを決断しました。リリースから、たったの3ヶ月での大きな意思決定です。

そのまま粘るという選択肢もあったのですが、それではうまくいかない気がしたんですよね。

そこで、福利厚生ではなく「もともとある社内制度の活用」にシフトすることにしたんです。

多くの会社には「以前から存在しているんだけど、うまく活用しきれていない社内制度」というものが存在します。

例えば、

・社内表彰
・感謝を伝え合う「サンクスメッセージ」
・新入社員を歓迎する「ウェルカムランチ」
・定期的な1on1
・経営層から社員への「トップメッセージ」

といったもの。

これらが形骸化してしまい、うまく運用できていない。そのために組織が冷え切ってしまっている……ということがよくあります。

プラットフォームを提供することで、こうした「社内制度の活用をサポートする」サービスを作ろうと方針転換したんです。

つまり、「組織のエンゲージメントを高める」というコアな部分はそのままに、サービスコンセプトを変えることにした。これなら福利厚生と違って、原資がかかりません。

価格を安く抑えることができるので、今度こそ契約につながるはずだろう! 

そう考えて、第二のスタートを切ることにしたんです。

営業で意識した3つのポイント

しかしーー。

それでも営業は難しく、なかなか契約が決まりませんでした。

冒頭にも書いたように「組織づくりの支援」というサービスが、そもそもお金を落としてもらいづらいビジネスモデルではありました。どうしても「定量的な価値」を短期で示しづらいわけです。

さらに、そもそも導入事例が少ないことから「こういう効果が出ていますよ」と、成果を「実績」でアピールすることも難しかったんです。

そんな状態から、どうやって1,000社を超える導入まで持っていったのか?

いま振り返ると「これが効いたな!」というポイントが3つほどあるので、ご紹介できればと思います。

当時のことを振り返りながら、以下に解説していこうと思います!

①自分たちで自社サービスを使い倒していた

実績0のフェーズで、どうやってサービスの価値を信じてもらうか?

いちばん大事だったのは「サービスを自社でひたすら使う」ことでした。

当時の僕らは、組織運営のほとんど全てを、自社サービスでやるようにしたんです。エンジニアも含めて、みんなにとっての当たり前の「インフラ」にしていた。

その中で、自分たちの組織エンゲージメントが高まっている実感があったんです。

営業では、自社での活用例を話すんです。「こうやって活用したら、僕らの組織は良くなりましたよ!」と。

いわば自社での成果が「最強の導入事例」として機能したわけです。

実際、コロナを乗り越えられたのも、「働きがいのある会社ランキング」で1位に選ばれたのも、自社のツールがあったからこそでした。

(↓こんな感じで使っていました!懐かしい……。)


初期は全員がTUNAGでデイリー日報を書いて、僕はその全てにコメントを書いていました……!


もちろん「ここはGoogleを使ったほうが便利なんじゃない?」という機能もありましたし、エンジニアから「もっと別のツールを使いたい」と言われることもあった。

それでも「いや、多少の不便はあっても、すべてTUNAGでやるんだ!」と決めていました。

その結果、自社サービスの「価値」をみんなが心から信じられるようになったんです。

「共感」を生めるかどうか?

営業における最強の武器はなにか? 僕は「共感」だと考えています。

提案する側と、提案を受ける側。双方が「同じ問題意識を持っている」ということが大事で。

お互いに同じ悩みを抱え、それを本気で解決しようとしているかどうか。「ほんとわかります。これ難しいですよね……!」と課題を共有できるかどうか。

そこが一致していないと、相手からの信頼は得られません。

だから「組織づくり」のサービスをお客さんに提供するのなら、僕ら自身が、本気で組織づくりに取り組んでなきゃいけないんです。

組織づくりに悩んで、試行錯誤する。その中で、自社のツールを使って、成功体験をつくるーー。

自分たちにそういう「実体験」がないと、お客さんの共感は得られないんです。

(ちなみに、自社のツールを使うだけじゃなく、当時から経営会議の議題の半分は"組織について”でした。)

実績がほぼ0の状態からサービスを広げていく上で、これはめちゃくちゃ大事なポイントでした。

②「経営層」に限定して営業をかける

契約をしてもらう上で「誰に営業をかけるか」という戦略も非常に重要でした。

サービスのコンセプトに、いちばん共感してくれる人は誰か? 価値を理解してくれる人は誰か?

