異星人アリサと閻魔さまのトリセツ第15話「真由美の生還と愛宕神社の不思議な鏡」【7割リアル連載小説】
「う……う、痛い……」
真由美がかすかに呻いた。
医師や家族さえも真由美の意識回復を諦めかけていた。そんな中で、彼女はゆっくりと目を開けたのだ。
昏睡状態から回復した真由美は、引き続きしばらく入院生活を送ることになった。頭はだいぶ冴えてきたものの、身体が重く思うように動かない。額のタンコブはさらに大きくなり、左膝の怪我も予想以上に重かった。真由美が普通の生活に戻るには、もう少し時間がかかりそうだった。
意識が回復して2日後、真由美は集中治療室から一般病棟に移った。そこではテレビを見るよりもパソコンでネットサーフィンをするのが楽しみだった。ただ、一日中それを続けていると目も肩も疲れてしまう。そんな真由美を気遣って、アリサがお見舞いに来てくれた。
「おっ、復活おめでとう!やっぱり真由美なら大丈夫だと思ってたよ。閻魔さまにもちゃんと話しておいたし!」
アリサは満面の笑みを浮かべながら、軽やかに言った。
「……閻魔さま?」
真由美はぼんやりと問い返した。
「そうそう!あのクールな顔した大王さまよ。覚えてない?結構ニヒルな男だったのに!」
アリサはおどけて言いながら、手をひらひらさせた。
頭に巻かれた包帯にそっと触れながら、真由美が口を開いた。
「アリサ……ねえ、あなた、また何かやらかしたんじゃない? あれってリアルだったの?私ね、閻魔さまや鬼と話してる夢を見た気がするのよ。それって、一体どういうこと?」
彼女の声には困惑と不安が入り混じっていた。
「ミネルバから『頭に衝撃があった真由美にはあまり突飛な話をしない方がいい』って言われたわ。でも、真由美、暇なんでしょう? 次のツアーまで時間があるから、それまで毎日来てあげるわよ」
真由美はアリサをじっと見つめ、真顔で言い返した。
「あのね、アリサ。あなたって本当にぶっ飛んでるわよね。今さら何を驚けって言うの?話したくて仕方ないんでしょう?いいわ、どれだけでも聞いてあげるから」
アリサはその言葉に一瞬驚いたようだったが、次の瞬間には大笑いした。
「ガハハハハ……あら、そう?じゃあ話すことにするわ」
アリサは得意げな表情を浮かべながら続けた。
「ええっと、それじゃね……。今日はソフト路線でいくわ。ねえ、真由美、神谷町の愛宕神社に行ったことある?」
アリサは椅子に腰掛けながら楽しそうに語り始めた。
「あの神社にはね、とても不思議な力を持つ神鏡があったのよ。でもね、それが誰かに盗まれちゃったの」
真由美は思わず身を乗り出して問いかけた。
「愛宕神社には行ったことがないけど、火難除けの火産霊神が祀られてる神社よね?その不思議な鏡って、何なの?」
「真由美は神社参拝が好きだから詳しいと思うけど、神道での鏡ってさ、太陽を表す象徴でもあるじゃない。鏡を覗き込むことで自分自身を見つめ直すツールとしても良いって言われてるけどさ」
アリサは手振りを交えながら話を続ける。
「ところがね、愛宕神社にあった鏡は普通のものとは全然違ってて、もう、超特殊なパワーがあったのよ。なんと、鏡を覗き込んだ人々を若返らせて美しくさせてたらしいわ」
真由美は興味津々で聞き入っていた。
「だからなのか、女性の参拝客にスンゴク人気があったってわけ。私なんて暇さえあれば通ってたもの。週2~3回のペースでね! でもね、その鏡、突然、力が無くなっちゃったから、今は全然通わなくなったわ」
アリサは肩をすくめながら続けた。
「噂ではね、ある風水師がクライアントに愛宕神社の神鏡の話をしたら、その直後に鏡が消えたんだって。何か怪しくない?誰が盗ったのかは分からないけど、とっても残念よ」
アリサは少し間を置き、眉をひそめながら言った。
「もちろん、新しい神鏡が愛宕神社に置かれたけど、ただの普通の鏡なのよ。悪くはないんだけどさ、前みたいに若さと美しさをくれるような力は全く無いの」
その話を聞いた真由美は、とても残念そうに言った。
「あーあ、そんなにすごい鏡があるって知ってたら、5万円もするエレキブラシなんて買わなかったわ。毎月使ってる高級化粧品も……ね。もっと早く参拝に行けばよかった~~!」
真由美はため息をつき、さらに言葉を続けた。
「でも、神社からそんな大切なものを盗むなんて、罰当たりじゃない? それこそ、神をも畏れぬ行為だわ。きっと神様は窃盗犯を赦さないはずよ!」
「それがね、意外にもそうじゃないらしいのよ」
アリサは怪訝そうな表情を浮かべながら続けた。
「日本の神社の神様って、優しすぎるのかもしれないわ。私の知り合いの霊能者が愛宕神社の神様の気持ちを探ったら、盗人は全くお沙汰に触れてなかったって。ちょっと妙でしょう?でもね、さすがに神様が窃盗を推奨してるわけじゃないと思うわ」
第16話へ続く
