ビー玉の町
「あらすじ」空から降ってきたラムネの玉
暑い夏の午後いたずら好きな雲がラムネの瓶をひっくり返してしまい町中にビー玉が降りそそぎます。
そこには、昨日見た夢や明日食べたいアイスなど誰かの心の景色が写っています。
好奇心旺盛な少年ハルが「からっぽのビー玉」を見つけて
引っ込みじあんの少女ナツと一緒に持ち主を探す物語
本文
ハルに手をひかれナツは光り輝く坂道を登って行きました。
足元には、数えきれないほどのビー玉が転がっています。
「ねえハル見て。このビー玉中で何かが動いているみたい。」
ナツが足元に落ちていた、淡い薄紫のビー玉をそっと拾いあげました。
中をのぞくと小さな雨雲がしとしと雨を降らせています。
「本当だ!こっちは、セミが鳴いているぞ」
ハルが拾った黄金色のビー玉からは、
ジリジリと夏の日差しのにおいがしてきました。

「この町にあるのは、全部だれかの夏のカケラなんだ。」
ハルは、得意気に言いましたがふと見ると
ナツが少し寂しそうな顔をして立ち止まっていました。
「どうしたの?ナツ」
「‥わたし自分のビー玉が無いかもしれない。みんなみたいにキラキラした思い出閉じ込められないから」
ナツは、うつむいて、自分の影を見つめました。
引っ込みじあんな自分には、この輝く町にふさわしい宝物なんてないと思ったのです。
その時ハルがナツの前にしゃがみ込みました。
「そんな事ないよ。ほら足元見て」
ハルが指差した先。ナツの影が落ちている地面には、透明で、でもほんの少しだけ虹色が混ざった、一番静かに光るビー玉が転がっていました。
「それは、ナツが勇気を出して僕と一緒に歩いてくれた「今のひかり」だよ。」
ハルはそう言うとその透明なビー玉をナツの手のひらにのせました。
「あ‥」
ナツがそのビー玉を太陽に透かしてみると
そこにはハルと手をつないで、ほんの少しだけ
微笑んでいる自分の姿が写っていました。
「チリン」
どこかで風鈴が鳴りました。
気づくと、あたりを包んでいた光のうずは消え
いつもの夏の午後が戻っていました。
「‥ハルありがとう」
ナツは、もううつむいていませんでした。
ポケットの中には、あの時拾った勇気が
今もビー玉のように涼しく、大切にしまわれているような気がしたからです。
「また、明日も遊ぼうな」
ハルの元気な声が夏の青空に高く溶けていきました。

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