商談の内容はもちろん、そこを見極めないと、取れる契約も取れないわけです。

僕らの場合、それが「経営者」でした。

どうしても現場レベルの人に、本当の意味で「組織づくり」の価値を理解してもらうのって難しいんですよね。やっぱり「目の前の売上やコストダウンに繋がるか」が重視されてしまうので。

実際、最初は現場からのボトムアップで商談をしていたのですが「必要なのはわかるけど、わざわざお金を払う価値ってある?」と、断られてしまうことが多かった。

一方で、経営者だと「組織づくりには投資する価値がある」を理解してくれる人が多いです。

組織のエンゲージメントを高めることが、長い目で見たときに利益につながる。トップとして会社を動かす中で、そうした実感値を得られているからです。

とくに組織づくりへの感度の高い、いわゆる「アーリーアダプター」的な経営者さんは、率先して話を聞いてくれました。

導入事例がなくても、サービスのコンセプトに共感してくれて、契約を決めてくれたんです。

こうした経験から「いかに経営者、もしくはそこに近い層の方と会えるか」の戦いなのだとわかってきました。

経営者の集まるセミナーやカンファレンスにはガンガン足を運びましたし、人づてに経営者の方を紹介してもらうこともありました。ときにはFacebookなど、SNSでなんとか繋がったりもして。

この頃はもう、めちゃくちゃ泥臭いことをたくさんやりました。

成果を出して「数珠繋ぎ」で紹介してもらう

上でも書いたように、初期は成功事例がほとんどありません。運営のノウハウもまだまだ弱い。そんな中でも、経営者と何とか接点を持って、エモい営業をかけ続けるーー。

すると次第に「じゃあ、やってみるか!」と契約を決めてくれる粋なお客さんが、チラホラ出てきました。

そうなったら、もう絶対に失敗できないんです。

「ぜんぜん成果が出ませんでした」と、期待を裏切るわけにはいかない。

お客さんに対して申し訳ないのはもちろん、そこで「成功事例」を作れないと、永遠にサービスは広がらないからです。お客さんの信頼を得て「数珠つなぎ」でお客さんの紹介経由などで導入してもらえるかどうかが大きな鍵になると考えました。

ならば「成果を出すことにコミットしよう!」と考えたわけですがーー。

組織づくりには、時間がかかる

組織づくりの難しいところは、どれだけ頑張っても「すぐに成果を出せる」とは限らないことです。

組織づくりに力を入れることで、社内に「エモい瞬間」が生まれて、会社の空気が良くなってくる。社員の皆さんが喜んでくれて、最終的には離職率が下がったり、採用が増えたりと、成果が目に見えて表れてくるーー。

これが理想です。

ただそういう成果って、すぐに現れるものではないんです。

ツールを入れたからといって、1ヶ月、2ヶ月で効果が出るものではない。組織の改善には「年単位」で時間がかかるわけです。

そうなると、せっかく導入してもらえても、成果が出る前に解約されちゃうこともやっぱりあるんですよね。

初期にサービスを広げていく上で、これは非常に難しい問題でした。

③あえて「1年契約」をマストにした

じゃあ成果を上げるためには、どうすればいいのか?

僕らが考えたのは、全てのお客さんに、原則として「年間契約」と「全社導入」をお願いすることでした。「月契約」と「部署導入」はお断りすることにしたんです。

「1年間は絶対に続けてくださいね」という、"ストロングスタイル”で営業することを決意したわけです。

これの何がいいかというと、1年間の中で「粘れる」ことです。

最初はうまくいかなくても、1年の中で改善できることがたくさんあります。例えば明らかに機能が足りないときに「1週間後にこの機能を作りますね」は難しい。

でも1年契約であれば「半年後に機能を作るんで、とりあえず先にこれをやりましょう!」と言えるんです。制限時間を延ばすことができる。

そうやって耐えることで、万が一「このサービス微妙かもな」というスタートになってしまっても、1年間の中で挽回できます。そうして契約更新日には「更新お願いします」「もう1年頑張りましょう」と言ってもらえるようになるわけです。

