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基礎年金のCR化構想 - その裏側 -(2)



第2回

なぜ「全部一気に」変えなかったのか




前稿では、日本の年金制度がいかに「混在構造」によって複雑化し、知識格差による不利益を生んできたかを整理した。

「ならば、制度全体を根底から一気に作り直せばいいではないか」

そう思われるかもしれない。実際、CR(消費税再分配給付)という強力なツールを用いれば、理論上は厚生年金も含めたすべての年金制度を「完全な個人単位」や「積立方式」へ一気に移行させる設計図を描くことは不可能ではない。

私自身、構想の初期段階では、その「最も美しい完成形」を目指していた。しかし、一冊の本として、そして「現実に動かせる改革案」としてまとめる段階で、あえて「基礎年金だけ」にターゲットを絞るという決断をした。

なぜ、私は「部分最適」に見える道を選んだのか。そこには、正論だけでは突破できない「制度改革の壁」と戦略があった。

「正論」が「停滞」を招くという罠

年金改革の議論が始まると、必ずといっていいほど「公平性」の議論が噴出する。 「会社員だけが優遇されているのはおかしい」 「現役世代の負担が重すぎる」 これらの声はすべて正論だ。しかし、この「正論の総力戦」を挑んだ瞬間、改革は止まる。

特に厚生年金の「報酬比例部分(働いた額に応じて増える部分)」は、労使双方の利害が複雑に絡み合う聖域である。ここを改革の第一歩に含めてしまうと、議論の焦点は「老後の安心をどう作るか」から、「誰がいくら損をするか」という感情的な奪い合いにすり替わってしまう。

「基礎年金」という土台だけに絞ったのには、三つの明確な理由がある。


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