MSW実践研究
実践者が論文を書くということ
― ChatGPTと協働する、新しい論文執筆アプローチ ―
社会福祉学における論文執筆のあり方について、最近あらためて考えている。
とくに、実践者として26年積み重ねてきた医療ソーシャルワークの経験を、どう学術化するかという問いである。
近年、学術論文は高度な量的研究や精緻な質的分析が主流になっている。
もちろん、それ自体は重要であり、学問の発展に不可欠である。
しかし一方で、私はこうも感じている。
社会福祉は、本来「実践の学問」ではなかったか。
実践の中で生じる成功や失敗、迷い、葛藤。
それらを積み重ねて共有することこそ、ソーシャルワークの発展につながるのではないか。
そこで私は、実践報告を一般論文と同等の価値として位置づけるという方向性を模索している。
1. 実践から始める論文
多くの研究では、
「問いを立て → デザインを組み → データを集め → 分析する」
という手順を踏む。
しかし実践者の場合、少し違う。
現場には、すでに「問いの原型」がある。
なぜこの支援はうまくいったのか
なぜこのケースは制度につながらなかったのか
どのタイミングでMSWが介入すべきだったのか
つまり、実践の中に仮説が眠っている。
私はまず、肌感覚的に予想できるゴールを文章化することから始めている。
まだ検証されていない。
しかし、経験上ほぼ確信している。
その段階で、一度文章にしてしまう。
これが私の「仮説先行型執筆」である。
2. 予想通りでも、予想外でも価値がある
仮説をもとに研究を進める。
結果が予想通りであれば、そのまま論文として整理する。
もし予想外の結果が出たらどうするか?
それはそれで、極めて面白い。
予想が外れるということは、
自分の思い込みや暗黙知が可視化されたということだ。
実践者にとって、予想外は「失敗」ではなく、
最も学術的価値の高い材料である。
3. ChatGPTとの協働スタイル
ここでAIの出番になる。
私がChatGPTを使う際に意識しているのは、
ゼロから書かせないこと。
AIは万能ではない。
とくに社会福祉の現場感覚は、こちらが情報を渡さなければ出てこない。
AIは「創造」よりも「整理」が得意な装置だと捉えている。
そのため、
論文の完成度はまだ30%でもよい
しかし内容の構想は80~90%まで自分で考える
この段階からAIと協働する。
具体的には、
構造の再整理
言語化の洗練
重複や曖昧表現の修正
ロジックの飛躍の指摘
先行研究との接続の補助
こうした作業をAIと対話しながら進める。
AIは代筆者ではなく、
思考を磨く壁打ち相手である。
4. 実践報告の価値を再定義する
私は、実践報告を「格下」とは考えない。
むしろ、
制度の隙間を照らす症例
移行期で迷う成人先天性心疾患患者の事例
年金申請と就労支援の交差点
こうした一例一例こそ、制度改編や政策提言につながる原石だと思っている。
実践報告が蓄積されなければ、
量的研究も政策研究も成り立たない。
社会福祉学においては、
実践 → 言語化 → 共有 → 再実践
この循環こそが本質である。
5. 今後の方針
私はこれから、
実践報告を一般論文として投稿する
ChatGPTとの協働プロセスを確立する
事例を通じて仮説生成型研究を継続する
という方針で進めていく。
研究者としての実績構築も大切だ。
しかしそれ以上に、
現場で困っている人の支援が、どれだけ言語化され、共有されるか
それが私の基準である。
おわりに
論文を書くことは、業績づくりではない。
実践を未来へ手渡す行為である。
そしてAIは、その橋を架ける道具になり得る。
実践者が、実践のままでは終わらせない。
それを言葉にし、理論化し、社会に返す。
そのプロセスを、これからも模索していきたい。
