空間装飾と造作
装飾を成立させる、形の設計
空間装飾は、花やグリーンを置くだけで成立しているわけではない。
その花をどこに取り付けるのか。
どの高さで見せるのか。
どの奥行きで構成するのか。
どの角度から見たときに美しく見えるのか。
そうしたことを考えていくと、空間装飾には必ず「形」が必要になる。
その形をつくるものが、造作である。
造作という言葉は広い。内装の世界では、カウンター、棚、壁、什器、建具などを指すこともある。
けれど、空間装飾の文脈で考えると、造作はもう少し違う意味を持つ。
花やグリーンを取り付けるための下地。
フォトブースのバックパネル。
植栽を囲うプランター。
空間に置かれるオブジェ。
擬岩や造木のように、それ自体が装飾になるもの。
ここでは、空間装飾を成立させるためにつくる形を、広く造作として考えてみたい。
今回は、空間装飾と造作について考えてみたい。
1. 造作は、空間装飾の自由度を広げる
空間装飾において、造作は単なる裏方ではない。造作があることで、装飾の自由度は大きく変わる。
既存の壁にグリーンを取り付ける。
既製品のアーチに花を付ける。
市販の什器に装飾を加える。
それだけでも、空間装飾をつくることはできる。
けれど、その方法だけでは、表現に限界が出てくることがある。
欲しい高さが出せない。
必要な奥行きがつくれない。
強度が足りない。
サイズが合わない。
色や質感が空間に合わない。
装飾を付けたときに、思っていたシルエットにならない。
そうしたとき、造作が必要になる。
装飾に合わせて土台をつくる。
空間に合わせてフレームを組む。
必要な大きさのパネルをつくる。
花やグリーンが美しく見える角度を考えて、形そのものを設計する。
造作ができるということは、既製品の中から選ぶことではなく、その空間に必要な形を一から考えられるということである。
その意味で、造作は空間装飾の自由度を広げる。
2. 造作には、見える造作と支える造作がある
空間装飾に関わる造作には、大きく二つあると思っている。
一つは、見える造作である。
これは、造作物そのものが空間装飾の一部になるものを指している。
木工でつくるバックパネル、塗装した壁面、クロスを貼ったパネル、フォトパネル、カッティングシートを組み込んだ装飾、擬岩、造木、オブジェ、植栽の中に溶け込む岩や土台。
こうしたものは、完成した空間の中で人の目に入る。
つまり、ただ装飾を支えるためのものではなく、空間の見え方そのものをつくっている。
もう一つは、支える造作である。
これは、アーティフィシャルフラワーやフェイクグリーンを取り付けるためのベースや下地を指している。
木工で組むこともあれば、鉄やステンレスを溶接してつくることもある。
完成したときには見えなくなることもある。
けれど、その下地があるから、花やグリーンを立体的に取り付けられる。
天井に吊るせる。
壁面から浮かせられる。
アーチ状にできる。
大きなボリュームを支えられる。
見える造作は、空間の印象をつくる。
支える造作は、装飾の形を成立させる。どちらも、空間装飾には欠かせない。

3. 既製品だけでは、表現に限界が生まれる
造作ができない場合、空間装飾は既製品や既存の壁、天井、下地に依存しやすくなる。
もちろん、既製品を使うことが悪いわけではない。
市販されている什器やアーチ、パネル、フェイクグリーンのベースを使って、十分に良い装飾をつくれる場合もある。
ただ、既製品にはサイズ、強度、色、質感、形の限界がある。
たとえば壁面装飾であれば、スタイロフォームや発泡スチロールに塗装をして、そこにグリーンを挿し込み、壁に取り付けることがある。
これは一つの方法である。
けれど、そのやり方だけでは、どうしても平面的になりやすい。
奥行きや立体感が生まれにくく、単純なグリーンウォールのように見えてしまうことがある。
天井装飾でも同じである。
花やグリーンを取り付けるためのベースがなければ、事前に大工さんや内装会社に下地をつくってもらう必要がある。
もちろん、お金をかければ外部に作ってもらうことはできる。
けれど、自分が思い描いている形を正確に伝えることは、簡単ではない。
立体的なものほど、言葉や図面だけでは伝わりにくい。