「単発ならやるんだけど……」の誘惑

とはいえ、当たり前ですが「年間契約」と「全社導入」の両方をマストにすると営業がさらに難しくなります。

商談にいくと「単発ならやるんだけど……」「部署単位での導入ってできないの?」と何度も言われます。

そのたびに心が揺らぎます。

だって、当時の年商はわずか600万です。それなのに、社員は10人以上いました。

現場からは「このお客さんが1ヶ月ならやるって言ってます!」という報告が上がってくる。でもそこで「いや、うちは年間契約しか受け付けていないから」と言って跳ね除ける……。

これはめちゃくちゃ苦しかった。

現場の営業メンバーが、何とかして「成果を出そう」と奮闘してくれていることが分かるからこそ、受け入れてあげたくなる気持ちも出てきます。

ただ、導入が決まっても「成果」を出せなけば意味がありません。「月契約」「部署導入」にシフトしたくなる気持ちを、グッと我慢しました。

一方で、目の前の売上がないと会社は潰れます。営業は難しいけれど、それでも何とか売って、売上は立てるーー。

ギリギリの状況で、なんとかこれらを両立させる。辛い時期でしたが、粘り切るしかありませんでした。

業界のリーディングカンパニーへの導入が決まる

こうした営業を地道にやっていると、だんだんと契約が増え、成功事例も出てきました。お客さんからの信頼を得られるようになってきた。

大きな転機になったのは、「外食産業」の間で、僕らのサービスが広がり始めたことです。

WIRED CAFEさん(カフェ・カンパニー株式会社)やDEAN & DELUCAさん(株式会社ウェルカム)、T.Y.ハーバーさん(株式会社タイソンズアンドカンパニー)など、トップブランドの企業さまとの契約が、立て続けに決まり始めたんです。

これも「経営層にダイレクトに営業をかける」というやり方がハマったからこそでした。各社の社長の皆さんが、僕らのサービスのコンセプトに共感してくれたんです。

これが大きな成功事例になった。

そして飲食業は経営者さんどうしの繋がりが強いことから、業界全体に「口コミ」でサービスが広がっていきました。

「成功事例を出して、数珠繋ぎに広げていこう」という戦略が、まさに功を奏したわけです。

また、業界トップ企業の組織づくりを支援する中で「いい組織とは何か?」ということを、僕らが学ぶきっかけにもなりました。この経験が、サービスそのものの進化にも繋がったんです。

いわばお客さんに育ててもらうような形で、僕らのサービスは成長していきました。

「個人の成功」を「チームの成功」にできるか?

こうして順調にお客さんは増えていき、スタメンは2020年には上場を達成。導入数は1,000社を超えるまでになりました。今では年商50億円も射程圏内になってきています。本当にありがたい限りです。

外食、物流、小売など、主に「ノンデスクワーカー」のお客さんに価値を感じていただいています。

「年商600万」のどうしようもなかった時期から考えると、よくここまで来れたな、と思います。

振り返ってみて思うのは、小さな成功を「点」で終わらせず、「面」に広げることが大事だった、ってことです。

初期のフェーズではがむしゃらに動いて、なんとか大きな企業さんに契約していただきました。

しかし、そこでの成功が「点」で終わっては意味がありません。単なるラッキーになっちゃいます。

大事なのは、その先の「大きな成功」にどうつながるか? ということ。

そこで僕らが徹底していたのは、誰かが成果を出したら、そこでの知見を社内のみんなにシェアすることです。次の誰かがそれをマネして、また成果を出す。

社内にノウハウが蓄積されることはもちろん、「アイツができたんだから、俺もできるだろう!」と、チームの基準値をどんどん上げていく。これがすごく大きかったんです。

マッキンゼーやボスコン出身のすごい経営者だったら、「戦略を描いて、その通りに実行する」みたいな、スマートな戦い方ができるかもしれません。

でも、僕らはそうじゃない。完全なチーム戦でした。

がむしゃらに動いて、なんとか小さなチャンスを掴んで、それを少しずつ大きくしていく。「個人の成功体験」を「チームの成功体験」にできたことが、最終的にはサービスの拡大につながったのだと思います。


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