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音楽が嫌いになりかけた夜——眠れない僕を救ってくれたもの

仕事と生活の境界が消えた


スタジオを運営していた頃の話だ。

資金繰りが行き詰まり、人間関係も大変な時期だった。スタジオには仮寝所があって、業務が入っているときはそこで寝泊まりしていた。

でも仕事とプライベートの切り替えがうまくいかなかった。

寝所に入っても明日の段取り、今日のデータの整理、クライアントへの連絡——仕事のことしか頭に浮かばない。どんどん目が冴えていく。

寝酒のつもりでお酒を飲みながら仕事の残りを整理し始めた。でもますます頭が冴えていく。

そんなことを繰り返しているうちに、毎晩お酒を飲みながら作業することが日常になっていった。



気づいたら依存していた


気づいたときにはお酒を飲まないと何も手につかない状態になっていた。

お酒を飲んで少し寝落ちする。また起きてお酒を飲む。また寝落ちする——その繰り返しだった。

睡眠不足とアルコール依存が重なっていた。

スタジオ業務がない日は自宅で暇な時間を過ごし、自然とお酒を片手に動画を見ていた。外に出る気力もなかった。



音楽を避けるようになった


その頃、意図的に音楽を避けるようになっていた。

音楽を聴くと仕事に繋がってしまうからだ。

気づけば普段から音楽を聴かない生活になっていた。大好きな音楽なのに。毎日弾いていたギターも弾かなくなった。仕事で音楽を作ることもなくなっていった。

サウンドクリエイターが音楽から離れていった。



睡眠動画との出会い


そんなとき、睡眠動画の存在を知った。

最初は単なる興味だった。「睡眠音楽って(笑)」くらいの気持ちだった。

いつものようにお酒を飲みながら睡眠動画を流していた。するといつもと違うことが起きた。

リラックスしている自分がいた。

お酒を飲むといつも目が冴えて仕事のことばかり考えていたのに、睡眠動画を流していたら昔のことを考えるようになった。

音楽を作るのに必死だった時期。音楽の勉強を頑張っていた頃。家族との時間。



泣いたら眠れた


気づいたら涙が出ていた。

ひとしきり泣いたら、すっきりした。

そしてぐっすり眠れた。

どれくらいぶりかわからないくらい、深く眠れた。

音楽が僕を救ってくれた。避けていた音楽が、別の形で戻ってきてくれた。



聞こえてくる音楽


この経験から気づいたことがある。

自分の立ち位置によって聴く音楽は変わる。でも「聞こえてくる音楽」は違う。

聴きたい音楽じゃなくて聞こえてくる音楽。それは自分の感情や気持ちにダイレクトに刺さる。

そんな聞こえてくる音楽を、誰かの近くに置いておける存在でありたい。

眠れない夜を抱えているあなたの近くに、そっと置いておける音楽を作りたい。

それがretronicaを始めた理由だ。


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