若気の至れり尽くせり、あるいはパリのパセリ
ーよもぎさんに捧ぐ
喫茶店なんかに呼び出してなんの話だい。
この3人が同じテーブルに着いて膝をつき合わすなんて、何十年ぶりだろう。
互いに歳を取った。
歳月はごまかせない。
学生時代なんて何十年前の話かしらね
いやもうかぞえるそばからさっき数えた数を忘れていってしまう。
いやもうそんなの誰かのせいにしたってしょうがないだろう。
だからそもそも何のためにこの3人が同じテーブルについているのかさえもわからなくなってきた。
状況を説明しなさいよ
まず大体そういうところから始まるのがきまりでしょ
誰が決めたんだよ、そんなこと
そんなことって読んでる人がわけわかんないでしょうが
誰が読んでるんだよ。まずそれを教えろよ。
全く平行線だ
話がかみ合わない。
窓辺の花瓶には花が生けてある。
あれは、たしか…
クジャクの羽根か…
いや違う
パセリだ
しかも、パリの…。
ん、置き場所がいかん
窓際は、止めとけってあれだけ口を酸っぱくして…
案の定、干からびて
パリパリに
いやもう、とっくにパリパリ通り越して
バリバリや
パリパリのパリのパセリが
バリバリのバリのバセリに
(バセリって)
さすがに話し込んでばかりいる自分たちの様子に自覚したみたいだ
まず注文だろうが
喫茶店だろ
なんか頼まずに水だけで何分話し込んでんだよ
店員もよく文句言いに来ないな
さっきから遠目にオロオロとしながらこっち覗き込んでるけどさ
いいのかよ、こんな注文もしないのに。
だから頼みなさいよ。
とっとと。
窓際のトットちゃんか。
窓際のとっととちゃんか。
窓際のトットとハム太郎なんてな。
もう止めなさいよ〜
相変わらずのオヤジギャグがウザい。
そうですよ。そうですよ。どうせあたしはオヤジですよ。
今度は開き直ったよ。
めんどくさい。
いやだから、おんなじコーシー3つ、モカとアメリカンとカフェオレでいいじゃんじゃんジャン・バルジャン。
何適当に自分の飲みたいものだけいってるのよ。
話がかみ合わない3人。
とにかく注文もしないまま話し込む3人の目的もその後どうなったのかもわからない。
何もかもがわからない。
わからんちんのトンチンカンだということだけはわかってもらえただろうか?
いや、チンプンカンプンか、
まてよ、
チチンプイプイか
いたいのいたいのとんでけーか
とにかく時計をみれば午後4:30、
テーブルに座ってから1時間30分が経とうとしていた事の事実だけは変わらない。
かつてのあの日のことは誰も思い出しそうにない。
この日のこともこの有様じゃ無理もない。
それもこれも皆若気の至りか。
いやいやいやいや大したことない記憶はとっとと忘れるに限ると気を利かせた若気の至れり尽くせりのおかげか。
