バスに乗るは On a bus……ふむふむ、ということは車に乗るも On a …………What!? In a car!? Why English Speakers!
表題の通り、「~に乗る」という表現において、何に乗るかで前置詞が変わる厄介な言語があります。はい、英語です。
使い分けとしては、公共交通機関(電車、バスなど)には on を使い、自家用車には in を使う、というのがよくされる説明ですが、この使い分けを教えた場合、ほとんどの生徒はポカーンと口を開けて虚無顔になります。ちょっとキャパオーバーだから旅に出ます、といわんばかりに無になられるのです。
もう、彼ら彼女らの心の内がよ~くわかります。すなわち、"Why English Speakers!?(厚切りジェイソン風)"です。
車だろうがバスだろうが船だろうが自転車だろうが馬だろうが……乗るには変わりないではないか! そう、目で非難してくるのです😥

では、詳しく見ていきましょう!
① なぜ使い分ける?
まず、英語嫌いを加速させないためには、「納得すること」が大事です。しぶしぶ覚えると頭に入らない。しゃーねぇ、わかったよ、はいはい、そういう感じですね、と広い心で受け止めてやる。それこそ、英語という曲者と仲良くする秘訣なのです。
では、なぜなのか……。なぜ、使い分けがあるのか……。
単純です。それが英語という言語だからです。
考えてもみてください……。
英語と日本語は全く違う言語です。日本語の感覚では意識しないことを、他言語では重要視するなんてことは、普通にあり得ます。つまり、英語の思考を理解しなければ前置詞の使い分けなんて受け入れる気にはなれないわけで、生徒の"WHY ENGLISH SPEAKERS!?" というツッコミは至極最もな文句なのであります。
➁ 認知のお助けヒーロー、認知言語学登場!
さぁ、ここでお待ちかね(?)の認知言語学の登場です。まず、「なにかに乗る」という事態に対して、どこに注目するかが日英で異なります。
英語: 乗り物の「形状(や空間)」に注目。
日本語: 乗り物に対する「人間の移動」に注目。
日本語の場合は、
「乗る」 + 助詞 「に」 → ○○に乗って移動する
ということを表現の主役にしています。移動している(乗っている)ということと、その媒体を「に」で表せればそれでよし。媒体の形状など、どうでもいいのです。これはまさに、日本語が車に乗って移動している時の視点に立って「乗る」を言語化するから起きることなのです(乗っている最中は形状を客観視出来ませんよね)。
③ 英語の区分
しかし、客観的な見方の得意な英語は、乗る「対象」をも厳密に仕分けます。
たとえば、車は「せまい箱」です。車に乗るときは、体を小さくかがめて、箱の中に「すっぽり入る」感じがしますよね。この箱の中に入るイメージは、 “in” のコアイメージと重なります。つまり、媒体の形状を箱と捉えると、使う前置詞は in がしっくりくるのです。そして、車に問わず、自家用車はその「せまい箱」のイメージと一致しやすいですよね……。ゆえに、自家用車は in と一緒に使われる、と説明されるのです。
一方、バスは「うごく床(ゆか)」です。箱というよりも「ひろい床(ステージ)」に人が乗っているので、 in のイメージよりかはむしろ、足がステージに接している点で on のコアイメージがしっくりきます。これを、「歩けるかどうか、中を歩けたら on だよ」と説明することもあります。
この感覚 (箱と捉えるか否か/ 中を歩けるか否か) が前置詞の使い分けに関与していると考えられるのです。

※ on は「上」というよりむしろ「接触している」のがイメージです( in はおおざっぱに言うと「中」)。
先生🧑「どうですか? こう考えるとしっくりくるでしょう?」
生徒👧「はい! 納得しました!」
先生🧑「では、さっそく覚える作業に入りましょう」
生徒👧「先生!」
先生🧑「ん?」
生徒👧「on と in って何が違うんですか?」
先生🧑「…………」