意思疎通がうまくいかなければ、思っていた土台にならないこともある。
造作ができるかどうかは、空間装飾の自由度に直結している。
造作ができないと、既製品をどう組み合わせるかという発想になりやすい。造作ができると、その空間に必要な形そのものから考えられる。
この違いは大きい。
4. フラワーアーチに見る、自由設計の意味
フラワーアーチは、造作の意味が分かりやすい例だと思う。
市販されているアーチには、いくつか種類がある。
一つは、ガーデニング用のアーチである。
これは本来、土に挿して使うものが多く、単体で自立することを前提にしていない。
もう一つは、バルーン用のアーチである。
これはバルーンを取り付けるためのもので、アーティフィシャルフラワーやフェイクグリーンを取り付けると、強度の問題が出ることがある。
海外製やECサイトで販売されている大きなアーチもある。
けれど、それらは高さが二メートルを超えるようなものも多く、用途によっては大きすぎる。
キッズフォトや小さな撮影空間では、そのサイズが合わないこともある。
さらに、色や質感の問題もある。
市販のアーチは、白やゴールドのものが多い。
けれど、その金色が本当に空間に合う色とは限らない。
ウェディング、ポップアップ、撮影空間、店舗装飾では、もっと目立ちにくいブラウン、シルバー、本当のアンティークゴールド、ライトゴールドなど、その空間に合う色が必要になることがある。
だから私は、フラワーアーチを完全オリジナルで制作した。
溶接でアーチの形をつくり、アーティフィシャルフラワーやフェイクグリーンの重さに耐えられる強度を持たせる。
サイズも用途に合わせて決める。
色も空間に合わせて仕上げる。
そうすることで、既製品ではなく、その空間に合うアーチをつくることができる。
これは、単にアーチを作ったという話ではない。
空間装飾のレベルを上げるために、造作から考えたということである。
5. 擬岩は、室内に自然のスケールを持ち込むための造作である
擬岩やフェイクストーンも、空間装飾における造作の重要な要素である。
最近は、既製品として擬岩やフェイクストーンが販売されていることもある。
けれど、既製品にはサイズの限界がある。
大きな岩のような造形物は、簡単には流通できない。
配送や運搬の問題があるからである。
一定のサイズを超えると、一般的な宅配便では送れなくなる。
段ボールに入らない。車に載せにくい。現場まで運びにくい。
だから、大きな擬岩の既製品はそもそも選択肢が少ない。
では、本物の岩を置けばいいのか。
屋外であれば、それができる場合もある。
けれど、室内のオフィスやホテル、商空間に大きな本物の岩を持ち込むのは簡単ではない。
重さがある。台車に乗らないこともある。
床荷重や搬入経路の問題も出てくる。
だから、擬岩を作る意味がある。
スタイロフォームや発泡スチロールを成形し、FRPや樹脂モルタルで固め、塗装で質感をつくっていく。
そうすることで、室内に本物の岩のような存在感を持つ造形物をつくることができる。
大きな岩があるだけで、植栽の見え方は変わる。
フェイクグリーンやアーティフィシャルフラワーの中に擬岩が入ることで、空間に自然のスケールが生まれる。
しかも、ただ岩の形を作ればいいわけではない。
どんな形の岩が美しいのか。どんな色味が植物と合うのか。
アガベやサボテン、オージープランツのような植物を使うなら、どんな石や岩の質感が自然に見えるのか。
そこには、造作の技術だけではなく、植物や空間に対するデザインの判断が必要になる。
擬岩は、軽くて便利な代用品ではない。
室内に自然のスケールを持ち込むための造作である。

6. 造木は、その空間に合わせて樹形をつくる仕事である
造木もまた、空間装飾における重要な造作である。
フェイクグリーンやアーティフィシャルプランツを扱うメーカーは、国内にも多く存在している。
実際には中国などで作られているものも多く、量産された造木も流通している。
ただ、量産される造木には樹形の限界がある。
理由の一つは、運搬である。造木を梱包する段ボールは、どうしても長細い形になりやすい。
その中に収めようとすると、幹や枝ぶりも輸送しやすい形になっていく。
