「お盆が終わる、お寺にて」〜第36夜〜
あぁ……お盆が終わる夕方って……なんとも言えない寂しさがありますよね……
蝉の声も心なしか弱くなってきて……西日が山の端に沈みかけている……。
これは……もう数年前のことになります。
その年も、私はお盆明けにお寺へお参りに行きました。
ちょうど片付けの最中でね……提灯をしまったり、塔婆をまとめたり……
本堂の中にはまだ線香の香りがふわっと残っていたんです。
住職さんが私に、ふとこんなことを言ったんですよ……
「いやぁ……不思議なもんでね、お盆が終わると、ほんとに“帰っていく”んですよ……」って。
その言葉を聞いた瞬間、背筋がゾワッとしました。
ふと奥にある仏像の脇……大きな障子に目を向けると、ほんの少しだけ開いているんです。
……でね、その隙間から……誰かが、じっと覗いている。
真っ黒な影……顔は見えないんですが……
“こちらを見ている”という感覚だけは、妙に鮮明なんです。
「え……誰?」と思って目を凝らした瞬間……
その影はスッ……と立ち上がり、ゆっくり奥へ消えていった。
普通なら背筋が凍る場面なのに……なぜかその時、不思議と嫌な感じはしなかったんですよ。
むしろ……“あぁ、帰るんだな”って、心の中でそう呟いていました。
そのあと、住職さんが境内の鐘を鳴らしました。
ゴ〜〜ン……という音が山に響くと、涼しい風がスッと吹いてきて……
線香の煙が、まるで誰かを包み込むように空へ昇っていく……。
あれは……きっと帰る前に最後の“顔”を見せてくれたんでしょうね……。
怖さの中に、ほんのり温かい……そんなお盆の終わりでしたよ……えぇ……。
あとがき
この話を住職が私にしてくれるのは……単なる世間話ではないんです。
私は何度も心霊体験や、不思議な出来事でこのお寺にお世話になってきました。
古い写真の供養や、耳元で聞こえる声の話……そんな相談もしてきた仲で、
私が“視える”“聞こえる”ことを、住職はよく知っているんです。
だからこそ、この時も「きっとあなただからわかるだろう」と思って、
あの言葉をかけてくれたんじゃないか……そんな気がしています。
あなたは、お盆が終わる時……何か“帰っていく気配”を感じたことはありますか?
もしあれば、ぜひ教えてください。
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