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【小説】願うなら、代わりに何かを壊せ。──言葉を使う少年の物語

 「黙れ」と、少年が言った瞬間。
 教室中の音が、すうっと消えた。

 風も、時計の針も、息づかいすら止まった。
 ただひとつ──彼の目だけが、揺れていた。

 震える手のひら。
 冷たい汗が、指をつたって机に落ちる。

 「また、やっちまった……」
 心の声まで、壁にぶつかって跳ね返ってくるようだ。

 そのとき、誰かが言った。
 「おまえ、やっぱり“あっち側”の人間なんだな」


第1章 ── 言葉の檻




 心臓が、早鐘を打つ。
 ――バレた。
 いや、最初から隠しきれてなんかいなかった。

 少年の名前は、ユウ。
 十四歳。ふつうの生徒。……の、フリをしている。

 彼の家系には、ひとつの秘密があった。
 「言葉を“使役”できる力」。
 たとえば「動け」と言えば、石でも木でも跳ねる。
 「消えろ」と言えば、壁が溶けていく。
 でもそれは“正しく”使わなければならない。

 そう、祖父が言っていた。
 ――『言葉は刃だ。振り回すな。握って切れ』。



 だけど。
 今日だけは我慢できなかった。

 いじめられていた子が、机に顔を押しつけられて泣いていた。
 教室中が、見て見ぬふりをしていた。
 先生は、職員室。誰も止めない。

 ユウの手が勝手に震えた。
 そして……
 「黙れ」と、口に出した。

 ──結果、犯人のグループは全員その場で口が閉じた。
 口だけじゃない。身体も固まり、白目を剥いて倒れた。



 ユウは立ち尽くしたまま、吐き気と恐怖をこらえた。
 「これは……正しいこと、だったのか?」
 そんな言葉が、喉元に突き刺さる。

 だが教室の後ろから、ひとりの生徒が立ち上がる。
 長い前髪の奥から、笑っているような目。

 「やっぱりな。キミも“言葉の民”だったか」

 その声に、ユウの背筋がぞくりと冷たくなる。



 ──彼の“力”を知る者が、ついに現れた。


第2章 ── 転校生




 次の瞬間、ユウは教室を飛び出していた。
 自分でも気づかないうちに、靴が廊下を叩いていた。

 心臓がうるさい。
 鼓膜の裏側から、ドクンドクンと響いてくる。

 「……見られた」
 口の中がカラカラに乾いている。
 冷たい水が欲しい。でも、喉が飲み込むのを拒んでいた。



 階段を下り、非常口の前で息を吐く。
 足元には、小さな落ち葉が舞っていた。
 季節は春なのに、妙に色褪せて見えた。

 背後から、足音がする。
 コツ、コツ……ゆっくりと。
 わざと聞かせるように。



 「逃げ足、速いんだな」
 あの声。教室で聞いた、低くて落ち着いた声。

 ユウは振り返らない。
 代わりに、小さく訊いた。

 「……何者だよ」

 「カイ。今日から、この学校に来た」

 「それだけかよ」

 間があった。
 少しの沈黙が、空気を重くする。

 「……そして、“同じ力”を持ってる」



 ユウは振り向いた。
 その目が、嘘じゃないことを悟った。
 カイの背後で、風が一瞬だけ止まった気がした。

 「言葉の力ってのは、呪いみたいなもんさ」
 カイはポケットに手を突っ込んだまま、言う。

 「正しく使えないなら──使わない方がマシ」



 ユウの喉の奥が熱くなった。
 何かを言い返そうとしたけど、声が出なかった。

 そのとき。
 カイがポケットから小さな紙片を取り出した。
 折りたたまれた、古びたメモ。

 「これ、読めるか?」



 ユウは、受け取って広げた。
 そこには、こう書かれていた。

 《この言葉を発した者は、真実を失う》

 ──それは、「祖父の日記」にも書かれていた文言だった。


🔒【ここから有料】──第3章:禁句

「ねぇ、ユウくん。
“本当に正しい言葉”って、どこにあると思う?」
カイの声は優しかった。でも、怖かった。

ユウは答えられなかった。
答えたら……自分じゃなくなりそうで。

→ 有料パートでは、物語が一気に加速し始めます。
「言葉の力とは何か」「夢とは何か」「正しさとは誰のものか」
そのすべてが、ユウの“選んだ言葉”に委ねられていきます──




🟥【ここから有料】──”続きを読まずにいられない”あなたへ

この先の物語では、
少年ユウが夢に近づくごとに「正しさ」を見失っていく姿が描かれます。

読むことで、
✅ あなたの言葉に“力”が宿るかもしれません。
✅ 「正しい言葉とは何か?」という問いが、あなた自身に返ってきます。

読まないなら、それでも構いません。
でも、もしあなたの中に──
**「自分の言葉を信じたい」**という想いがあるなら。

続きを、ぜひ。


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第3章 ── 禁句(きんく)

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