⑭『最弱扱いされた俺のギフト《追加ボーナス》、実は仲間も武器も報酬も手に入る最強スキルでした』〜第15章〜
前回の振り返り
ギルドでの試験を突破し、正式に**《黎明の契約(れいめいのけいやく)》**となったアスラたち。
最弱と蔑まれた日々は遠い過去。今や、仲間と共に歩む新たな旅路が始まろうとしている。
ギルドマスター・ドルガンから託されたのは──エルフの国への和解の使命だった。
〜第15章〜 森を越えて、エルフの国へ
応接室に漂う緊張は、言葉を重ねるごとに重みを増した。
ドルガンは王国の印章を押された巻物を机に置き、静かに告げる。
「王国はエルフとの和解を望んでいる。しかし……国境では冒険者が幾人も闇討ちされ、血の跡だけを残している。疑惑はすべてエルフに向けられているが、真相は闇の中だ」
「戦争に繋がりかねない……ということですね」ミリアの声は震えていた。
ドルガンは深く頷く。
「だからこそ、信頼できる者に託す。──アスラ、お前たち《黎明の契約》にだ」
胸の奥で熱いものが沸き上がる。
アスラは仲間を見渡し、静かに答えた。
「必ず、この文書を届けます。……俺たちの夜明けを証明するために」
森への道
翌朝、彼らは街を後にした。
緑の海のように広がる大森林は、陽光を遮り、昼でも薄暗い。湿気を含む空気は重く、どこかで獣の鳴き声が響いた。
ジークが影の中から声を発する。「……視線を感じる。ずっと前からな」
フェンリルが低く唸り、イフリートの炎が揺れる。
「噂通りか……」カインが剣に手をかける。
アスラは拳を握り、巻物を胸に抱きしめた。
「ここから先は、誰かの意思を確かめる旅になる。……油断するな」
闇討ち
森を進んで半日。突然、矢が飛んだ。
アスラの頬をかすめ、背後の木に突き刺さる。
「っ……全員伏せろ!」
木陰から現れたのは黒装束の男たち。冒険者風の装備をしているが、目は狂気に染まっていた。
「人間の……いや、ヒュームの使い走りか! ここで死ね!」
オルドが盾で矢を弾き、ソフィアが即座に光矢を放つ。
カインとジークが影の中を駆け抜け、レオンの言葉が敵の動きを鈍らせる。
短い激戦の末、敵は倒れた。しかし、その装備に刻まれていたのは──王国の紋章。
「これは……人間同士の仕業?」ミリアが蒼白になる。
「……誰かが意図的にエルフへ濡れ衣を着せている」アスラは歯を食いしばった。
絶世の美女との遭遇
不穏な空気を押しのけ、さらに森の奥へ。
やがて、張り詰めた声が木々の間から響いた。
「これ以上、一歩でも進めば命はない」
瞬間、十数本の矢が枝上から突き付けられる。
その中心に──彼女はいた。
月光を編んだような金髪が風に揺れ、長い耳が透けるような光を帯びている。
白磁のように滑らかな肌。氷のように冷たい碧眼は、アスラたちを射抜き、呼吸さえ奪った。
緑の軽鎧に身を包み、銀の長弓を構える姿は、森そのものの精霊のようだった。
「人間の冒険者どもが……なぜ我らの聖域に足を踏み入れる」
その声は冷ややかだが、どこか深い哀しみを含んでいた。
仲間たちは誰もが息を呑んだ。
美しさと威圧感、相反する二つを纏った存在──エルフの弓使い、セレーネ。
アスラは震える膝を押さえつけ、一歩前に出る。
「俺たちは戦いに来たんじゃない。──和解のために来た。この文書を、エルフの国へ届けるために」
セレーネの碧眼がわずかに揺れた。だが矢先は下ろさない。
「和解……? 人間が口にするその言葉が、どれほど空虚か……お前は知らぬだろう」
森に緊張が走る。
矢が放たれるか、言葉が届くか──運命の境目に、アスラたちは立っていた。

あとがき(第15章)
《黎明の契約》に託された外交任務は、ただの護送ではなかった。
人間同士の陰謀、そして絶世の美女エルフ・セレーネとの邂逅。
冷たい矢先に突き付けられたのは、信じる心と和解への意思。
次章、アスラの言葉と《追加ボーナス》が彼女の心にどう響くのか──。
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