【せりふ三題噺/酸性夕立リングピロー】
お題
せりふ
「わ!ふっかふか!」
キーワード
酸性
夕立
リングピロー
目撃
ジャージ姿の中島は、団地が見える空き地でベンチに座り、大学に行くから夜は外で、と母親にLINEを送った。
中島は、尻を上げて首をベンチの最上段に凭れて、スマホをズボンのポケットにゴソゴソと終った。
すると、太陽が空を暖色に染め上げようと傾いたのと共に、飛行機雲がその空を裂いていくのと目が合った。
中島はしばらく呆けていると、近くにある川へと近づく階段から快活な甲高い声と足音が聞こえた。
「あーーー!!わ、ふっかふか!」
中島は、静寂な環境からの落差に心臓が跳ねて、その勢いでベンチから離れ、階段から下の様子を見に行った。
中島からは、アスファルトの岸と川を守る柵、そして濡れたクッションを持った小学生ぐらいの女の子が土手で飛び跳ねている光景が目に入った。
そして彼女は、そのクッションを床に投げつけ、踏んで拾ってまた投げてを繰り返していた。
中島は、階段を降りた。彼女の行動に対して興味はあったが、話しかけて叫ばれたら面倒でどっちつかずになり、子どもを避けながら鼻の向きを川に合わせて瞳だけで彼女をチラチラと見ていた。
柵の隙間に、川底で寝ているのか、人っぽい黄色い足の裏と右腕の手のひらがこちらに向いていたのが見えた。その手の人差し指にダイヤの指輪があり、箱形の入れ物が柵の支柱に引っかかってある。川の流れが微動だにしない黄色の腕をチリチリと鳴らしている。
中島は急いで、スマホを取り出して電話のアイコンをタップした。だが彼は、電話が面倒くさくて苦手だった。110と打つのが人生で初めての中島は口で何を言うべきか、パクパクと反芻する。その間に、彼女が遊んでいるクッションがリングピローだいう事をググった。文言が固まると、明日も平穏に生きれるのかが不安になった。通話ボタン、ホームボタン、どちらも押せずに自分を薄黒く映した。中島は結局、母親へのLINEが嘘のため、警察の聴取から実家の連絡先などを聞かれそうとかそんな理由で、家で揉めるのを避けた。中島はただ朽ちていく川から溢れた人間の一部と子どもの一人遊びをじっと視界にとらえ、見ている自分が存在している事実を恨んでいた。
中島の肩に冷たい水滴が落ちて上を見る頃、飛行機雲が夕方を冷ましていた。夕立のきっかけが通報のきっかけとなった。川が偉く速くなる。中島の右ポケットで鋭く不規則なバイブレーションが骨を伝って爆音に聞こえた。中島は手のひらサイズの液晶に映った、強い酸性雨による特別警報という赤文字を見ると、近くの小さい橋へリングピローを持った少女を走って運んだ。
川の様子を見ると、黄色い脚や腕は見えず、白いレースの切れ端とホースと大量の髪の毛が川底で溜まって中島たちがいる橋で洪水を起こした。中島は、サイレンが聞こえてくると、強烈な眠気によって気を失った。微かな意識の中で少女の足音が遠ざかるのが聞こえたが、中島は何も言えなかった。
完
1200文字を超えたので、終わります。
もう少し台詞のやり取りを増やしたくて1200文字まで粘りましたが、一言だけという結果になりました。あまり話が合わなそうだなと中島側が思ってそうで少女に声をかけず、終了。そこが心残りです。
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