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[796文字]気配りゼロ伝説

妹の夫は、とにかく気が利かない。
いや、本人に言わせれば「自然体でいるだけ」らしいのだが、自然体がここまで他人への配慮を欠くものかと、毎回驚かされる。

先日、母のジャズライブがあった。
とはいえ母はジャズ歌手ではなく、近所のジャズ教室の熱心な生徒。希望すれば立派な生バンドを従えて10曲ほど歌わせてもらえるという、豪華な発表会である。母は緊張しつつもどこか誇らしげで、私としては「よし、今日は応援しよう」という気持ちでいた。

母は妹に「来てね」と声をかけていた。妹の夫は、呼ばれなくても必ず付いてくるタイプなので、今回ももれなく同行。まあ、それはいつものことなので覚悟はしていた。問題はその後だった。

会場に着くと、母が「あなたたち姉妹のために」と気を利かせて確保してくれていたテーブル席に、堂々と妹の夫が座っているではないか。
母の友人たちはご高齢なのでテーブル席を優先し、私はというと、背もたれのない、やたら高いカウンター席に2時間弱。ライブ中は足をブラブラさせながら、椅子から落ちないよう全神経を注いでいた。

そして彼は……というと。
私の10歳年下であるにもかかわらず、こちらに席を譲るそぶりなど1ミリもない。
普通、「お姉さん、どうぞ」と言うものではないのか?
いや、言わないとしても、身体を少し浮かせて「席替わります?」くらいの気配りはあってもよいのではないか?

しかし彼は、終始どっかりと座り、まるで自宅のソファのように微動だにしなかった。ライブ後、私が足をさすりながら立ち上がる横で、満足そうに「いや〜良かったね」と言っていたのには、さすがに血圧が上がった。

まあ、気が利かないにもほどがある。
だが、帰り道にふと思った。妹があれだけのんびり生活できているのは、あの夫の「気づかなさ」による余計なストレスのなさゆえなのかもしれない。

……そう思った瞬間、私は気づいたのだ。

いややっぱり、ただの鈍感である。

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