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第53夜『静かな道に、ひとつだけの足音』

はじめに


いやだな〜……こわいな〜……
この話はね、ある友人が「高校のときに体験した」って話なんですよ、えぇ……。

彼、地元の山のふもとに住んでてね……夜はもう、音ひとつしないくらい静かなんです。
虫の声も、風の音も、なにもかもが止まったような……そんな場所。

──でもね、
ある日を境に「ひとつだけ音がするようになった」って言うんですよ……。

えぇ、そう……「足音」です。
しかもね、それが「自分の足音じゃなかった」って言うんですよ……あぁ……いやだなぁ……。


本編


その日、彼は部活の帰りで遅くなってね。
田舎だから電灯も少ない。
山沿いの道を、自転車押しながら歩いて帰ってたんです。

静かでしたよ……ほんとに。
自分の息づかいが、風の音に混じって聞こえるくらいで……。

……と、カツ……カツ……って音がね、後ろから聞こえてきたんですって。
「誰か歩いてるのかな?」って思って、振り返ったけど──誰もいない。

まぁ、気のせいだろうと歩き出す。
するとまた……カツ……カツ……と、後ろから……。

「ん?」と思って立ち止まると……その音もピタッと止まる。

……これ、なんなんだろう?と不思議に思いながら、また歩き出す。
そしたらまた、カツ……カツ……カツ……。

もうね、怖くなって振り返るんだけど……やっぱり誰もいない。
でもね、音だけは、確かにそこにあるんです。

で、ふとね、気づいたんですって。
自分が歩くと、後ろから「ワンテンポ遅れて」もうひとつの足音がついてくる……って。

その瞬間、ゾッとしたそうです。

彼は、もうたまらず走り出しました。
でもね……その足音も、一緒に走るんです……カツカツカツカツッ‼️って。

──怖いのは、音だけじゃなかった。

彼、家の玄関までなんとか着いて、振り返ってみたんです。
そしたらね……家の前の道、なにもないはずの場所に──

**“足跡があった”**んですって。

しかも……ひとつだけ。

まるで、自分のすぐ後ろに“誰かが並走してた”ように……
濡れた地面に残った、真っ黒な片足だけの足跡。

……それから彼は、夜道をひとりで歩けなくなったそうです。


あとがき


こわいなぁ……音って、見えないけど、感じますよねぇ……。

この話で一番怖いのは、「姿が見えない」のに「存在を確信してしまう」こと。
足音って、たったそれだけで、人の心にここまで影を落とすんですよ。

人間って、何もないとわかっていても「気配」に弱いんです。
風の音、揺れる枝、踏みしめる土の感触──
それが自分以外の“何か”のものだと感じてしまったら……それだけで恐怖が生まれる。

だからこそ、見えないものって、怖いんですよねぇ……えぇ……。

さて……ここからは、“見えない世界”をもう少し覗いてみたい方へ……


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