結果として、まっすぐな幹や、単純な枝ぶりの造木が多くなる。
もちろん、それで十分な場合もある。
けれど、空間によっては、もっと曲がった幹が必要なことがある。
横に流れる枝が必要なことがある。
壁から生えているように見せたいこともある。
天井や空間全体に広がるような樹形が必要なこともある。
そうしたとき、既製品の造木だけでは難しい。
専門の造木メーカーに依頼することもできる。
けれど、大きく特殊な樹形の造木は、金額も大きくなりやすい。
私は、造木の芯となる部分を鉄筋で溶接し、チキンネットやウレタンフォームを使って幹を成形していく。
そこに塗装を施し、必要に応じてメーカーが出している葉物やフェイクグリーンを取り付ける。
幹の太さ、曲がり方、枝ぶり、色味、質感。それらを、空間に合わせて一から考える。
既製品の造木を置くのではなく、その空間に必要な一本をつくる。
それができると、空間装飾の表現は大きく広がる。
造木は、木の形を真似るだけのものではない。都市や室内に、自然の気配をどう立ち上げるかを考える造作である。
7. 木工、溶接、FRP、樹脂モルタルが装飾の幅を広げる
空間装飾では、花材やグリーンだけを知っていればよいわけではない。
もちろん、花や植物の見え方を理解することは大切である。
けれど、空間の中で大きな表現をしようとすると、それだけでは足りないことがある。
木工ができれば、バックパネルや台座、什器、装飾下地をつくることができる。
溶接ができれば、強度のあるフレームやアーチ、吊り下げ用の構造、立体的な芯をつくることができる。
FRPや樹脂モルタルを扱えれば、岩や木の幹のような自然物に近い造形もつくれる。塗装ができれば、色や質感まで空間に合わせて調整できる。
こうした技術があることで、空間装飾は既製品を組み合わせるだけではなくなる。
その空間に必要な形をつくり、その形に合わせて花やグリーンを構成することができる。
さらに、これらを内製できることには大きな意味がある。
外部に依頼すれば、それぞれの専門家に作ってもらうことはできる。
大工さん、鉄工所、造形会社、塗装会社、植栽会社。
それぞれのプロがいる。
けれど、外注先が増えるほど、コストも増える。
意思疎通も複雑になる。デザインの意図が分断されることもある。
私の場合は、造作、造形、花、グリーン、塗装、施工までを一体で考えられる。
だから、擬岩の形、造木の樹形、花やグリーンの配置、苔や小石の使い方、固定方法、安全性までを、一つの空間表現として組み立てることができる。
そこに、RETHECITYの強みがある。
8. 空間装飾は、造作まで含めて考える
空間装飾と造作は、別々のもののように見えるかもしれない。
けれど、実際には深くつながっている。
造作があるから、花やグリーンは立ち上がる。
造作があるから、装飾に高さや奥行きが生まれる。
造作があるから、空間に合わせた形をつくることができる。
見える造作は、空間の印象をつくる。
支える造作は、装飾の形を成立させる。
その両方を考えることで、空間装飾はより自由になる。
既製品を選び、組み合わせることも一つの方法である。
けれど、その空間に必要な形が既製品の中にないこともある。
そのとき、造作から考えられるかどうかで、空間装飾の可能性は変わる。
空間装飾は、花やグリーンを最後に足す仕事ではない。
その空間に必要な形を考え、必要であれば土台をつくり、造形をつくり、質感をつくり、その上で花やグリーンを構成していく仕事である。
造作まで含めて考えることで、空間装飾はただの飾りではなく、空間そのものに関わる表現になる。
造作まで考えることは、空間装飾を「置くもの」から「空間をつくるもの」へ変えていく。
その前提から、これからの空間装飾を考えていきたい。
次回予告
次回は、空間装飾の業界地図について考えていきます。
RETHECITY JOURNAL
RETHECITY JOURNALは、空間装飾・空間ディスプレイ・空間デコレーションの領域から、空間価値について考えるジャーナルです。
リザシティジャパン株式会社では、花・植物・造形・アーティフィシャルフラワー・フェイクグリーンなどを用いた空間装飾を手がけています。
